紅夢(1991)
原題:大紅灯篭高高掛
英題:Raise the Red Lantern
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のチャン・イーモウ映画『紅夢』を観ました。これが大変美しい作品でありました。
『紅夢』あらすじ
蘇童の小説『妻妾成群』を原作とするチャン・イーモウ=コン・リー・コンビの第3作。20年代の中国。父に先立たれた19歳の頌連は地元の素封家の当主との婚姻を承諾、彼女より先に本妻を含め3人いる妻妾の4番目として、彼の屋敷に入る。一院~四院と呼びならわされる彼女らの居室の外に赤い提灯が点れば、そこに旦那=陣佐千のいる証しとなる……。19歳で嫁入りした女性が封建的な人間関係の中で道具のように扱われ次第に精神を病んでいくまでをドラマチックに描く。
紅の人形の哀しみ
左右対象のお屋敷に一人の女が入っていく。頌蓮(コン・リー)は、陳佐千の第四夫人としてここに住むことになったのだ。彼女を歓待するように赤提灯が掲げられている。召使の足マッサージを受けると主人との接待が始まるのだ。主人は毎晩のように夫人を見定め、寝る対象に赤提灯を掲げる儀式を行う。ここでは女は人形のように扱われる。故に、頌蓮が先輩のところへ挨拶に伺うと、「あんた学校出ているんだって、かわいそうに」と哀れみの目が向けられるのだ。
本作は、主人を盛り上げるための存在として消費されてしまう者の孤独を空間造形で表象している。この手数の多さにインスピレーションが掻き立てられる。例えば、紅の布に覆われた寝室を遠くから撮る。カットが切り替わると、彼女が布から出て、寂しそうにしている。この美しくも切ない空間作りが映画の基礎となっている。
また、本作で素晴らしいのは中盤にある。笛の音に導かれて彼女がお屋敷を歩くと、廊下に美男子がいる。恍惚とした光に満ちた空間で恋の予感をさせるが、二人は、廊下の別々の方向から退出する。カットが二人を互いに撮るのだが、彼女は廊下の入り口を縁のようにして肖像画として捉える。一方で、出口側にいる男は、退出時の足しか見えない。交わることのない愛を象徴している。そこにさらに廊下を遠くから見つめるショットを捉え、見つめる彼女と、去っていく男の構図が描かれる。ここまで丁寧に恋愛の予感を崩すシーンを紡ぐとはかなり残酷である。
美しくも残酷なチャン・イーモウの絵巻。これはデジタルリストア版を劇場上映してほしいなと思う。
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※IMDbより画像引用