インディペンデントリビング(2020)
監督:田中悠輝
評価:60点
世の中には、《ぶんぶん》と名のつくものは意外とある。有名なのはつり具のブンブンであろう。CHE BUNBUNの芸名で活動しているだけに、どうしても《ぶんぶん》には親近感を抱くのだが、なんと映画会社に《ぶんぶんフィルムズ》たるものがあると映画芸術を読んで知った。
これは観なくてはと、ぶんぶんフィルムズ作品である『インディペンデントリビング』を観てきた。
『インディペンデントリビング』概要
大阪にある自立生活センターを取材し、それぞれ障害を抱えながらも地域コミュニティで自立した生活を送るため奮闘する人々を捉えたドキュメンタリー。障害当事者による運営のもと、日常的に介助を必要とする人が1人で暮らせるよう支援をする自立生活センターでは、家族のもとや施設ではなく自立生活を希望する人たちが暮らしている。自由と引き換えにリスクや責任を負うことになる自立生活は、彼らにとって命がけのチャレンジだ。時に失敗しながらも、自ら決断し行動することで、彼らは確実に変化をしていく。自身も介助者として働く田中悠輝監督が、自立支援の現場で3年にわたって撮影を敢行。「障害者」という枠組みを壊し、自身や社会を変えていこうと奮闘する人々を見つめ、生きづらさを抱えてきた人々が自分らしさを取り戻す瞬間とその輝きを映し出す。
※映画.comより引用
持続可能な自立のあり方
これは大阪にある自立生活夢宙センターの活動に迫ったドキュメンタリーで、我々が知ったつもりになっている、分かったつもりになっている障がい者と社会の関わりにメスをいれた作品である。
障がい者は単に介護されるだけの存在だろうか?我々はついつい障がい者に対して「可哀想」と憐みの目で見てしまいがちだが、それは毒にも薬にもならないし、彼らの為にもならない。
自立生活夢宙センターは、障がい者の障がい者による障がい者の為の仕事を創り出している。障がい者が、自分の意思でやりがいや幸せを見つけ出すことをフォローすべく、《距離感》を意識した運営で支え合いの関係を構築しているのだ。
例えば、脳に障がいを抱え、自分の言葉で要望を伝えるのが困難な人が出てくる。仲間は最初に「ヘルパーはボランティアとは違います。お金をもらってます。だから、貴方の要望は聞きますが、言われたことしかしません。」と強めに言う。通常であれば、過度に察してヘルパーは介護してしまうであろう。しかし、それでは彼が自立して幸せを掴むことを放棄させてしまうのだ。もちろん、彼が意思を言語化できるようにある程度の線路は引くのだが、過度に優しくしない距離感を大事にしているのだ。
そのポリシーで生み出される環境は、一般企業で働く我々にとっても仕事と人間関係の整備方法の見本として発見に満ち溢れている。違いに対話と支え合いを通じて、得意、不得意を見つけていき、社会活動する中で致命的な不得意は総出で矯正していく様に、持続可能な障がい者の働き方像として説得力がある。
社会は臭いものに蓋をするように弱者を見なかったことにする。その結果、コミュニケーションが全く取れずに大人になってしまうケースが現れる。本作は様々な具体的な例を通じて、障がい者と社会の関わり方を教えてくれました。
P.S. 劇中に登場する夢宙センターが作った自主ヤクザ映画《夢宙仁義なき戦いⅣ〜松山抗争篇》がめちゃくちゃ面白かったので、いつかフルで観てみたいです。
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