2019映画
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ブンブンが選ぶ2019年ベスト本 1位は『マーティン・イーデン』!
ブンブンが選ぶ2019年ベスト本
おはようございます、チェ・ブンブンです。
今年ももう師走ですね。そしてつい最近まで、2010年代だと思っていたのに、あと20日と少しで終わってしまいます。さて、ブンブンは大学時代、毎日1冊本を読破する読書の虫だったのですが、社会人になり徒歩通勤となった今、めっきり本を読まなくなってしまいました。社会人1年目で読んだ本は0冊。ダメダメサラリーマンになってしまいました。しかし、社会人になってからハードコアな映画仲間と遊ぶようになってから、彼らの引き出しの多さ、そして超絶技巧な話術で引き出しを開いていく姿に脱帽し、ブンブンもインプット/アウトプット頑張らねばと思うようになりました。なので、今年は月に数冊読むようにしました。そして沢山の素晴らしい本に出会えたので、今回は本の年間ベストを出してみようと思います。どれもメチャクチャ面白いので、冬のボーナス、あるいはクリスマスプレゼントにでもお手にとって読んでみてください。
1.マーティン・イーデン(ジャック・ロンドン)
今年のヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞した作品の原作。日本配給もつき、来年公開されそうなので読んでみたのですが、映画ブロガーのブンブンに刺さりに刺さった小説であった。労働者階級の男マーティン・イーデンが、ブルジョワジーの令嬢に魅せられ、必死に図書館で勉強し小説家を目指す。最初は、文字すらロクに読めず、話し方も野暮だった男が、自分だけにしか語れない特性に気づき、必死に文章と向かい合う。しかし、なかなか、ライターとしても小説家としても成功しない彼は、分析的に物書きを見るようになる。それを編集部に見透かされ、キツい言葉を投げつけられる。映画ブロガー、ライターは、自分の好きな事の為に全力になる。しかしながら、時にスランプに陥り、隣の芝生を覗き込んでしまう。ブロガー、ライターのサガを突きつける本作はブンブンの趣味にどストライクでした。
2.謎の独立国家ソマリランド(高野秀行)
あなたはソマリランドをご存知でしょうか?一般的にはソマリア連邦共和国の一部として組み込まれてしまっている共和国である。映画ファンにとっては『ブラックホーク・ダウン』の地獄絵図を思い浮かべるであろう。また、海賊のイメージが強いものの《すしざんまい》の社長が単身で海賊を消滅させたという伝説も記憶に新しい。しかし、日本に住んでいるとあまりに漠然としていて、よくわからない国である。そこにジャーナリストの高野秀行が潜入調査した。本作は、その長い長いレポートである。現地の嗜好品であるカートの嗜み方、カートを使った交渉に始まり、海賊を購入するといったハードすぎるリポートがビッチリと事細く記されており、全く飽きる事なく興奮しながら読破しました。貴方のソマリア、ないしソマリランドのイメージは覆ることでしょう。
3.絵を見る技術 名画の構造を読み解く(秋田麻早子)
絵の上手い、下手とは何だろうか?映画における絵画的とは何なのだろうか?それを入門的かつ専門的に紐解いていった美術書に脱帽した。絵画における、壁やさりげない木々を使った視線の誘導、画面の分割、陰影を用いた奥行き、空間の作り出しかた、色彩から読み解くテーマといったことを例題付きで教えてくれるので、読みながら批評の技術が身につきます。そしてそれは絵画だけにとどまらず、写真や映画、演劇の考察に転用することができ、今年下半期の映画評に活かすことができました。これは素晴らしい美術書だ。
4.ブラジル映画史講義(今福龍太)
大学時代、小説家のリービ英雄から「今福龍太は素晴らしい学者だ」と聞かされていたのだが、思わぬところで出くわすとは正直驚きだ。今年、友人からシネマ・ノーヴォの映画を借りて観てさっぱり面白さが分からなかったブンブンの目に留まり思わず即買いした本ですが、魔界のような本であった。今まで表面的なタイトルのレベルでしか分からなかったシネマ・ノーヴォをマリアナ海溝レベルまで掘り下げていたのです。文化人類学者の目線で、邦題と原題比較はもちろん、原題の意味や当時の文化を紐解いていく。そこに今福龍太流超絶技巧の論が展開され、突然ブラジル映画を食人文化の観点から何十ページにも渡って解説し始めたりするのです。そして最後の10ページでは申し訳なさそうに今の映画を紹介し、年表までつけているのだが、しっかりとクレベール・メンドンサ・フィリオを押さえている抜かりのなさ。こんな映画史本、後にも先にも誰にも書けない代物だ。
5.惡の華(押見修造)
玉城ティナ主演で映画化されたことでも話題となった押見修造の漫画『惡の華』は、押見修造だからこそ描ける視点というものを紙に焼き付け、全ページ修羅場の地獄を読む者に味わせる。押見修造の吃音から来る、対人恐怖症は、極端な人のアップ。そして、過ちを犯す罪悪感とそこから来る許しのカタルシスによって本能的に危ない方向へ舵をきってしまう様は、幼少期吃音気味でイジメを受けていたブンブンからみても本物の視点であった。ひたすらに、最悪な方向へ転がっていき、そういった胸糞悪い作品が好きな人を裏切るような、寸止め急ブレーキで押見修造のリズムに抗うことのできない世界観は圧巻であった。
6.善悪の彼岸(ニーチェ)
ギャスパー・ノエが『CLIMAX クライマックス』で劇中に登場させた本。ニーチェは今でいうと、炎上屋だ。Twitter等で過激な発言をし、煽る。一見すると不道徳で、酷いことなのだが、実はそこには善人であろうとする人の中にある欺瞞が潜んでおり、彼はチクリとさしてみせる。ギャスパー・ノエやラース・フォン・トリアーなどといった胸糞映画監督を語る上でニーチェの存在は大事だと思って読んだのだが、そこに漂う猛毒に背筋が凍りました。
ここで一つ刺さった文章を記しておく。
「抗議・本筋から逸脱・たのしげに猜疑・また嘲笑の興味は、健康の徴候である。すべてを無条件にうけいれることは病的である。」
7.キネマ旬報ベスト・テン90回全史(キネマ旬報社)
映画検定2級受験のために購入しました。キネマ旬報ベスト・テンは映画検定本で一通り目を通しているのですが、時代背景が分からないとなんでそんな作品がランクインしたのかが分からなかったりする。そういった時代背景をかなり細かく解説しているので、いい勉強になりました。初めて知ることも多く、例えばゴールデンウィークの由来は1951年に松竹、大映が『自由学校』という作品をそれぞれ作り、5月に公開したところ、どちらも興行成績がよかったことから名付けられたといった面白い話なんかも知れて大満足でした。また、各年の11位以降の結果もデータベース的にまとめられているので読むたびに驚きがあります。
8.百年の孤独(ガブリエル ガルシア=マルケス)
Googleで検索すると、今やお酒がトップに出てきてしまうこのご時世に幻滅するものの、小説は面白いです。ブエンディアという名前がやたらと出てくる為、難解な小説だと思われるし確かにそうなのだが、物語の整合性とか家族構成は、文学評論家にお任せして点で読んでみることをオススメしたい。巨漢の女性との情事、チョコレートを飲むと宙を浮くどうかした描写、厨二病的古代兵器、そういったコミカルな残像が物語を盛り上げに盛り上げ、いつの間にか朽ち果てて廃墟になっていく村の形にどこか切なさを感じた。
9.ブラックムービー ガイド(杏レラト)
守備範囲の広い広いブラックムービーの歴史本。ブラックムービーというとどうしてもブラックスプロイテーションを掘り下げがちだが、意外と忘れられがちなエディ・マーフィー、ウィル・スミス時代、刑事映画における黒人といった側面までじっくりと丸裸にしていくところに感銘を受けました。惜しいところは、本作の出版をあと半年、1年遅らせた方が良かったというところ。実は2018年は黒人映画の傑作が次々と現れた年で、『ブラック・クランズマン』、『SORRY TO BOTHER YOU』、『ブラインドスポッティング』、『Hale County This Morning, This Evening』、『Support the Girls』といった作品がアメリカを賑わせました。とはいってもそれ抜きに本作は濃密でした。
10.ブラック・アフリカの映画(シネマクシオン)
神保町の古本屋で見つけたアフリカ映画の専門書。面白いことに、イドリッサ・ウエドラオゴが『ヤーバ』や『掟』を製作する前に、ブルキナファソ映画に注目し長文で解説している。ブルキナファソといえば、隔年で開催されるアフリカ最大の祭り、ワガドゥグ全アフリカ映画祭の開催地であるが、如何にブルキナファソがアフリカ映画を語る上で重要拠点になっているのかがよく分かります。フランスから入ってきた映画という第七芸術を如何にしてものにしていったかの経緯が分かる貴重な文書といえよう。
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