【OAFF2021】『君のための歌』チベットの意識高い系CDを作るドン!

君のための歌(2020)
英題:A Song for You
原題:他与罗耶戴尔

監督:ドゥッカル・ツェラン
出演:ダムティン・ツェラン、ペマ・ジャ、ワンドル・ツォ、タシ・ドルジェetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第16回大阪アジアン映画祭でジャ・ジャンクーとペマ・ツェテンがエグゼクティブ・プロデューサーを務めたチベット映画『君のための歌』を観ました。ジャ・ジャンクーとペマ・ツェテンが関わっているときいて重い映画なのかなと思ったらとっても変な映画でした。

『君のための歌』あらすじ

青海省同徳県。遊牧民の青年ガワンは、いつの日か歌手として成功することを夢見ている。ある日、街で開かれた歌唱コンテストに参加した彼は、美しい歌声を持つ女性歌手と出会うが、名前を聞き出せぬまま別れてしまう。「本物の歌手と認められるには自分のアルバムを出さなければならない」と彼女にアドバイスされたガワンは、ひょんなことから、自分が肌身離さず身に着けてきたお守りに描かれた音楽の女神と彼女がうり二つであることに気づき驚く。そして彼はアルバムを制作するため、都会の西寧を目指して旅立つが…。

音楽の夢を追いかける青年が、“草原の暮らしと都市の生活”、“伝統と革新”といった相対する価値観のはざまで葛藤しながら、様々な人々との出会いや恋愛を経験して成長するさまを描く。

本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるのは、ジャ・ジャンクーとペマ・ツェテン。監督のドゥッカル・ツェランは、北京電影学院の先輩でもあるペマ・ツェテンやソンタルジャの作品で音響を担当してきた経験を持つ。本作のほとんどの楽曲を監督自らが手がけており、劇中にも音楽プロデューサー役で登場している。また、ペマ・ツェテン作品の常連俳優であるジンパが友情出演しているのも、チベット映画ファンには見逃せない。

※第16回大阪アジアン映画祭より引用

チベットの意識高い系CDを作るドン!

民族衣装を纏い、ヘルメットをつけた男ガワン(ダムティン・ツェラン)が事務所に殴り込む。歌唱コンテストに出るためだ。彼はチベットの伝統的な楽器を携え、伝統的な演出で一躍有名になろうとする。だが、彼は中々楽器を奏でない。そうです。彼は意識高い系なのです。そんな彼が一目惚れした女性に振り向いてもらう為に何を勘違いしたのか、オリジナルCDを製作しようとする。

アキ・カウリスマキ映画のようなオフビートなリズムに包まれながらやたらとドヤ顔をしてくるダムティン・ツェランを魅力的に撮る。かと思えば、崖から車が激しく横転したり、道の途中で部族と音楽バトルを繰り広げたり、知っちゃかっめっちゃか映画の中で遊び回っていて、困惑と興奮が劇場を包みこんだ。なんなんだこの映画は?と。

同時に発見も多い作品であり、チベットの村で子どもが物乞いをしているのだが、突然QRコードを取り出して、「電子決済もできるよ」と言いはじめたりする。トラベル・ジャンキーから度々聞いていた中国で急速に進む電子決済ですが、遂には村レベルにまで波及する普及っぷりをみせていたのだ。確かに、物理的貨幣が信頼できない国ほどオンライン決済に力入れているイメージが強いのですが、都市伝説ではなかったんですね。

そんな感じでCDを出すわけなのですが、何故かMVでは楽器を持たず壮大な身振り手振りで自然を闊歩する様子に盛大に草が生えました。これは面白かったが、日本公開は難しそうな謎映画と言えよう。

※第16回大阪アジアン映画祭より画像引用