【しまじろう映画研究1】『しまじろうとおおきなき』劇場版おかあさんといっしょの原石

劇場版しまじろうのわお! しまじろうとおおきなき(2015)

監督:平林勇、川又浩
出演:南央美、高橋美紀、山崎たくみ、杉本沙織、我修院達也etc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、映画超人の済藤鉄腸さん(@GregariousGoGo)が、日本映画に絶望するなら「しまじろうを観てからでも遅くないと思うんですよ。」と語っていました。それはそうだと思う。確かに興行収入トップに出るような日本映画は割とポンコツだったりするし、日本アカデミー賞ノミネート作品を眺めると絶望したくなるのも分かる。しかし、そう絶望している人は原石たる世界を知らなかったりする。子ども映画の世界では、海外の映画を凌駕する超絶技巧がたくさん観測できるのに、それに気が付いていないのです。『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』では、往年の仮面ライダーのタイトルロゴがヴィランに降り注ぎ、《平成》という文字を形成するゴダールもびっくりなアクションが展開される。そして『映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!』では多くの日本映画が軽視してしまうフレームの外側を潤沢に使った演出が施されているのだ。
さて、先日僭越ながら平林勇監督の『SHELL and JOINT』を拝見し、レビューまで書かせてもらいました。そんな平林監督は、なんと《しまじろう》映画を多数手掛けている方である。これは、折角のチャンス。Netflixに彼が手掛けた作品が全て配信されていたので研究してみることにしました。

『劇場版しまじろうのわお! しまじろうとおおきなき』あらすじ


「はっけん たいけん だいすき!しまじろう」などのテレビアニメ「しまじろう」シリーズの劇場版しまじろうのわお!第3弾。雲を突き抜ける高さの巨木マザーウッドを訪れたしまじろうたちが、壮大な冒険を繰り広げていく。前作に引き続き、『やなせたかしシアター』シリーズなどの川又浩がアニメパートの監督を担当。しまじろうの声を担当してきた南央美を筆頭に、シリーズを支える声優陣が結集する。観客となる子供たちが、歌やダンスなどを通して物語に加わることができる構成もユニーク。
Yahoo!映画より引用

劇場版おかあさんといっしょの原石

映画 おかあさんといっしょ はじめての大冒険』では、6分間のインターミッションがあったり、冒頭でうたのおにいさん、おねえさんの前説があったり斬新な構成で映画が紡がれていた。恐らくは、しまじろうを参考資料として使っていたであろう。本作では、冒頭にフェルトのような質感の木が本作でのルールを説明する。6分間の休憩は本作からしまじろう映画に導入されたシステムだ。また、映画館は通常、騒いだりしてはいけないのですが、本作ではどうぞ笑って騒いでくださいと促します。さらに、泣いてしまっている子どもに寛容に接しましょうというルールを提示するのだ。そして、本編に入る前に、入念に元気になる踊りやクイズを流す。そこで、入り口で配布された《おうえんばな》たるメガホンの使い方を伝授していくのです。

さてクイズについて触れよう。しまじろうたちは、まいごばなに捕食され、四散に転送されてしまう。そこで一行はカボチャのカボさんや、屁で浮遊するオナラガニと対決する。その対決はクイズ形式となっており、観客はしまじろうたちに答えを教える役割を与えられる。食べ物の断面図を答えさせたり、イカサマで勝利しようとするオナラガニの罠を教えたりと手数の多さに驚かされます。また、『マタンゴ』だろうか?キノコにされてしまったみみりんのシュールなビジュアルに大人もクスリと笑わせられます。

さて、こういった前座を経て本編が始まります。

この手の子ども物語の定石である、兄が妹の存在に嫉妬するエピソードが展開されていく。母の愛情に飢えたしまじろうが、妹はなちゃんを疎ましく思うのだが、冒険を通じて自分のあるべき姿を掴むという内容だ。ここで重要なのは、マザーウッドの住人にいる猿だ。蜘蛛にさらわれた妹を助けるために、猿姉貴についていくしまじろうを彼女は疎ましく思う。それは、はなちゃんを疎ましく思うしまじろうの裏返しの世界だ。逆転する世界を通じて、兄と妹、姉と弟の関係性を強調し、悩める兄、姉の苦悩を氷解させていく仕組みとなっているのだ。

そして、ラスボスの蜘蛛と戦う場面では、メガホンをぐるぐる回す、声を出す道具以外の使い方を提示しているユニークさもあり非常に面白かった。

王道ながらも、幼少期に抱える問題を鋭く見つめ直した作品でありました。

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