【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『日本人の勲章』コマコを探して空手チョップ

日本人の勲章(1955)
BAD DAY AT BLACK ROCK

監督:ジョン・スタージェス
出演:スペンサー・トレイシー、ロバート・ライアン、リー・マーヴィン、ディーン・ジャガー、アン・フランシス、ラッセル・コリンズ、アーネスト・ボーグナインetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載の西部劇を観ました。

『日本人の勲章』あらすじ


西部の片田舎ブラック・ロックに、4年ぶりで特急列車が止まった。降客は左手のない男ジョン・マクリーディ(スペンサー・トレイシー)。彼はこの奥のアドビ・フラットに住む日本人駒古を尋ねて来たのだ。しかし、彼の行先をきいた村人たちの態度は、何故か警戒するような素振りだった。村のボス、スミス(ロバート・ライアン)は、戦争中駒古はよそのキャンプに強制移住させられたきり帰ってこないと言った。マクリーディがホテルの管理人ピート(ジョン・エリクソン)の妹リズ(アン・フランシス)からジープを借りてアドビ・フラットへ行って見ると、駒古のいた小屋は焼き払われており、そのあとに野花が咲いていた。彼の戦場の体験は、野花の咲くところは墓だと教えた。その帰途、彼のジープはスミスの手下コーリーの運転する車に妨害をうけた。身辺に危険を感じ、この町を去ろうと思っても汽車は翌日でなければ通らないし、バスのある隣町へ行くにも32マイルも離れているのだ。郡警察にSOSの電報を打とうとしたが、スミス一味に握りつぶされた。せっぱつまった彼は、ピートからようやく事情を聞き出すことに成功した。真珠湾急襲の翌日スミスは志願したがはねられた、彼はやけ酒をあおり皆をそそのかして駒古の小屋に火を放った、そしてころげ出た駒古を射殺した――。マクリーディは、イタリア戦線で、駒古の息子が戦死したおかげで自分が助かり、その息子に贈られた勲章を届けに来た、とピートと葬儀屋のドクに告げた。この話に良心の目ざめたピートは、妹のリズに、マクリーディを逃がすように頼んだ。だが、スミスの情婦であるリズは、スミスに内通し、マクリーディを乗せた車を淋しい山中に停めた。崖上に銃を持って現れたスミスは、無惨にもまず証人のリズを射殺し、次いでマクリーディを撃った。ジープのかげに身をひそめたマクリーディは、空ビンにジープのガソリンを入れ、ネクタイを導火線に利用してスミスに投げつけた。スミスは火ダルマになって死んだ。――翌日、この寒村にまた特急が止まった。乗って去ろうとするマクリーディに、ドクは、われわれの良心の灯とするために日本人の勲章を贈ってくれと言った。
映画.comより引用

コマコを探して空手チョップ

本作は『荒野の七人』、『大脱走』のジョン・スタージェス監督で、雄大な荒野を列車が到着するスペクタクルから始まる。そしてスペンサー・トレイシー、ロバート・ライアン、リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナインとスター俳優勢揃いとなっている。そう考えると、胸熱なアクション大作に見えるであろう。しかしながら、本作は妙だ。アクションシーンが極端に少なく、西部劇なのに映っている景色は現代的だ。そうです、本作はフィルム・ノワールの文法で描かれているのです。ジョン・スタージェスは色彩を帯びたフィルム・ノワールを西部劇の世界観で描いている。そして、日本配給の都合だろう。本作では一切日本人が登場しないのに、「コマコ」というマクガフィンに釣られて『日本人の勲章』というミスリードしかしない邦題となっている。てっきり海外の勘違い日本人像が楽しめると思って見ると、男なのに「コマコ」と名のついた謎の日本人に対する好奇心しか刺激されず肩透かしを食らいます。

しかしながら、本作はとてつもない傑作である。カンヌ国際映画祭に出品されたのも納得な、脱構築アート映画となっている。通常、西部劇ではさすらいの男が村八分にされる。本作では左手のない男ジョン・マクリーディが主人公に見える。彼が行方不明の日系人「コマコ」を探すことがメインとなっているのに、彼の素性は全然明らかにされず、謎の男を軸に嫌がらせをする村人の視点で物語は進みます。牢獄にいる囚人に「お前、コマコ知ってるか?」と詮索をかけ、面倒なことを土に埋めようとする。しかし、村人たちもある真実を口にすることは躊躇するため、観客は宙ぶらりんな状態で不穏な状況に晒されるのだ。その空気感に独特な魅力が染み出している。

それを盛り上げるようにユニークな会話が連ねられ、「お前は草むらのデッドボールさ」と囚人をあしらったり、食堂で「何か食うものはあるのか?」と訊くジョンに対して「チリビーンズさ」と返し、「それ以外に何かあるのか?」と会話が続けば、「チリビーンズビーンズ抜き!」と嫌がらせする際の妙なカッコ良さにしびれます。

こうした溜めがあるからこそ、2000年代の時代劇のようにアクションに重厚感が増す。食堂で喧嘩を売られたジョンが片手でチンピラをやっつける際の最小手数で仕留める仕草は、カンヌ国際映画祭男優賞(スペンサー・トレイシー)も納得のパワフルさを持っています。

さて1955年のカンヌ国際映画祭事情について少し語っておこう。この時代の日本映画はガンガン世界に進出し、世界は戦後独自の文法で大暴れする日本に驚愕していた。この年のカンヌでは、『近松物語(溝口健二)』、『女の暦(久松静児)』、『千姫(木村恵吾)』がコンペティション部門に出品されている。「死ぬまでに観たい映画1001本」関連作品だと、『カルメン(オットー・プレミンジャー)』や『Hill 24 Doesn’t Answer(ソロルド・ディキンソン)』、『汚れなき悪戯(ラディスラオ・ヴァホダ)』、『マーティ(デルバート・マン)』がいて、映画史的には大盛況の年だったらしい。

※imdbより画像引用

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