『ソニック ザ・ムービー』アメコミ映画あるある早く言いたい!

ソニック ザ・ムービー(2020)
Sonic the Hedgehog

監督:ジェフ・ファウラー
出演:ジェームズ・マースデン、ベン・シュワルツ、ティカ・サンプター、ジム・キャリーetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

3/27(金)より公開予定だった『ソニック ザ・ムービー』が公開延期となりましたので、米国iTunesで観賞しました。

本作は、公開前にあまりにも原作崩壊なヴィジュアルに大炎上し、再度ソニック周りのVFXをやり直すこととなりました。その結果提示されたソニック像は我々の知るあのキャラクターになっていたものの、再デザインを請け負ったMoving Picture Companyのバンクーバースタジオが閉鎖に追い込まれることとなりました(CINEMA BLEND”Sonic The Hedgehog’s Redesign Studio Is Closing“NICK EVANS|DEC. 13. 2019 1:06 PM参照)。近年、映画のデジタル化が進み、ゲームやアプリケーションのアップデートのように映画も市民からの意見を取り入れ、迅速に軌道修正しようとしている。『キャッツ』は、VFXの評判が悪いことを受け、公開中にもかかわらず修正処理を行い、日本等の公開が遅い地域には最新版の作品を届けた。ただ、ブンブンはこの状態には不安を抱いている。もちろん、映画のクオリティが上がるのはいいことだと思うのだが、監督やトップの思いつきで簡単に軌道修正が実施されるようになると、その下請けのVFX会社がデスマーチの危機と工数の重みがのし掛かり、産業の疲弊に繋がるのではないだろうか?実際に、本作の再デザイン作業による工数の増加が影響し、Moving Picture Companyのバンクーバースタジオは閉鎖、従業員は解雇となりました。折角、製作陣にソニックのゲームを製作している伊藤武志が関わっているのだから、最初から明らかな不気味な谷は対処していただきたいと思うところがある。それに、もし不気味の谷全開なヴィジュアルでいくなら、最後まで押し通し、カルト映画路線を突っ走って欲しかった。監督にポリシーがなく、組織の決定や周りの圧力に負けすぎな気がします。プロの世界では、「素人のこうした方が良いは聞かない方が良い」と言われるが、その典型なんじゃなかろうか?

さて、お待たせしました。そんな問題作『ソニック ザ・ムービー』の感想を書いていきます。

『ソニック ザ・ムービー』あらすじ


世界的人気を誇るセガの人気ゲーム「ソニック」シリーズをハリウッドで実写映画化。宇宙最速で走るパワーを持つ青いハリネズミのソニックが、故郷を離れて遠い地球へとやって来る。ひょんなことから出会った保安官トムとバディを組んだソニックは、マッドサイエンティストのドクター・ロボトニックが企てる陰謀を阻止するべく大冒険を繰り広げる。主人公ソニックの声を「スター・ウォーズ フォースの覚醒」でBB-8の声を担当したベン・シュワルツが務め、宿敵ドクター・ロボトニックを「マスク」のジム・キャリー、相棒トムを「X-MEN」シリーズのジェームズ・マースデンがそれぞれ演じる。アカデミー賞短編アニメーション部門ノミネートの実績を持つジェフ・ファウラーがメガホンをとった。
映画.comより引用

アメコミ映画あるある早く言いたい!

なるほど…本作は、作家性の映画というよりかは、企業が巨大プロジェクトを立ち上げることとなり、幾重にも会議を重ね、マーケティングデータに基づき、観客にウケる映画を追い求めた作品のようだ。ハリウッド映画といえば、ディズニー/ピクサー映画がそうなのだが、大勢のスタッフが会議をし、大勢の脚本家が知恵を絞って作品を作り出すのに、毎回ユニークな表現、力強いドラマが展開されていて驚かされる。日本の会議室では中々起きにくいクリエイティブさがそこにある。だが、『ソニック ザ・ムービー』の場合は、日本式会議で生まれたような出来であった。

デッドプール』を手がけたティム・ミラーを製作に従え、マーベル映画が何故ヒットするのかを徹底的に分析し映画に盛り込んでいる。その結果、アメコミ映画あるあるだけで構成された映画となっているのだ。薄っぺらいアメコミ映画あるあるを所狭しと、観客の集中力を絶やさないように一発芸を連発する姿は、どこかマーベル映画の面白さの本質を忘れてしまっているようです。

アメコミ映画あるある早く言いたい!

という気持ちが先行する。

しかし、レイザーラモンRGとは違い、早漏である。スピード狂、ソニックが自分の行動を抑制できないように、映画もあるあるを早く言ってしまう。そして、あるあるを言うことだけに専念しているのでアイデンティティがない、生まれない状態となってしまっている。

さて、あるあるを言いましょう。
『ソニック ザ・ムービー』におけるアメコミ映画あるあるを言いましょう。

アメコミ映画あるある1:冒頭で故郷が危機に瀕しがち

『マイティ・ソー』がそうだったように、本作のオープニングはソニックの故郷が敵に襲撃されて移民となってしまうところから始まります。オビ=ワン・ケノービ的育て親の死が描かれるのですが、ティム・ミラーが関わっている為か、メタ的に「あのフクロウはオビ=ワン・ケノービ的ポジションだよ」と解説し始めます。

アメコミ映画あるある2:輪っかで移動しがち

ソニックの持つリングは、どこでもドア的役割を担っており、願った場所に移動できるのですが、その移動のエフェクトが完全に『ドクター・ストレンジ』となっています。『ドクター・ストレンジ』で我々をワクワク与えてくれます。そして時間的省略が可能なので、ドクター・ストレンジは何かにつけて輪っかで移動しがちです。また、似た例として、『X-MEN:フューチャー&パスト』でも輪っか移動を使った、アクションや時間的省略を魅せていました。

アメコミ映画あるある3:高速移動で遊びがち

ソニックは『フラッシュ』に親近感を抱いているので、バーでの乱闘シーンでは高速移動しながら、おっさんにイタズラします。これは『X-MEN』シリーズでもクイックシルバーが音楽を聴きながら、料理の味見をしながら敵を倒していく場面に通じるものがあります。高速移動の特殊能力が映える場面と言えます。

アメコミ映画のヒットの本質とは?

他にも沢山アメコミ映画あるあるが隠されているのですが、それは観て確かめてください。さて、本作はあるあるのラーメン二郎映画なのですが、残念ながら本質面のあるあるは描けていない。マーベル映画が社会現象になる程人気を博したのは、ヴィランの存在だ。闇落ちしたヒーローの面を微かに魅せることで、単なる勧善懲悪にせず、現代社会の白黒つけ難きヴィラン像を作り出しているのだ。『スパイダーマン:ホームカミング』のバルチャーや続編『ファー・フロム・ホーム』のミステリオは、トニー・スタークによって、才能を潰された者だ。持てる者が、環境や富を持てなかった場合に魅せる闇と対峙させる。その人間味のある能力者は、我々市民の身近に感じる存在となるので親近感が湧くのだ。本作の場合、ヴィランであるドクター・ロボトニックは「ソニックを捕まえたい」という目的しか持っていない。何故、そこまで固執するのか、何が彼をマッドサイエンティストにしたのかが全然描かれないので、狂人と闘う異人レベルの構図にしか成り得ないのだ。それでもって、この手のアクション大作のクリシェ的に、ボンクラやサポート役の女性が配置されているだけなので、数日経てば忘れてしまいそうな映画になっている。

一応、アメコミ映画あるあるに従い、続編告知を行い、ユニバース化を狙っているような締めくくりをしているが、そこそこ面白い暇つぶし映画の域を超えられるのだろうか?続編では、深いところでのアメコミあるあるを観てみたいところである。

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