【ケリー・ライヒャルト祭】『ミークス・カットオフ』移動があれば映画になる

ミークス・カットオフ(2010)
Meek’s Cutoff

監督:ケリー・ライヒャルト
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ブルース・グリーンウッド、ウィル・パットンetc

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ケリー・ライヒャルト映画にしてカイエ・デュ・シネマ年間ベストテンにも選出された『ミークス・カットオフ』を観ました。ミニマムながらも見応え抜群。映画館で観たかった超絶傑作でありました。

『ミークス・カットオフ』あらすじ


1845年のオレゴン州。テスロー夫婦、ホワイト夫婦とその子供ジミー、そしてゲイトリー夫婦の3家族が移住をしようとしている。そしてそれをガイドするのが道を熟知しているというスティーブン・ミーク。2週間で終わるはずだった旅は5週間が経ち、旅は過酷になっていく。3家族の男たちは、本当にガイドしているのかミークを疑い始めていた。ある日、一行は遠くで馬にまたがった人影を見る。そしてエミリー・テスローが一人で行動をしていると、突然原住民が目の前に現れる。以前に見たと人影が乗っていた馬も一緒だった。エミリーは動転して急いで馬車に戻り、ショットガンを空に放つ。その晩一行は見かけた原住民について話し合う。別の日、ジミーが原住民を見かけたといい、ミークとソロモン・テスローが追いかける。2人は原住民を縄に掛けて連れて帰って来た。水のありかを知っているかもしれないからだ。そこから原住民を加えた旅が始まる…。
Gucchis free schoolより引用

移動があれば映画になる

ケリー・ライヒャルトが『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を撮ったら、時速5km程の超絶スローモーションな作品となった。

川の畔で身支度を整える女性を遠くからカメラは静かに捉えていく。鳥籠を頭に抱え、ゆっくりゆっくりと川を横断する女性、西部開拓時代の虚無な日常にあるサスペンスを静かに切り出すケリー・ライヒャルトに興奮を覚える。

そして、だだっ広い荒野を映すだけではなく、フレームの外側で何気ない会話を漂わせることで、如何に世界が広いかを観客に提示している。

しかし、本作はただ西部開拓時代をドキュメンタリー映画的に捉えた作品ではない。荒野にポツンと女性たちを遠近感持たせて立たせる。男の代わりにと、単発でしか発射できない火薬銃を不器用に支度し鳥らしきものを撃つ、馬車の中から家具を投げ出し少しでも重量を軽くしようとする様などといった日常に微かにある非日常、つまり絵画的、写真的瞬間だけをつなぎ合わせているのです。

本作で提示される、映えるショットの手数は多い。荒野の上空に馬が見えると思いきや、1分近くかけてショットが薄ら切り替わり、丘を歩む馬々の場面に移ろいゆく様、暗闇にポツンと灯る明かり、『シェーン』さながら現地人が荒野に消えていくショットなど、ひたすら映像由来の快感を魅せてくれるケリー・ライヒャルトの技巧に舌鼓を打ちました。

これはいつか映画館で観たい作品である。また、ケリー・ライヒャルトの新作『FIRST COW』が割と『ミークス・カットオフ』寄りな作品らしいので楽しみである。
created by Rinker
Oscilloscope Laboratories
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