ミッドナイトスワン(2020)
Midnight Swan
監督:内田英治
出演:草彅剛、服部樹咲、田中俊介、吉村界人、真田怜臣etc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
遂に草彅剛がトランスジェンダーの問題を抱える者を演じた作品が公開された。公開前からFilmarksでは1000件以上のレビューに平均評価が星4.5/5.0と評判が高かった。もちろん、草彅剛ファン評なのでは?と疑問に思う気持ちもよくわかります。ただ、私は草彅剛がトランスジェンダー役を演じると聞いた時、私の中で「これは彼のマスターピースになる」と確信していました。
草彅剛はジャニーズアイドル最高の役者であり、二宮和也が《光の役者》なら彼は《闇の役者》といえる。
『一本満足バー』の狂気的な動きに始まり高倉健を自らに憑依させた『任侠ヘルパー』、面白いと怖いが入り乱れる『中学生円山』と毎回驚きの演技を魅せており、私の中で一番好きな役者だ。
そんな彼がトランスジェンダーで複雑な背景を持つ者を演じる。彼は一切妥協しなかった。彼の役者人生の中で最高の演技がそこにあったので語っていきます。
『ミッドナイトスワン』あらすじ
草なぎ剛演じるトランスジェンダーの主人公と親の愛情を知らない少女の擬似親子的な愛の姿を描いた、「下衆の愛」の内田英治監督オリジナル脚本によるドラマ。故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ、トランスジェンダーの凪沙。ある日、凪沙は養育費目当てで、少女・一果を預かることになる。常に社会の片隅に追いやられてきた凪沙、実の親の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果。そんな2人にかつてなかった感情が芽生え始める。草なぎが主人公・凪沙役を、オーディションで抜擢された新人の服部樹咲が一果役を演じるほか、水川あさみ、真飛聖、田口トモロヲらが脇を固める。
※映画.comより引用
草彅剛の鋭い眼光が《醜い》に救いの手を差し伸べる
冒頭、メイクルームで退廃の煙を吐き出すような重くねっとりとした声で世間話をする。オネェバーで接客が始まるのだが、丸みを帯びたフォルムのオネェが揺りかごを揺らすようにお客さんを持ち上げるのに対し、どす黒いオーラを纏い、その陰影が骸骨のような骨格を浮き彫りにし、ただならぬ雰囲気を醸す凪沙(草彅剛)が早口で会話の主導権を奪おうとして、場を氷結させる。すぐさま同僚が「もぅ、ナギサったら、メランコリ〜」と誤魔化しことなきを得る。
彼は静かに痛みを噛み締める。手術の為に金を貯め、注射を打つ。副作用かあるいは社会からの蔑視や孤独に押しつぶされそうになりながらもがく。そんな凪沙は、醜いアヒルの子である一果に段々と愛着を抱き、白鳥へ育てようとする。醜いアヒルと薄ら自覚している凪沙は、「アンタは一人で逞しく生きていかないといけないんだ。」と突き放しつつも、守ろうとするのだ。
草彅剛の演技ばかり話しているが、一果役を演じた服部樹咲が新人とは思えぬ演技を魅せている。邪悪な目だけで語る少女が、バレエを通じて錆び付いた身体が融解していき、繊細で可愛く美しい姿になる。その轍にある数々の痛みを乗り越え白鳥になる場面は素晴らしい。今後期待である。
最後に撮影の話をしよう。伊藤麻樹の中国ノワールや韓国映画を意識した撮影のレベルが高かった。一果がアパートの廊下で踊る際、陰影の強弱でシルエットになったに、素顔が現れたりする場面は彼女に眠る才能の片鱗を表している上手い描写だ。
更には、凪沙と一果の和解を表す食卓のシーンは絵画的で、奥に料理する青エプロンを着た凪沙の縦方向のインパクトを置き、手前のちゃぶ台に重心を仕掛け、その横で赤い服を着た一果を配置する。そして、青と赤がちゃぶ台に収斂し家族愛を深める。この様式美に圧倒された。
日本のマンネリ化した閉塞感ものとは一歩抜き出ていて、決して叫びや涙に頼り切らない演出がよく、またLGBTを雑に話し傷つけるという描写まで入れる入念な調査もあり傑作なのだが、それだけに終盤凡庸な日本映画みたいに話を置きにこようとしつつも冗長になっているあたり勿体無いと感じた。
※映画.comより画像引用
おまけ:草彅剛ベスト
最後に私的草彅剛ベストを置いておきます。
1.ミッドナイトスワン
2.一本満足バーCM群
3.中学生円山
4.台風家族
5.任侠ヘルパー
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