【第3回東京イラン映画祭】『ペインティングプール』日本の唐揚げ論争/イランのピザ論争

ペインティングプール(2013)
原題:حوض نقاشی
英題:The Painting Pool‎

監督:マズィヤール・ミーリー
出演:シャハブ・ホセイニ、ナガール・ジャワヘリアン、エルハム・コルダetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、第3回東京イラン映画祭に行ってきました。東京イラン映画祭とはイラン文化センター主催の無料イベント。日本ではあまり知られていないイラン映画を楽しめる映画祭だ。知名度がかなり低いらしく、Twitterでほとんど話題になっていない且つ、実際に訪れても20人ぐらいしか来ていなかったのですが、非常にレベルの高い映画祭でした。今回は、そこで観た『ペインティングプール』について書いていきます。アスガル・ファルハーディー映画常連シャハブ・ホセイニが知的障がい者の父役を演じた作品ですぞ。

『ペインティングプール』あらすじ


マルヤムとレザーは、他の人たちとは違っていた。それは単純な違いではなく、もっと深刻なものであった。二人は、この大きな違いを愛の奇跡で乗り越えてきたことを周りの人たちに証明しようと努力しなければな
※東京イラン映画祭公式サイト

日本の唐揚げ論争/イランのピザ論争

日本では今、ポテサラや唐揚げが簡単に作れると勘違いしている男に対するバッシングが投げつけられているが、イランではどうやらピザらしい。本作は、家族の和解としてピザを作る過程が丁寧に描かれた作品だ。主人公のマルヤムとレザーは知的障がい者であり、製薬会社で単純労働しながら息子の教育費を稼いでいる。算数も国語もできない二人は息子を愛している。マルヤムは息子が勉強に励んでいるのを微笑ましく思っており、自分も勉強したいと絵を差し出し「採点して」と迫る。息子は適当に15点(20点満点中)とつけるが、彼女は大喜びしている。しかし、学校の先生からは教育の面倒を見られない二人に対してキツい言葉を投げられる。

そんな生活を息子は我慢していた。メガネを買い換えようにも、お金がないのでいいメガネを買ってもらえない。遊園地に行っても、急にマルヤムが暴れだして台無しになってしまう。そんな生活についにブチギレ、彼は彼女にこう言い放ってしまう。

「ピザぐらい簡単だろ、こんなのもできないのか!」

そしてそのまま家出してしまう。

哀しみに暮れる二人は息子のために、ピザを作ろうとする。レザーはピザ屋に張り付き、作り方を一生懸命学ぶ。チーズをどのように乗っけたら美味しくなるのか、雑貨屋の店長に訊いたりするのだ。そして不器用な妻と一緒に作り始める。しかし、トマトの位置がおかしかったり不恰好なピザだ。そうです、ピザ作りは簡単ではないのです。

本作は、ファルハーディー系のシリアスイラン映画でありながらも、彼の作品とは違い成瀬巳喜男的ゆったり繊細なタッチで、障がい者夫婦と子どもの生きづらさを描いている。勉強する機会がなかった二人に対して、勉強しても結局社会から落ちこぼれ哀しみに暮れる人を配置することで、閉塞に立体感を与える演出に唸るところがあります。

マズィヤール・ミーリー監督作はどうやら東京イラン映画祭ぐらいでしか紹介されたことがないそうですが、この監督イラン映画を読み解く上で重要とみました。

P.S.イランの学校事情は、フランス流を踏襲しており、センター試験に当たる《コンクール》に向かって日夜勉学に励んでいる。またフランス流につき、テストの点数は20点満点で採点される。さらには、一発勝負のコンクールでいい点数を取れなければ、男は徴兵されてしまうので、イランでは女性の大学進学率が高いとのこと。そんな面白い豆知識を教えていただいただけでも東京イラン映画祭行った甲斐がありました。

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