【映画批評月間 フランス映画の現在】『宝島(2018)』治安が悪すぎる避暑地

宝島(2018)
原題:L’île au trésor
英題:Treasure Island

監督:ギヨーム・ブラック

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ジャック&ベティの企画『映画批評月間 フランス映画の現在』でカイエ・デュ・シネマベストテン2018にて10位に輝いたドキュメンタリー『宝島』が上映された。以前、日本上映された際は有給が取れなくて観に行けなかったのだが、ようやく出会うことができました。

『宝島』概要


パリの北西にあるレジャー・アイランドでのひと夏。ある者たちにとっては冒険、誘惑、ちょっとした危険を冒す場所。他の者たちにとっては避難、逃避の場所となっている。世界の喧騒とどこかで響き合いながら、この場所には有料の海水浴場もあれば、人目につかない片隅、あるいは子どもたちが探求する王国もある。
※KYOTO MINAMI KAIKANサイトより引用

治安が悪すぎる避暑地

ギヨーム・ブラックがエリック・ロメール『友だちの恋人』の聖地であるセルジーポントワーズで劇映画『7月の物語』と同時に制作したドキュメンタリー。避暑地セルジーポントワーズでの日常がフレデリック・ワイズマンのようにモザイク状に切り貼りした映画だ。少年たちが3時間近くかけてやってきたのに、親同伴でないが為に門前払いされる。怒った彼らは、茂みから川に侵入してレジャーの中心に侵入する。『スタンド・バイ・ミー』のような物語が等身大として描かれる。このセルジーポントワーズは常に騒動が発生する。少年たちは自由自在に不法侵入をする。柵なんか容易で乗り越えてしまう。それを捕まえなければいけない。一方でアルバイトに来ているチャラ男は、一夏の出会いを求めて女をナンパし、常時に明け暮れる。ガジェットにメキシコのピラミッドのような建築物がドラマを盛り上げる。そんなちょっと治安の悪い天国の裏側に迫ると陰りが見えてくる。バックヤードでは、いつまでセルジーポントワーズを開くのかを入園数と天候を比較してシビアに議論する。アルバイトは、未来を見通すことができず黄昏ている姿が垣間見える。また、施錠してセルジーポントワーズから立ち去る男は、自分の人生を反芻して、その終着点がここであることを淡々と語り、その空気から哀愁が溢れる。陰りの裏に、一抹の不安もない子どもの冒険を配置することで、避暑地セルジーポントワーズないしフランス人のバカンス像を立体的に捉えることに成功している。

だが、フレデリック・ワイズマンを意識したクレール・シモン『夢が作られる森』と比べると、かなりワイズマン的演出、特にビジネスに関する議論とそれ以外の交差演出に囚われてしまっていて、バカンス映画なのに窮屈に感じてしまった。これをベストに選ぶカイエが意外でした。『7月の物語』ではないんですね。

※moreliafilmfestより画像引用

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