石炭、金(2009)
原題:煤炭,銭
英題:COAL MONEY
監督:王兵(ワン・ビン)
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。2020/4/4(土)からイメージフォーラムにて王兵8時間マラソン『死霊魂』が公開される。それを記念してアテネフランセでは王兵(ワン・ビン)監督の有名どころからレア作品まで特集上映されることとなりました。残念ながら14時間に及ぶ怪作『原油』は上映されなかったのですが、石炭採掘場を描いた『石炭、金』が日本語字幕付きでは初の上映となるということで観てきました。
『石炭、金』概要
掘り出された石炭が運ばれていく。中国北部、天津の大きな港に繋がる山西省の鉱山からの“石炭ロード”。100トンのトラックが、昼夜を問わず際限なく往復し、その道沿いには、売春婦、巡査、ごろつき、車庫のオーナー、整備士がいる。黒く汚れた石炭そのものを主人公に、労働と資本主義の関係性を、短い時間に凝縮した魅惑的なドキュメンタリー。
※アテネフランセより引用
世界の涯てで闇を積み、切り売りする男たち
土埃が舞い、画面の外側にまで鬱陶しい風が伝わってくる中国の荒野。そこに窶れた顔をした男たちが、風を避けながらタバコに火を付けあって、時間を潰す。やがて男たちはトラックに乗り込み、整備されていない道路を突き進む。世界の涯てで石炭が採掘され、それが中国各地に運ばれていく過程をワン・ビンは密着取材している。順番がやってきて、ショベルカーで石炭が積み込まれる。その時に舞う、土埃に男はもがき苦しみながら、この金の原石が積み終わるのを心待ちにしている。
さて、男の旅はここから始まる。長い長い旅路。各所で、石炭を欲している業者と交渉するのだが、一筋縄ではいかない。どちらが足元を見るのかの闘いとなってくる。1t=720元なのか700元なのかで大きく違ってくるので、電卓を叩き、作戦を練る。時には、どこで積み下ろしをしたら高く売れるのか情報収拾する。しかし、時には石炭の中に石が混ざっていることがある。掘る場所が深いと、割ることの難しい石が混入し、その途端価格が下がる。それをなんとかして誤魔化そうとして石炭を売りつけるのだ。
原題は、費用対効果を最高に高めるべく、トコトン無駄を省いている。時間も金だという認識があるので、価格も一律、値引き交渉もしない姿勢だったりする。しかし、少し前までは、価格は会話の中で決まった。会話がうまくいけば、石が入っていようがそれなりの額で売りつけることができる。心身ボロボロになりながら、石炭を売る=金を得るサイクルを繰り返す中国暗部の我々が中々目にすることのない世界に驚かされるばかりであった。
それにしても、王兵監督がここまでアクションあるドキュメンタリーを撮るとは珍しい。いつもであれば、固定カメラだったり、被写体の背後をトボトボとついてくるだけ。その被写体は魂が抜かれてしまったかのように生きた心地しない動きをするのだが、本作では常時アグレッシブに交渉に励む男たちが描かれている。王兵の意外な側面を観測できて、とても満足でした。
ただ、アテネフランセ混雑&咳している方が多かったので新型コロナウイルスに罹ってしまうのではと若干恐怖を抱きました。しっかり手洗いうがいですね。
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