『人間の時間』キム・ギドクの戒厳令

人間の時間(2018)
原題:인간, 공간, 시간 그리고 인간
英題:Human, Space, Time and Human

監督:キム・ギドク
出演:藤井美菜、チャン・グンソク、アン・ソンギ、イ・ソンジェ、オダギリ・ジョーetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2018年にキム・ギドクが藤井美菜、チャン・グンソク主演に描いた問題作が、ひっそりと日本公開されたのでシネマート新宿で観てきました。

『人間の時間』あらすじ


「嘆きのピエタ」「メビウス」などで知られる韓国の鬼才キム・ギドクによるハードファンタジー。恋人とともに旅行を楽しむ女性、有名な議員とその息子、そして謎の老人と、さまざまな人びとを乗せ、船は出航する。かつては軍艦でありながら退役後はクルーズ船となったその船が大海原へと出た頃、開放的になった乗客たちは酒、ドラック、セックスと、さまざまな顔を見せていった。狂乱の後、疲れ果てて眠りについた彼らが目を覚ますと、船は霧に包まれた未知の空間に突入していた。何が起こったのか理解できない現実を前に呆然とする人びと。やがて乗客たちは生き残りをかけた悲劇的な事件を次々と起こしていく。主人公イヴ役を藤井美菜、アダム役をチャン・グンソク、イヴの彼氏役をオダギリジョーが演じるほか、アン・ソンギ、イ・ソンジェらが顔をそろえる。2019年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭では「人間、空間、時間、そして人間(仮題)」のタイトルで上映。
映画.comより引用

キム・ギドクの戒厳令

韓国映画界の問題児キム・ギドクが放つSF映画は今の世界情勢の縮図ともなっている。

突如、異次元に転送されたクルーズ船。いつ、元の世界に戻れぬか分からぬ状態で政治家、軍人が独裁者となり、食料を掌握する。そして戒厳令を敷く。しかし、ジリ貧になっていき、遂には一般人を皆殺ししようと計画を練る。

テーマは非常に面白く、キム・ギドクの容赦ない暴力描写が見どころとなっているのだが、どうやらキム・ギドクは人を虐めることにしか興味がないらしく、説明台詞過多且つ、演技指導が上手く行ってない故に大根芝居を延々と魅せられる拷問であった。

致命的なのは主演の藤井美菜で、キャリアは長いしそこそこメジャー作にもでているはずなのに片言日本語のような臭い芝居をしている。「ダメェ」とタブーを犯す爺さんを止めようとする場面も、本来なら言葉にできない惨さに対し絞り出すようにして制止の台詞を投げつける必要があるのに、毎回ワンパターンで「ダメェ」と言うしかしないのだ。ただ、それ以前にあまりにも藤井美菜が可哀想である。ありとあらゆるシチュエーションでレイプされていくのです。いくら演技とはいえ、キム・ギドク監督は必要以上に彼女をおもちゃのようにして遊んでいる酷さにドン引きしました。

彼が人をおもちゃにしているところは、持続可能な生活を目指し、種を植える場面で、女性の股に土を被せるあたりにも見受けられます。

キム・ギドクは#MeToo運動で『メビウス』撮影時のセクハラ、パワハラが明るみになってバッシングされた。#MeToo運動による魔女狩りのような動きは慎重に取り扱うべきだと考えており、監督を容易に社会的に殺すことを問題視している私も、本作から滲み出る反省していない感じ。しかもラース・フォン・トリアーとは違い、内なる悪と向かい合うことなく本能あるがままに役者を虐め、映画演出がおざなりになっている様は看過し難いものがありました。
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