アークエンジェル(1990)
ARCHANGEL
監督:ガイ・マディン
出演:カイル・マクローチ、キャシー・マリクーカ、アリ・コーエンetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
皆さんは、給付金で何を買いましたか?
私は、ガイ・マディンBOXを買いました。ガイ・マディンは日本ではほとんど知られておらず、東京フィルメックスや『THE GREEN FOG』の特集上映ぐらいでしか日本公開されていない映画作家です。彼の作品は毎回映画史映画なのですが、クエンティン・タランティーノやマーティン・スコセッシといった監督とは違い、1930年代以前、特にサイレント映画から引用することが多く、しかもそれを自分色に染めてしまうため、異次元から出現した映画に見える特徴があります。そんな唯一無二の作家故、
『死ぬまでに観たい映画1001本』では『アークエンジェル』が、『101 CULT MOVIES:YOU MUST SEE BEFORE YOU DIE』では『TWILIGHT OF THE ICE NYMPHS』が掲載されている。しかし、ガイ・マディン作品を観るのは困難を極め、観賞難易度はオンラインの時代になってもSSRと高めである。
『アークエンジェル』:給付金で観賞難易度SSRのガイ・マディン作品を仕入れました。輸入中古故、箱はボロいが中身は無事で嬉しい。
30年代以前の映画愛炸裂させた魔界は暴走しまくり、内蔵で殺害したり天から降るウサギを愛でたりする。ガイ・マディン恐ろしい子!#死ぬまでに観たい映画1001本 pic.twitter.com/eojXqAWixh
— che bunbun@映画の伝道師 (@routemopsy) August 7, 2020
そんな中、Amazonを探したら、怪しい輸入業者がDVD-BOXを扱っており、2.5万円で『アークエンジェル』、『TWILIGHT OF THE ICE NYMPHS』、『CAREFUL』、『ドラキュラ 乙女の日記より(DRACULA)』、『臆病者はひざまずく(COWARDS BEND THE KNEE)』、『THE HEART OF THE WORLD』が観られるとのこと。通常、この手の海外業者は地雷なことが多いのだが、給付金で買ってみました。
確かに、ケースはボロく、べたついている治安の悪い状態だったのですが、無事映画が観られたので感想を書いていきます。
『アークエンジェル』あらすじ
An amnesiac soldier, seeking his lost love, arrives in Archangel in northern Russia to help the townsfolk in their fight against the Bolsheviks, all quite unaware that the Great War ended three months ago.
訳:失った愛を求める記憶喪失の兵士が、ボリシェヴィキとの戦いで町の人々を助けるためにロシア北部のアーカンジェルにやってきたが、みんな3ヶ月前に第一次世界大戦が終わったことを知らずにいた。
※IMDbより引用
内臓を出しては入れ…
私は『THE FORBIDDEN ROOM』や『THE GREEN FOG』といった近年の覚醒したガイ・マディンから入っている人なので、この時代の彼の作品はまだ理論に凝り固まっているイメージが強い。冒頭、謎の壺を落とすシーンを様々なヴァリエーションで描き、そこから戦争と愛の王道物語が始まる。ソ連を舞台にしているというのに、オレクサンドル・ドヴジェンコやセルゲイ・エイゼンシュテインのような激しいカット割りは抑え、1930年代以前のアメリカ映画を彷彿とされる落ち着いたショットが特徴的となっている。これが1990年の作品だとは、ガイ・マディン映画と知らなければ分からないだろう。彼の切れ味がまだ頂点に達していない頃の作品なので、トーキーとサイレントを行き来する演出に違和感があるものの、後半から30年代以前じゃありえない場面のオンパレードとなる。
ナイフで男が刺されるのだが、内臓がニュルニュルと出てきて、死んだのかと思いきや、男は内臓を腹の中へ戻し始める。そして内臓の一部を使って敵を絞め殺し、目潰しをした上で、喉に勲章を突っ込む、グロテスクな暴力描写を挿入していくのだ。そして色彩を変えながら、天から大量に降ってくるウサギを目で始めたりする。そして人の顔と業火を多重露光で重ね合わせていくのです。ようやく、ガイ・マディンの暴走が始まったと思うと、直ぐに映画が終わってしまうので非常に勿体無いなと思うものの、1990年代時点でこんな唯一無二の魔界を生み出していたと思うと衝撃的である。
そして、そんなガイ・マディンの魅力を2004年に第5回東京フィルメックス(『世界で一番悲しい音楽(THE SADDEST MUSIC IN THE WORLD)』、『ドラキュラ 乙女の日記より(DRACULA)』、『臆病者はひざまずく(COWARDS BEND THE KNEE)』が上映された)が紹介しようとしていたのを知り、尚更東京フィルメックスを応援したくなりました。
ガイ・マディン記事
・“Ç”「ピンク・フラミンゴ」ジョン・ウォーターズ絶賛、サイケな映画「THE FORBIDDEN ROOM」
・【解説】『The Green Fog』ゴダールを指パッチンで凡人に変える男ガイ・マディン緑の魔法
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