『FRONTIER(服部正和)』彼は日本のSF映画史を変えるかもしれない

FRONTIER(2020)

監督:服部正和
出演:河野将悟、中山祐太、糠信泰州、矢澤優美香、石上 亮、山口友和、本多秀成、前田薫平、ますと、森下史也、ユミコテラダンス、山下ケイジ、篠原寛作、渡辺映予、寺尾海史、石河穣司、五百蔵久子、藤原絵里、及川欽之典、佐藤笑璃etc


評価:75点

昨年、知人から服部正和監督の『FRONTIER』が面白そうだと話を聞いた。予告編を観ると、日本インディーズ映画ながらも『インターステラー』のような壮大なSF映画を彷彿させる世界観に惹きこまれ、観たいなと思っていた。先日、オンライン開催される第22回ハンブルク日本映画祭で配信されると聞いて、急遽観ました。何も知らない方が楽しめる作品な為、紹介するのが難しい作品ではありますが、今後日本映画界に世界と闘える本格SF映画が生まれるのではと思わずにはいられませんでした。というわけで軽めの感想書いていきます。

『FRONTIER』あらすじ

Wie weit darf der Mensch in die Schöpfung eingreifen um das zu retten, was er liebt? Kaito hat einen Androiden konstruiert, Akira, der ihm zutiefst ergeben ist. Doch nach dem Tod seines Bruder Haruki wendet sich Kaito von Akira ab. Dieser lässt sich von Mitarbeitern der OSI anwerben, um an einer Mars-Mission teilzunehmen. Er scheint der geeignete Kandidat zu sein, da er vollkommen gefühllos ist. Aber ist er das wirklich? Und ist Haruki wirklich tot?
訳:愛するものを救うために、人間はどこまで創造に介入していいのか。カイトは、自分を慕うアンドロイド「アキラ」を作った。しかし、弟・ハルキの死をきっかけに、カイトはアキラに背を向ける。後者は、OSIの社員に勧誘されて火星探査に参加することになる。全く感情のない彼が適任のようです。しかし、本当にそうでしょうか?そして、ハルキは本当に死んだのか?

※第22回ハンブルク日本映画祭サイトより引用

彼は日本のSF映画史を変えるかもしれない

ロケットが打ち上がる。それを少年が見つめる。母が言う。「お兄ちゃんになったのよ。」そして少年が家に入り生命の誕生を見届けると時空を超えるようにして絶望した将来の少年の姿が現れる。カイトは孤独なロボットエンジニアになっていた。彼はアンドロイド「アキラ」を作り出したが、絶望の淵で佇んでおり、他者を受け付けなくなっていた。そうです、ハルキはこの世にいないのです。誠実に支えようとするアキラに「俺の人生から出ていけ」と言い放ち去っていく。

時は流れ、家にはアキラだけが残された。エンジニアに彼が発見されると、映画は多面的に時空を超えて紡がれていく。

舞台はハルキが生きていた頃に戻る。カイト宛に届け物が届く。ハルキはちょっとしたきっかけで郵便配達の女性ナミと親密になっていく。カイトも現れるが、乱暴な態度をとっている。どうも弟想いが強すぎて束縛属性が強いようだ。舞台は変わり、何故かアキラは宇宙船で船員アイザワとクドウの面倒を見る。

本作は、カイト、ハルキ、そしてアンドロイドロボットであるアキラの時系列の異なる視点から物語を紡いでいき、人生を語る。

「人間になりたいのではない、生きて死ぬ法則に従いたいだけだ」という哲学に従い、走馬灯のように人生の喜怒哀楽の瞬間を連ねていくダイナミックさと、卒業制作であることにあぐらを描くことなく本格的なメカ造形や美しさを追求した画の連続に興奮しました。そうです、これがなんと立教大学現代心理学部映像身体学科の卒業制作なのです。服部正和監督は注目しておいた方が良いです。石川慶が『Arc アーク』を撮ったように壮大なSF映画を10年以内に、東宝映画として作ることでしょう。私は応援します。