【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『輝ける青春』青春を振り返る時、人は苦味を感じる

輝ける青春(2003)
La meglio gioventù

監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
出演:ルイジ・ロ・カーショ、アレッシオ・ボーニ、アドリアーナ・アスティ、ソニア・ベルガマスコetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『死ぬまでに観たい映画1001本』掲載の長尺映画も大分少なくなってきました。遂にラスボス的存在として6時間を超えるイタリア大河ドラマ『輝ける青春』をDVD-BOX買って観てみました。予想に反して分かりやすく、めちゃくちゃ面白い作品でした。

『輝ける青春』あらすじ


希望を胸に人生を切り開く兄・ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)。才能はあるのに人生とうまく向き合うことができない弟・マッテオ(アレッシオ・ボーニ)。ローマに暮らすカラーティ家のこの兄弟は、イタリア社会を揺るがしたさまざまな事件を目撃する。
Yahoo!映画より引用

青春を振り返る時、人は苦味を感じる

真面目に論文と向き合い勉学に励むマッテオを父親が気にかける。

「お前余裕で口頭試験合格できるだろ。新聞にもお前の記事載ったし。何なら先生に一言いってやってもいいんだぜ。」

由緒正しきカラーティ家の生まれであるマッテオだったが、自分の実力で試験に合格したいため、父親の誘いを断る。そして父親が渋々部屋を出ていった先には、チャラい兄たちが見える。兄のニコラは世渡り上手。飄々とした態度で試験に臨み、共感点で持って試験で満点を勝ち取るのだ。さあ!祝福の旅を!と弟マッテオをも誘いノルウェーを目指すのだが、出発当日、彼は意味ありげな女性を抱えて現れる。ジョルジアという名のその女性は精神病を患っており、病院に収容されているのだが扱いが酷く、いたたまれなくなったマッテオは彼女を逃がそうと誘拐してきたというのだ。渋々、その作戦に手を貸すニコラ。しかし、その旅は悲劇となる。駅で、少し目を離した隙に、ジョルジアはキオスクへふらっと行ってしまい、彼女はそのまま警察に連行されてしまうのだ。事の発端を作ったマッテオは、実はジョルジアと医療組織との間に不満を抱いており、それが原因で試験に落ちていた。彼女を救おうとしたが、救えなかった。その罪意識から、旅の途中で帰ってしまう。そしてそのまま軍隊へ入ってしまう。一方、ニコラは一人でノルウェー旅行をする。

器用な兄ニコラと不器用な弟マッテオの間に運命の女性ジョルジアを配置し、40年もの長い歴史の中の刹那刹那で交わる際の苦くて酸っぱく、でも美しい青春の肖像をマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督は1秒たりとも無駄にすることはない。そして本作の素晴らしいところはイタリアの学生運動や赤い旅団問題といった、歴史的事件を物語に配置しながら、その事件を知らないと理解できない話にはしていないところだ。テオ・アンゲロプロスやラヴ・ディアスが長い叙事詩の中に、歴史的事件のメタファーをふんだんに盛り込むのに対して、本作はひとつまみのスパイスとして機能させている。その結果、本作は6時間を超える内容にもかかわらず非常に分かりやすい作品となっている。

第一部では、青春という激動期の中、ニコラとマッテオは様々な土地を歩むことで机上だけの世界から時放たれていく。『モーターサイクル・ダイアリーズ』におけるゲバラとグラナードのように、土地を移動し、人と出会うことで自分の中の哲学・信念を確立させていき、それぞれ段々と二人はレールからそれて別々の道へと歩み始める。だが、そのレールはどこかで交わる。第一部後半~第二部にかけて、その交わりによる感傷的な感情を浮き彫りにさせる。失踪したジョルジアと再会するマッテオは、あまりに急な再会で言葉が出なくなる。ニコラは家出した妻の面影を博物館で感じる。彼女はどうやら赤い旅団のメンバーになったそうで、テレビで赤い旅団のニュースが流れると背筋が凍る。娘は何か悟っているようだが、真相を知ってほしくない気持ちでいる。

こういった人生の交差を、フォロ・ロマーノやコロッセオといった歴史的建造物の美をバックに描いていく。歴史的建造物は美の裏に悲しい歴史が含まれ、層をなしている。その層を感情の層に重ね合わせているため、黒澤明『野良犬』オマージュで魅せるコロッセオでの追跡劇は泣けてくるのです。

この大河ドラマ、大傑作でありました。

※IMDbより画像引用

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