恐怖!キノコ男(2005)
Fungicide
監督:デイヴ・ワスカバジ
出演:デイヴ・ボナヴィータ、ウェス・ミラー、デイヴ・ワスカバジ、エドワード・ワスカバジ、ロレッタ・ワスカバジ、マリー・ワスカバジ、デヴィッド・ウェルドンetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
あなたはキノコがお好きですか?
『マタンゴ』はお好きですか?
丁度1年くらい前に映画仲間からZ級映画『恐怖!キノコ男』を紹介された。ワスカバジ一家が総力をあげて創り上げたホームビデオであり、博士の落とした薬品によってクソCGと着ぐるみによるキノコ男が襲いかかるという内容。何故かバルサミコ酢をかけると爆発する設定までついている。あまりの狂いようにZ級映画マニアの間では人気が高く、Amazonでは中古DVDが2万円近くで売られているプレミアっぷりだ。そんな噂の『恐怖!キノコ男』を観ました。
『恐怖!キノコ男』あらすじ
謎の液体によって生まれた巨大キノコが人間に襲い掛かるモンスターホラー。あらゆる生物を凶暴化させる恐怖の液体を開発した科学者。静養のため郊外のペンションを訪れた彼は玄関で転んでしまい、バッグからこぼれた液体が白いキノコに流れ落ち…。
ねるねるねるねからキノコ男爆誕!
アルフレッド・ヒッチコックは『裏窓』の中でクレショフ効果を巧みに使っている。ジェームズ・スチュアートの笑みに子犬の散歩シーンと若娘の半裸のシーンを挟むことで、助平さを強調させている。同じ顔のショットでも、その前後のショットによって別の意味を持たせることができるモンタージュ理論を実践している。ブライアン・デ・パルマの場合、『ファントム・オブ・パラダイス』や『パッション』で複数画面を使った、躍動感あるサスペンスを演出していたりする。
そのような映画理論をことごとく否定していく。『恐怖!キノコ男』の一貫した映画理論の否定に私の興味はそそられた。本作では、執拗に役者の顔を右から左から、下から斜めから撮っていく。怪しげな実験をする博士の同じような笑みを繋いでいく。しかし、笑みとそれ以外のカット繋ぎに変化はない。博士の笑みは、常に実験が成功する直前のワクワク感で固定されている。途中、3画面になる場面もあるがそれには全く意味がありません。
森の宿の人には、脳裏にヴィジョンが浮かび上がってくる演出を一貫して担わせ、一つの場面でのカット繋ぎに徹底的に変化を与えないのだ。これが独特な時間の流れを生み出す。たった84分の作品で後半40分くらいはキノコ男との戦闘シーンにもかかわらず上映時間5時間ぐらいのゆったりとしたテンポが流れるのです。
そして、カルト映画になる条件である変わった人や演出が我々を飽きさせまいと迫り来る。ビジネスマンは「商売の音が俺の中で鳴っているぞカチーン」とダサすぎる自己PRを行う。何故か、博士、プロレスラー、ビジネスマン、そして森の宿の人が初対面ながら一緒にロビーでビールを飲む。しかし、会話が言葉のドッヂボールで一切噛み合っていません。
それが後半への伏線になっているのであろう。突然、博士がキノコの赤ちゃんとゲームをしたり餌付けをしたりする謎のヴィジョンが飛び込む謎描写が眼前に飛び込んできます。
そして何よりも、クソCGとクソSEが味わい深い。キノコ男に捕食されている場面のSEが明らかにリンゴを食べている音だったり、大学生がとにかく色んな機能を使おうとして収集がつかなくなったバラエティ豊かなキノコ男のヴィジュアルになんだか興奮してきます。しかも、キノコ男はパンチを繰り出したり、棒で殴ってくたりと手数が多い。
酷い映画であることは間違いないのですが、このキノコソテー悪魔の味がする。一度食べたら忘れることのできない珍味であった。
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