忠烈図(1975)
The Valiant Ones
監督:胡金銓(キン・フー)
出演:シュー・フォン、パイ・イン、サモ・ハン・キンポー(サモ・ハン)etc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。もうすぐ『鬼滅の刃 無限列車編』が公開される。ジャンプの大人気漫画の映画化で、コロナ禍の損失をカバーしようと意気込んでいるのか、多くの映画館で複数のスクリーンを本作にあてており、TOHOシネマズ新宿では1日42回上映される異様な事態となっている。私が行く予定のTOHOシネマズ海老名も1日33回上映である。さて、そんな『鬼滅の刃』。漫画は1巻、アニメは1話とアクションシーンつまみ食い程度にしか観られていないのですが、ある特徴を感じ取った。それは胡金銓アクションである。胡金銓のアクション映画は他の香港カンフー映画とは一線を画している。ワイヤーを用いた浮遊感のあるアクションなのだ。俊敏に、林の中で戦う『侠女』の要素を『鬼滅の刃』に感じるのです。折角、映画に合わせて予習するなら胡金銓を観ておこうと思い、今回『忠烈図』を観ました。本作は、香港版『7人の侍』と呼ばれている作品。胡金銓作品の中ではマイナーな作品ですがこれが面白かった。
『忠烈図』あらすじ
明の時代、日本の海賊「倭冦」が中国南部の沿岸を荒らしまわっていた。明皇帝の勅命を受けた李将軍は腕利きの7人を配下に選び、圧倒的多数の倭寇に闘いを挑む。香港版「7人の侍」の異名をとる、剣劇アクションの代表巨編。ラストの林のなかでの死闘、海岸におけるすさまじい斬り合いはキン・フー活劇の真骨頂といえる。武術指導のサモ・ハンが日本人サムライ役でも出演している。
※映画.comより引用
心の底から安心しろ 俺はお前より強い!!
本作は確かに『侠女』と比べると序盤のアクションにおいて手数の少なさ、似たような構図の連続にガッカリするかもしれない。『七人の侍』の看板を背負える程の重厚な物語はなく、30分程度で仲間集めは完了する上、物語上機能するのがウー夫婦しかいない欠点がある。だが、それでも胡金銓のアイデアに満ちた狂気のアクションに感動を覚える。
何と言っても、仲間が集まった時に魅せる華の戦闘シーン。笛男が、敵の位置を笛で伝えると、碁盤に碁石を配置していく。これで敵の位置を表現し、これからどのようなフォーメーションで戦うのかを物語る。そして、次々と繰り出される弓矢を盾や剣ではじき返し、敵を次々と討ち取って行くスペクタクルは圧巻だ。そして、勢いがついたらそのまま最後まで突っ走る。笑顔でのらりくらりと裏切る仙人のような男の策略に嵌り、敵に包囲されるウー。
「心の底から安心しろ 俺はお前より強い!!」
と手ぶらで突っ立っているウーに対して、右から左から上から猛攻が繰り出されるのだが、ゆらりふらりと交わし、サッとカウンターを入れる。あまりの強さに逃げようとする仙人男を夫人が阻止する。チームプレイとしての鮮やかさがそこにあります。
そうこうしているうちに、アジトへたどり着く。大ボスに強さをみせつけるためにやってきた夫人に、手下が襲いかかる。ウーに一本入ったかと思うと、ボスが「もう座りなさい」と試合終了を伝える。不満げな部下が背を向けると、衣類が破れていた。「お前はもう死んでいる」攻撃で、彼が一本取る前にウーに仕留められていたのだ。夫人は、弓矢バトルを、折角弓を渡されたにもかかわらず素手で投げ始める。日本のお侍さんとの死闘も慌てず騒がずさばいていく。その軽やかさに心奪われます。
そして、終いには飛び蹴り10連発男、空中回転男が待ち受ける。あれだけ強かったウー夫人が苦戦し始めるあたりに脚本のガバガバさがあるのだが、もうここまでくればアドレナリン全開である。『鬼滅の刃』的、重厚な空中戦闘を味わえてとても面白かったです。
※MUBIより画像引用
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