【Netflix】『愛なき森で叫べ』園子温の自己セラピーに哀しくなる

愛なき森で叫べ(2019)

監督:園子温
出演:椎名桔平、満島真之介、日南響子、鎌滝えり、YOUNG DAIS、でんでんetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Netflixで配信されていた園子温最新作『愛なき森で叫べ』をようやく観ることができました。園子温集大成であると共に哀しくなる作品でありました。

『愛なき森で叫べ』あらすじ


自主映画を制作する若者や悲しみを抱える女性たちだけでなく、その家族の人生にまで入り込み、思いのままに彼らを操る詐欺師。そのゆがんだ欲望は尽きることがない。
Netflixより引用

園子温の自己セラピーに哀しくなる

『地獄でなぜ悪い』以降、迷走を続け半ば鬱状態だった園子温監督。そんな彼にNetflixが手を差し伸べ作られた本作は、言うならば彼の自己セラピーである。『自殺サークル』、『愛のむきだし』、『冷たい熱帯魚』など、彼のマスターピースの残像を重ね合わせて北九州監禁殺人事件をベースに映画化した。それは面白くもあり、所詮過去の栄光の切り崩しになっている哀しさを覚えた。

映画自体はここ最近の園子温映画と比べると抜群に面白い。自主映画製作をしたい男たちと、闇を抱えた少女、そして謎の胡散臭い男が一つに収斂し、ぴあフィルムフェスティバルに出品するため、あるいは大ヒットへ導く映画を作ろうとする中で血みどろ、罪悪感が透明になっていくプロセスを描いていく。そのどこに着地するかわからない物語構成、何よりも椎名桔平の気持ち悪く、でも魅力的なペテン師の造形の凄まじさに前のめりになりながら映画を観てしまうものがある。また、侵略される家庭の大黒柱に『冷たい熱帯魚』で心に取り入る悪魔を演じたでんでんを配置するユーモアもあり楽しく鑑賞した。

しかし、ここで描かれているものの全ては彼が築き上げた山の切り崩しに過ぎない。所詮は過去が素晴らしかったという領域から抜け出ていないのだ。血みどろぐちゃぐちゃな描写も、全部見せてしまうからちゃっちく見える。『冷たい熱帯魚』のように見せない凄惨さがないので、恐怖が演出できていないように見える。また、映画製作グループや女子軍団の役割も上手く割り当てられているように見えない人が存在したりしている。

結局のところ、園子温が巨大な予算と豊穣な時間をかけて、過去の栄光と向き合い、自分の本来持っていた技術力を整理したに過ぎない作品に留まってしまった。園子温は『愛のむきだし』から応援しており、いつか鬱状態を脱出し傑作を放てると信じているのだが、なかなかできない。次はニコラス・ケイジ映画を作るそうだが、果たして傑作に化けるのか?好奇心と不安が渦巻くブンブンでした。

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