【ネタバレ考察】『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』伸縮性の糸、修羅場へ

ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン(2021)

総監督:鈴木健一
監督:加藤敏幸
原作:荒木飛呂彦
声の出演:ファイルーズあい、田村睦心、伊瀬茉莉也、種﨑敦美、梅原裕一郎、浪川大輔、小野大輔、関智一etc

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日本はアニメになればどのような内容であっても関心の目が向けられる傾向にある。『風立ちぬ』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のようにもし劇映画であれば大人向けで奥深い内容故コアなファンぐらいにしか見向きもされない内容が、アニメであれば老若男女が楽しみ、数々の考察がなされる。ひょっとすると「失われた時を求めて」や「重力の虹」といった難解小説もアニメ化したら社会現象になるのではと期待したりする。

さて、NETFLIXで「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」が配信された。荒木飛呂彦の名作漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のPART6にあたる作品のアニメ化である。自分は、PART1「ファントムブラッド」、PART4「ダイヤモンドは砕けない」、そして番外編「岸辺露伴は動かない」を少しかじったぐらいなのですが、「ジョジョ」という軸を基に異なるジャンルの話を展開していく語りのユニークさに驚かされた。海外では『ラ・フロール 花』のように14時間かけて異なるジャンルの映画を、同じ出演者を起用して描いていく前衛的な映画が作られた。これはアート映画としてシネフィルの間でもてはやされたが、「ジョジョの奇妙な冒険」は大衆広くにまで波及し、「ジョジョ」というだけで会話のきっかけになる程の認知度を持っている。これは本当に凄いと思った。

閑話休題、「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」を観てみたのですがこれがとても面白かったので第二話までのネタバレ考察を軽く書いていく。

第一話

本作は、ダイヤモンドは砕けない」のヤンキーバトルものの雰囲気と一転して中南米の香り感じさせる脱獄ものとなっている。刑務所に入れられた女・空条徐倫。彼女は無実だと訴えている。彼女が男にはめられるまでの過程を、冗舌な時系列入れ替えと、ある能力に気づく過程の交差でもって語る。

男を轢いた。

徐倫の恋人は焦る。車のガラスには轢いた男の眼鏡が刺さっている。誤魔化し切れない状況となっている。彼女は、救急車を予防とするが、彼は「やめてくれ」と懇願する。遠くから車が迫ってくる。活劇たる切羽詰まった切り返しの末に、二人は轢いた男を車のトランクに入れる。これがきっかけで彼女が捕まり、弁護士と司法取引をすることとなる。彼のネクタイには?がデザインされている。胡散臭いのだ。その嫌な予感は的中し、彼女ははめられてしまう。15年の懲役が確定してしまうのだ。

悲しみに暮れる彼女は、弁護士から受け取った金色の小さな入れ物の魔力によって、手から見えない糸を出すことができる。第一話らしく、どのような効果があるのか分からぬまま、この魔力に引っ張られ、警察からは刑務所に引っ張られ、引き裂かれそうになる中で、糸の役割を見出していく。

伸縮性のある糸、それはピアノ線のように鋭く、さらに束ねると強度を持つ。その二面性を象徴するように、獄中仲間が胸に隠したお金を奪われようとする状況を救う場面が設けられる。間一髪のところで、警察の棒を静止し、彼の耳を糸で引き飛ばす。吹き飛んだ耳は壁にべっとりとつき、ずりずりと落下する。この溜めあるアクションに力強さを感じた。

第二話

第二話は刑務所の中での修羅場が魅力的な作品だ。他の能力者との邂逅を通じて、世界観で遊び、ルールを掘り下げていく点でも重要な回だ。同室となった情緒不安定なグェスが、黄金の入れ物を持っている。それを取り返そうとするとキレ始める。だが、翌日になると急に謝罪をする。かと思えば、徐倫のご飯を奪ったりする。全くもって掴めない存在だ。グェスが持っている鳥を奪うと、そこから人間の足が出てくる。彼女もどうやら能力者だと気づくと、壁が真っ赤に染っているのに気づく。鳥の頭から出てきた手足の血がべっとりとついている。だが、様子がおかしい。すると、横からグェスの巨大な顔が飛び出してくる。徐倫は彼女によって縮められてしまったのだ。彼女の奴隷となった徐倫は脱獄の手伝いをさせられ、偵察として鉄格子の向こう側に行くこととなる。ここで緊急事態が発生する。警備員が沢山いる場所で、少しずつ徐倫の身体が大きくなり始めるのだ。

身体的変化によるサスペンスを第二話で掘り下げている。糸の能力で陽動し、二重の鉄格子を潜り抜けていく。果たして、身体が元の大きさに戻る前に二つ目の鉄格子を潜り抜けられるのかというサスペンスを盛り上げるように、怪物が追ってくる。それから逃げる過程で、高い場所に避難するが、顔が隙間に引っ掛かり、抜けなくなる。絶体絶命の中で、彼女は能力を開花させ、怪物とグェスを追い詰める。しかし、またしてもグェスの罠にかかり、徐倫の身体サイズを操りながら鉄格子と鉄格子の間に閉じ込めてしまうのだ。

この微妙に変わりゆく身体サイズを通じてサスペンスが醸造されていく過程は実写だと非常に難しい躍動感がある。アニメだからこその面白さがあり、手汗握る修羅場に魅了されっぱなしでした。果たして、一応はグェスを屈服させた彼女だが無事に脱獄できるのだろうか。第三話も観るのが楽しみだ。

※NETFLIXより画像引用