兄が教えてくれた歌(2015)
Songs My Brothers Taught Me
監督:クロエ・ジャオ
出演:Wambli BearRunner,アイリーン・ベダード,Dakota Brown,テイシャ・フラー,エレオノール・ヘンドリックスetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。先日、第77回ヴェネツィア国際映画祭で中国生まれアメリカ育ちの女性監督クロエ・ジャオ『ノマドランド』が金獅子賞を受賞した。ライダーとして片田舎で生きてきた男が落馬し、人生と向き合う姿を、モデルとなった人物本人に演じさせ、耽美的な景色が蹉跌の苦味を深めていった『ザ・ライダー』で国際的に注目され、マーベル映画『Eternals』の監督にも抜擢されている、今一番来ている監督が、ここに来て金獅子賞を受賞したことにより大きな箔を付けました。現在のアメリカ映画界事情からみてもアカデミー賞受賞待ったなしの監督。金獅子賞受賞を記念して、彼女の長編デビュー作『Songs My Brothers Taught Me』を観てみました。
※邦題『兄が教えてくれた歌』で2021/10/30(日)WOWOWにて放送決定。
『Songs My Brothers Taught Me』あらすじ
Centered around a young native man named Johnny and his life on the reservation known as Pine Rigde. He is torn between leaving his home town where his mother, incarcerated brother, and youger sister Jasuana live to be with his high school sweetheart who is leaving after graduation to start college in L.A… Aside from caring for his little sister, Johnny hasn’t a lot to leave behind in this oppressive small town.
訳:パイン・リグデとして知られる保留地でのジョニーという名の若いネイティブの男と彼の生活を中心にしています。彼は母親、投獄された弟、Yougerの妹Jasuanaが住んでいる彼の故郷を残しての間で引き裂かれている彼の高校の恋人は、ロサンゼルスで大学を始めるために卒業後に出発している。妹の世話はさておき、ジョニーはこの抑圧的な小さな町に置き去りにするものは多くない。
※IMDbより引用
この拳で抑圧を破りたい
アメリカの片田舎、ネイティブアメリカン・ラコタ族の家庭に生きるジョニーは高校卒業を間近に控えているのだが、将来に展望を見出せず酒に溺れ、授業中に居眠りをしてしまう。生物の先生は「君は何になりたいんだ?」と言う。周りは、法律家なんて言う中、彼は「ボクサーになりたい。」と声を絞り出して言う。父は優秀な馬乗りだったが、火事で死んだ。家には閉塞感が流れ、妹は兄を尊敬しながらも、酒に溺れ自暴自棄になっている兄を心配している。
そして本作を観れば、それは『ザ・ライダー』へと続いていることに気づくでしょう。『ザ・ライダー』は挫折によって狭い道しか見えない世界で暗中模索する様子を描いた作品であったが、本作はその外側にいる者、父の死によって未来が狭まってしまった者が暗中模索する様子を描いている。そして、その道は大不況で車上生活を強いられた女性の放浪を描いた『ノマドランド』へと続いている。まるでケリー・ライカートが『リバー・オブ・グラス』から『ウェンディ&ルーシー』へと発展させたようにクロエ・ジャオも一貫してアメリカにある「AnywheresになれないSomewheres」を静かに見つめているといえよう。既に『ザ・ライダー』では露骨なテレンス・マリック臭さが抜けているだけに『ノマドランド』が楽しみだ。
そして、やたらとドス黒い色彩と叫びで閉塞感を描きがちな日本映画界は是非とも本作に注目してほしい。日本の地方都市にある閉塞感を描くアイデアはここにあると思う。
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