フィッシング・ウィズ・ジョン(1991)
FISHING WITH JOHN
監督:ジョン・ルーリー
出演:ジョン・ルーリー、ジム・ジャームッシュ、トム・ウェイツ、マット・ディロン、ウィレム・デフォー、デニス・ホッパーetc
もくじ
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
qp COLA a(@Na_Chos_)監督、(株)おくりバント社長 高山洋平(@takayamayohei1)主演で2020年コロナ禍から製作されているTwitter映画シリーズ第3弾『FISHだ!!JOE』。監督が「チェ・ブンブンに分からない映画ネタを仕込もう」と言うことで本作の骨格に『フィッシング・ウィズ・ジョン』が起用された。本作はジム・ジャームッシュ映画初期作品の常連ジョン・ルーリーが、毎回友人と一緒に釣りをするテレビシリーズだ。『FISHだ!!JOE』におけるサイケデリックな音楽や、拳銃でタイを仕留めようとする高山さんの姿はこの作品から来ている。ジム・ジャームッシュやウィレム・デフォー好きながらもこのシリーズは全く知らなかった。面白そうだったので取り寄せて観賞したのだが、とてつもなく狂った内容でした。
『フィシング・ウィズ・ジョン』概要
ジョンと男友達の旅を記録した、全6話3枚組み 。1996年に完成し、アメリカと日本で劇場公開された「フィッシング・ウィズ・ジョン」。今でもフィッシングカルトムービーとして語り継がれているこの映画がDVD化しました。この映画には色々なオイシイモノが詰まっています。釣りの楽しみ、気心の知れた男友達同士で過ごすまったりした時間の快適さ、そして何よりもジョンが、「人生は素晴らしい。か?」と問いかけています。
※テレコムスタッフより引用
どうせ俺たちゃサグライフ
Ep.1ジム・ジャームッシュ
ジョン・ルーリーが奇妙な歌を歌いながら車を走らせている。そこにジム・ジャームッシュが颯爽と乗り込む。「釣りに行こうぜ」とジョンが語る。最近免許を取ったらしい。車を走らせいざ釣り場へ。
「フィッシュ映画と言えば?」
「『ジョーズ』!」
と他愛もない話をしながら車は疾走していく。今回の目玉はサメだ。海の食物連鎖の中で最強であるサメ。しかし、サメにも弱点はある。人間だ。と淡々としつつウィットに富んだナレーションが独特の面白さをかきたてる。
釣り番組と言いながらも、どこかゆるく、休日のダラダラとした生活が映し出される。釣りとはいっても、糸に獲物が掛かるまで何時間も待たないといけない。故に、二人は小話をするのだが、ジム・ジャームッシュの話が強烈だ。
ある女が海でイルカにモテる。イルカは何故か女のおっぱいをドツき始める。何度も何度もドツいているうちにアザができてしまうのだが、病院で検査したら乳ガンだったという衝撃エピソードをスカした顔で語るのです。
そうこうしているうちにサメが掛かる。かなりの大物で30分経ってもなかなか釣り上げることができない。まるで『老人と海』のようなジリジリとしたアクションが、エピソードの大半をしめる移動の停滞を一気に盛り上げる。
そんな姿に何故か海鳥のショットを挿入して「海鳥も心配そうに見守っている」とナレーションを入れるところにセンスを感じます。
Ep.2トム・ウェイツ
本シリーズは、男子校的ノリが強い。駄話も下らなかったりする。ジャマイカに向かうジョンとトム・ウェイツは、宿舎で現地民とフィッシュ話をする。現地民は、カレイの目が寄っているのはイルカと昔バトルして負けた罰何だよと超理論を語る。ジョンに話題が振られるが、フィッシュ話をmもっていなかった彼はウシとアリの関係性について語り場を白けさせる。どうもジョンはジャマイカのノリにはついていけない模様。賭け事に励む二人。トムは飄々としているのだが、ジョンはがっつりカモられているようだ。
そんな二人がタイを釣りに出陣する。しかし、オンボロ船には魚を格納する場所がない。ではどうするか?トム・ウェイツが「俺のパンツの中で預かっておこう」と言い始める。終いには「もう一匹釣れたか!なら俺のパンツの中でシマ争いが起きるかもなハハハ!」と豪語し始めるではありませんか。
ジャック・ロジエのバカンス映画の過酷ながらゆるい感じに近く段々と見ている方もトランス状態に陥っていきます。
Ep.3マット・ディロン
出てくる人が総じて個性的な本シリーズですが、遂に後に『ハウス・ジャック・ビルト』で大暴れするマット・ディロンが降臨しました。ここまで来ると、やりたい放題度が増していき、最近のアベル・フェラーラ映画さながらのサイケデリック映像に包まれていく。
飛行機に乗って、馬に乗って、そして徒歩でコスタリカの船乗り場に辿り着くマット・ディロンとジョン。現地民からスペイン語で踊りを教えてもらった二人は儀式を開始する。実際には数分やった程度何だろうけれども、本作ではスローモーションとコーラスによって儀式を盛り上げに盛り上げていく。
そしていざ進軍するのだ。
魚をキャッチ&リリースすると、急に逆再生映像がエピソードを支配し始める。これって釣り番組だよね?
「釣りとは何か?」の哲学を突きつけられる。
Ep.4ウィレム・デフォー
アベル・フェラーラの分身で、最近ではスピリチュアルな役ばかり演じているウィレム・デフォー(『4:44 地球最期の日』、『TOMMASO』)ですが氷に覆われた池で小屋を建てて、魚が釣れるまで帰れま10をおっぱじめると日常的に狂気じみていることがよくわかる。
「ベッドタイムの時に俺は優しくなるんだぜ?」
「寒い?そういう時は別の民族になりきるんだ」
と独特な理論を連発し、魚が釣れず数日間何も食えないでいるジョンを励ます。
『フィッシング・ウィズ・ジョン』は時々、ナレーターが「命がけだ」とアピールするのだが、大抵はゆるい映像でかき消されてしまう。しかしながら、本エピソードはガチである。氷点下27度の酷寒なる世界で本当に死にそうになる二人が映し出されている。
最後の「ジョン・ルーリーとウィレム・デフォーは餓死しました」というナレーションがブラックジョーク過ぎて大草原不可避である。
Ep.5~6デニス・ホッパー
とうとうデニス・ホッパーが降臨するわけだが、一番まともな見た目に反して一番狂っているゲストだ。タイに巨大イカを釣りにやってきた二人。デニス・ホッパーの食生活は砂糖だけらしく困惑するジョン。そんな彼御構い無しにイケイケドンドンタイを行脚するデニス・ホッパーはパワフルだ。
『イージー☆ライダー』のラストに関して「ピーター・フォンダは死んだが俺は死んでねぇ、だから続編は作れるんだぜ!」と豪語したり、腹ペコなジョンを差し置いて「ヒッピーに会いたいよな。探そうぜ」と言い始めたりやりたい放題である。
それでも毒をもったエイを釣り上げた時にはビビっていたりするもんだからチャーミングです。
最後に
映画として、テレビ番組として決して褒められた作品ではない、というよりかはただのホームビデオなんですが、釣り人が誰しも味わう待ち時間や釣り糸紐解といった細かい部分を映していたりするから、釣りに真摯に向き合っていると思う。
そんな作品を手がけたジョン・ルーリーは2021年HBO MAXで水彩画を用いて自分と向き合う新シリーズ『PAINTING WITH JOHN』を発表した模様。これも併せて観たいところである。
※MUBIより画像引用