『Jasper Mall』終焉のショッピングモールで静かに死を待つ者たち

ジェスパー・モール(2020)
Jasper Mall

監督:Bradford Thomason, Brett Whitcomb

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

楽天やAmazonの登場で店舗ビジネスは死につつある。特にショッピングモールの閑散具合は著しく、地方のイオンへ行くとガランとした生気を失った空間に切なさを感じます。それだけでなく、恵比寿の三越や渋谷のモディへ行くと、東京なのかと疑いたくなる程人がいません。昨年、私はグアムへ行きました。幼少期以来のマイクロネシアモール訪問となったのだが、あの頃に感じていた巨大さから来るワクワク感はなく、人はそこそこいるが全体的に活気が失われた空間に悲しくなりました。まるでジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』で描かれる、大量消費社会に飼いならされた人類を見ているようでした。

長い前置きはこれくらいにして、日本未公開ドキュメンタリー『Jasper Mall』が面白かったので紹介しようと思う。

アメリカ・アラバマ州にあるショッピングモール《Jasper Mall》。東京ドームより少し小さいこのショッピングモールは1981年にオープンし、一時は中にKマートが入る程の活気があった。しかし、段々と街がゴーストタウンと化していき、主力店舗が撤退。今や寂れたショッピングモールに成り果てている。そんな《Jasper Mall》の1年を捉えたドキュメンタリーである。

『Jasper Mall』あらすじ


A year in the life of a dying shopping mall.
訳:死にゆくショッピングモールの1年
IMDbより引用

終焉のショッピングモールで静かに死を待つ者たち

ショッピングモールの朝は早い。

誰もいないモールの中を警備する。そして店は開く。しかしながら、人は全くいない。テナントが入らなくなったデッドスペースは、ハリボテの壁で埋め尽くし、なんとかショッピングモールとしての体裁を保とうとするが、明らかに死を待っている状態である。1981年創業の《Jasper Mall》はかつては週末になると人がごった返していた。そこには職人がいて、工場で技術を磨いたり、花屋の店員は常連さんの為にその時その時に応じた花束を作っていた。しかし、かつての常連はもうほとんどいない。

どこ行ったのかな?

死んじゃったのかな?

彼ら/彼女らはこのモールを去らないのか?

もう年を取りすぎた彼ら/彼女らにとって愛着あるこの場を去ることはできない。去ったとしても行き場がないのだ。30代くらいの女性は、モール外で退廃的ムードを漂わせて、「このモールは好きだけれども、出ていきたい。でもどこへ行けばいいんだろう?」と投げやりに会話している。

そんなモールに来る人は雀の涙ほど。老人が車椅子や杖をつきながら訪問し、広々とし過ぎたスペースでドミノに励んでいる。掃除をするスタッフと、だらだらと過ごしながら時が過ぎるのを待っているのだ。だが、微かな希望もある。なんと、珍しく若者が職員になりたいと面接に来てくれたのだ。スタッフ一同迎え入れる。どこか人生にくすぶっているその青年は掃除をダルそうにこなす。それでもスタッフにとっては嬉しいことなのだ。

カメラはオーナーに迫る。かつては賑わっていたデッドスペースを前に、「潰れたらまた別のモールに行くさ。そんなもんよ」と語る。

今やネットショッピングが主流となった時代で失われていく文化。その最後の灯にひたすら胸が締め付けられる作品でした。

これは日本のシャッター街にも通じる問題を捉えた必見ドキュメンタリーと言えよう。

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