ホモ・サピエンスの涙(2019)
原題:Om det oändliga
英題:About Endlessness
監督:ロイ・アンダーソン
出演:マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、アンデシュ・ヘルストルムetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。私の映画史において重要な作品に『さよなら、人類』がある。エドワード・ホッパーの空間をガチで作りこむロイ・アンダーソン2014年の作品で第71回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を獲っている。私は当時アイスランドのレイキャビック国際映画祭で観たのだが、英語字幕が映らない映写トラブルが発生。学生スタッフだけではどうすることもできず「返金か、頑張って無字幕(スウェーデン語)で観てください」と選択を迫られました。結局無字幕で観たので、シックス・センスでしか内容を追えなかったのですが、笑い袋売るくだりや猿を使った実験のシーンなどよくわからない場面の連続に困惑と興奮が押し寄せました。映画人生最大の映写事故から5年近い歳月が経って、新作『ホモ・サピエンスの涙』が公開されました。ってわけでヒューマントラストシネマ有楽町で観てきました。
『ホモ・サピエンスの涙』あらすじ
「さよなら、人類」などで知られるスウェーデンの奇才ロイ・アンダーソンが、時代も性別も年齢も異なる人々が織りなす悲喜劇を圧倒的映像美で描き、2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した作品。この世に絶望し信じるものを失った牧師、戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル、これから愛に出会う青年、陽気な音楽にあわせて踊る若者……。アンダーソン監督が構図・色彩・美術など細部に至るまで徹底的にこだわり抜き、全33シーンをワンシーンワンカットで撮影。「千夜一夜物語」の語り手シェヘラザードを思わせるナレーションに乗せ、悲しみと喜びを繰り返してきた不器用で愛おしい人類の姿を万華鏡のように映し出す。
※映画.comより引用
小さな悲しみ見つけた
ロイ・アンダーソン平常運転。エドワード・ホッパー的空間の中に、小話を所狭しと並べていく。その小話は、我々が世間話でするような話の途中で始まって途中で終わるような中途半端なものだ。「こんな夢を見た」たる感覚で「こんな男がいた」「こんな女がいた」と例えば、神を信じられなくなった男が、果たして神の教えられるのか?黄昏のレストラン従業員がワインをぶちまけてしまう、歯医者が治療を行うものの患者が暴れるから怒って帰る、ある一言のせいで口を聞いてくれなかった、ハイヒールが壊れたからストッキングだけで駅を歩かざる得ないといった話をただ並べていくのだ。
この世にある悲しみや喜びの多くは些細なもの。映画ではそんな些細なものは映えないのでなかったかのように扱われてしまいがちだが、ロイ・アンダーソンは絵画的構図の中に閉じ込めることで、そんな何気ない日常を歴史の肖像として光を与えていくのだ。ロイ・アンダーソンという神の目から見る日常は、退屈で抑圧された日常を歩む者に光の手を差し伸べてくれるであろう。
正直『さよなら、人類』と比べるとロイ・アンダーソンの美学の中に世界を閉じ込めた感じがしてどこか窮屈に見えた。もう少し自由さや遊びを見せてもよかったのではと思ったのだが、3人の美女がくるくると踊り狂う場面を見てそんなことはどうでもよくなった。
※映画.comより画像引用
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