泣きたい私は猫をかぶる(2020)
監督:佐藤順一、柴山智隆
出演:志田未来、花江夏樹、寿美菜子etc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。当初、6月に劇場公開が予定されていた『ペンギン・ハイウェイ』のスタジオコロリド長編2作目。新型コロナウイルスによる影響でNetflix配信となりました。本作はタイトルも含め、日本アニメのお決まりを余すとこなく注ぎ込んだ作品。それだけに、驚きが少ない作品ではあるのだが、日本アニメがここ数十年かけてどのように変化してきたのかが一望でき、尚且つその終着点として君臨する本作は日本アニメ史にとって極めて重要なマスターピースだ。今回は、そんな『泣きたい私は猫をかぶる』を通じて、ジャパニーズアニメーションとは何かについて考察していきたい。
『泣きたい私は猫をかぶる』あらすじ
「ペンギン・ハイウェイ」を手がけた新進気鋭のアニメーション制作会社、スタジオコロリドの長編アニメーション映画第2作。猫に変身できる不思議なお面を手にした女子中学生の恋を描くオリジナルの青春ファンタジーストーリーで、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「さよならの朝に約束の花をかざろう」の岡田麿里が脚本を担当。「美少女戦士セーラームーン」や「ケロロ軍曹」シリーズなどを手がけてきたベテランの佐藤順一と、「ペンギン・ハイウェイ」で絵コンテなどを担当してきた柴山智隆が共同監督を務めた。自由奔放でちょっと風変わりな笹木美代は、クラスメイトから「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれ、いつも明るく元気いっぱいな中学2年生。思いを寄せる日之出賢人には毎日のようにアタックするが、全く相手にされていない。それでもめげずにアピールを続ける彼女には、ある秘密があり……。声の出演は「借りぐらしのアリエッティ」などで声優経験もある志田未来と、「鬼滅の刃」などに出演する人気声優の花江夏樹。Netflixで2020年6月18日から配信。
※映画.comより引用
ジブリ→細田守→新海誠
『泣きたい私は猫をかぶる』は、見事にジブリ→細田守→新海誠へと世代交代していった日本アニメ史のメインストリーム上に乗っかっている作品である。猫の世界と人間の世界の揺らぎを思春期の揺れ動く心情に重ね合わせて行く様子は、『猫の恩返し』はもちろん『千と千尋の神隠し』を彷彿とさせる。大人になる過程で、失うものを描いているので『魔女の宅急便』に近いものを感じる。そこへ細田守的ケモノに対する執着を、青春のみずみずしさで打ち消そうとする技法が注ぎ込まれる。ムゲの華奢な猫の転生から身体の一部が猫化するところまでをグラデーション持たせて描いて行く。そして新海誠が得意とする、重いストーリーを生と死の狭間を強調し、感傷的に描いていく。ムゲと同級生のシリアスな喧嘩に留まらず、親同士のヒリヒリとする殴り合いが描かれ、息苦しい現実世界の逃避として猫の世界が甘美な毒を放出させているのだ。
世代交代していく日本アニメの全てを取り込んだ本作は、お決まりを踏襲することによって、日本アニメが得意としてきた思春期から大人になるまでのプロセスを強調している。『劇場版 ドラえもん』なんかもそうだが、この手の作品は魅力的な異世界というものを提示するところから始まる。ユートピアに見える世界、本作の場合、本音では「好き」と言えない日之出賢人の前に猫として現れることで愛を感じ合う空間に陶酔するが、そのユートピアには人間の魂を奪い去るど毒がある。彼女は、猫になる代償として人間を失う恐怖と対峙するのだ。誰しもが、大人になる過程で性善説の綻びに気がつく。汚く、酷い大人の存在に気づく。その気づきを通じて、現実か異世界かを天秤にかけて自分を成長させていく。思春期から大人になる通過儀礼として存在する、大人社会との対峙というものを如何にメタファーとして落とし込むのかを日本アニメ映画は試行錯誤してきたのだ。
無論、ベースは『オデュッセイア』であることは言うまでもない。異世界という地獄から命がけで脱出する冒険譚はいつだってワクワクドキドキするものがある。その地獄を、猫の世界にしたり、魔界にしたり工夫し、思春期を描いていると言えよう。
また、本作は外側の2箇所にも注目していただきたい。
1つはタイトル。昨今のライトノベルやアニメのタイトルは文章であることが多い。本作も『泣きたい私は猫をかぶる』と、これだけで青春、感傷的、猫が主役といった推測が立てられる。情報化社会、膨大な情報の渦からコンテンツを見てもらうためには、観賞者にどんな作品かを説明する必要があり、その傾向として日本では文章タイトルがここ10年で主流になってきた。
えっ全然映画の中身について話してないって?
これは映画を観て欲しい。ストーリーが分かりやすいので、何言ってもネタバレになってしまうので、是非Netflixでこの結晶を楽しんでいただけたらと思う。
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