【フィリピン映画特集】『インシアン』DV家庭、毒親育ち、somewhereな私の苦悩

インシアン(1976)
INSIANG

監督:リノ・ブロッカ
出演:ヒルダ・コロネル、モナ・リサ、ルエル・ヴァーナル、レス・コルテスetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アテネフランセの特集《フィリピン映画生誕百周年記念フィリピン・シネマ・クラシックス》で『マニラ・光る爪』でお馴染みリノ・ブロッカの毒親映画をアテネフランセで観てきた。90分の中に血生臭い毒親物語が凝縮されておりました。

『インシアン』あらすじ


母親とともにスラム街に住む美しい娘、インシアン。貧乏ながらもつつましく生活していた母娘であったが、母親の若い恋人ダドが家へ転がり込んでくると事態は一変。インシアンに目をつけたダドは、ある晩彼女を力づくで犯してしまう。ダドに惚れ込んだ母親はインシアンの訴えに耳を貸さず、インシアンを罵倒する。フィリピンの巨匠リノ・ブロッカが不動の地位を築いた本作を、フィリピン映画開発審議会による修復版で上映する。
※アテネフランセサイトより引用

DV家庭、毒親育ち、somewhereな私の苦悩

今回の上映素材はどうやら、マーティン・スコセッシ率いるWORLD CINEMA PROJECTによるデジタルリマスターのようで、めちゃくちゃ綺麗でした。

とは言っても、開幕1秒で豚の首元にナイフをグサっと刺し、解体する場面から始まります。主人公の女の子は、ろくに仕事せず雀荘通いなクズ男と、それに依存する毒親の家で暮らしています。彼女には、『男はつらいよ』における佐藤蛾次郎似の恋人がいるが、この毒親のせいでデートにいかせてもらえません。折角稼いだお金も、「あんたを育てるのに金がかかっているのよ。金は寄越しな!」と搾取されてしまう。かといって、外の世界を知らないし、稼げる手段もないので、この地獄に留まるしかない。まさしく、SOMEWHEREな人の実態が明らかにされているのです。

そして、事態は悪化の一途を辿る。DV男の告げ口で、アフロヘアーと引き離された彼女に彼はレイプしようとするのです。しかも、言葉巧みに妻を口説き、彼女を悪役へと仕立てた挙句、「俺はお前が好きで妻に近付いたんだ」とにじり寄ってくるのだ。そして、噂は町中に広がり、彼女は汚れた女として蔑視されるようになる。そんなクズの極みに心身ボロボロになった彼女は復讐を企てていきます。

全登場人物クズで、本能的理由が正当化されてしまう地獄を、リノ・ブロッカはネオリアリズモ的視点で捉える。

『マニラ・光る爪』以上に濃密ハードな搾取の構図に唖然としました。

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