ハッピーエンド(1967)
HAPPY END
監督:オルドリッチ・リプスキー
出演:ウラジミール・メンシーク,Jaroslava Obermaierová,ヨゼフ・アブルハムetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
Twitterでは今『TENET』が案の定賛否両論分かれています。否定派の意見の中に「逆行アクションが期待外れだった」という声があった。そんな方に、もちろん『TENET』アクション好きな方にオススメしたい作品がある。それが『HAPPY END』だ。サイレント映画的《画》で語るチェコスロバキアの鬼才オルドリッチ・リプスキーが全編逆再生で描いた作品だ。クリストファー・ノーランの場合、『メメント』もそうだが、進行する時間と逆行する時間の鬩ぎ合いを描くのに対して、こちらは純度100%の逆再生映画だ。友人が紹介していたので観てみました。尚、お詫びしないといけないのは、今回youtubeのチェコフィルムアーカイブ公式チャンネルで観たのですが、字幕がつけられず、セリフに関することは全く語れません。ここでは、逆再生の面白さメインで語っていきます。
『HAPPY END』あらすじ
A dark comedy about a murder and its consequences presented in a backwards manner, where death is actually a rebirth. The film starts with an “execution” of the main protagonist and goes back to explore his previous actions and motivations.
訳:殺人事件とその結末を、死とは実は再生であるという逆転の発想で描いたダーク・コメディ。主人公の “死刑執行 “から始まり、それまでの行動や動機を探っていく。
※IMDbより引用
ぐっさんもピングーもびっくり、口から生み出されるフードたち
生首が落ちている。その生首が軽妙にジャンプして、ギロチンと合体する。殺人犯は処刑されたのだ。そんな男の顛末を逆から再生していく。タバコの火は吸い込まれ、男が引き起こす騒動は次々と元へと戻っていく。ベビーカーを蹴散らしすってんころりんしてしまう場面は、逞しくベビーカーが直立することで元へと戻る。物理法則を逆転させる力強さからくる滑稽さに思わず笑う。その面白さは、死から生への遷移で中爆発する。風呂場で解体される女の生首は、軽妙に宙に浮く。手や足は、ノコギリによって結合されていき、膨大な水が修練することによって女が復活する。建物4階近くから転落した男は、ふわふわとした足取りで生還していく。こういった原始的面白さ、それこそyoutuberが本能的に生み出す面白さを終始徹底していることによる多幸感は確かに、理詰めで面白さを追求する『TENET』にはなかったものだろう。
さて、個人的に癖が刺激されたのは、食事の逆再生シーンだ。実は私は逆再生動画の中でも食事の逆再生が昔から好きで、ぐっさんのホイコーローCMやピングーのポップコーン大量製造事件の逆再生動画は何十回も観ているほどに好きだ。食事が口から生み出される気持ち悪さが好きなのです。その手数が多いのが本作。クッキーの破片が口から結合されて再生したり、ぐちゃぐちゃのケーキが原型をとどめ始めたり、さらには喉に詰まった魚の骨を頑張って魚に戻す場面はとても面白かった。
リプスキー監督の一発芸的映画なので再現性はないのですが、映画史初期から面白さを追求する過程で利用されてきた逆再生の集大成として本作は重要だと感じました。
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