宇宙でいちばんあかるい屋根(2020)
監督:藤井道人
出演:清原果耶、桃井かおり、伊藤健太郎(健太郎)、吉岡秀隆etc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。最近、会う人会う人に「藤井道人映画ってどう思う?」と訊かれる。藤井道人監督は、『青の帰り道』、『デイアンドナイト』で日本映画ファンの間で注目されており、昨年の『新聞記者』で社会的現象になった今キテいる監督。しかし、『新聞記者』はテーマと予告編に食指が動かず、『青の帰り道』、『デイアンドナイト』もなんとなく避けてしまっていました。しかし、『宇宙でいちばんあかるい屋根』はフォロワーさんのレビューを読んだらとても面白そうだったので挑戦してきました。
『宇宙でいちばんあかるい屋根』あらすじ
作家・野中ともその同名人気小説を映画化し、「愛唄 約束のナクヒト」の清原果耶が映画初主演を果たしたファンタジードラマ。14歳のつばめは、隣人の大学生・亨にひそかに恋心を抱くごく普通の女の子。両親と3人で幸せな生活を送っているように見えたが、父と、血の繋がらない母との間に子どもができることを知り、どこか疎外感を感じていた。誰にも話せない思いを抱える彼女にとって、通っている書道教室の屋上は唯一の憩いの場だった。ある夜、いつものように屋上を訪れたつばめの前に、ド派手な装いの見知らぬ老婆が現れる。その老婆「星ばあ」がキックボードに乗って空を飛ぶ姿に驚きながらも、不思議な雰囲気を漂わせる彼女に次第に心を開き、恋や家族の悩みを相談するつばめだったが……。監督・脚本は日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作「新聞記者」や、清原も出演した「デイアンドナイト」を手がけた藤井道人。
※映画.comより引用
京都アニメーションたる空間を3次元に世界に!
インディゴに染まる夜空が街の灯りに反射し、恍惚とする中、大間々昂の心地よいサウンドが観るものを映画の中へ取り込んでいく。そして、英語でキャストが提示されていく。これだけで日本国内だけで消費されがちな青春きらきら映画を世界に向けようとする気概が感じられる。夏が訪れ始めた頃の眩い陽光の中、清原果耶演じる大石つばめが起床する。そして、意中の隣人・朝倉のポストにラブレターを入れようとするが入れられず悶々とする。そんなアンニュイな少女の姿は、まるで京都アニメーション作品のような清々しさがある。そんな彼女は別に不満はない、不自由もない生活を送っているのだが、どうも学校にも家にも居場所がないように感じ、習字教室の終わりに屋上で一人の時間を潰している。そんな彼女の前に、みすぼらしく変な老婆・星ばぁが現れ、彼女のモヤモヤを解消していく。
本作では恍惚とした美しさが多層的意味を持っている。インディコ色に染まる夜空を前に星ばぁと過ごす際の美は、家族や友人に打ち明けられない心の中の傷を癒す快感が表現される。星ばぁはグイグイ彼女のプライベートに迫っていくが、その内面の吐露は不快を伴わない。寧ろ、誰にも打ち明けられなかった痛みが抜けていく。その時にフワフワした感触がその空間に現れている。
一方で、つばめの家に目を向けると、優しい両親に全てが整ったホコリ一つ無い美しさがあるのですが、そこには生活感が無い。まるで自分の居場所ではないような美しさを放っており、それが彼女の家に居場所ない様子を象徴させている。
藤井監督は繊細な描写に長けているようだ。今やベタな表現となっている、人と人との間に柱を配置し、心理的断絶を表現し、その柱を超えて触れ合うことで和解を描く演出もじっくり時間をかけて一切妥協することなく描く。そして、習字教室でのぽっちゃりマダムの色恋ギャグや、書店で習字教室の先生と会い狼狽するといったアニメ的演出も程よく描く。
山戸結希監督は『ホットギミック ガールミーツボーイ』で青春きらきら映画の型を破壊する演出をやっていたが、こちらは青春きらきら映画に忠実でありながらも目線は世界に向いている。国際映画祭に出品しても恥じないように、丁寧に丁寧に少女のアンニュイな気持ちを掬い上げ、星ばぁというユニークな存在がファンタジー映画としての面白さを盛り上げていくのだ。
確かに藤井道人監督は、注目すべき監督である。ひょっとしたr10年以内に三大映画祭に出品できるのではと思うほど、他の監督と比べて一歩抜きん出たところを感じました。
※画像は映画.comより引用
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