【カンヌ国際映画祭特集】『誰もがそれを知っている』ファルハディ、キアロスタミに憧れ…

誰もがそれを知っている(2018)
原題:Todos lo saben
英題:Everybody Knows

監督:アスガー・ファルハディ
出演:ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、リカルド・ダリン、バルバラ・レニー、エドゥアルド・フェルナンデスetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日本公開6/1のイランの巨匠アスガー・ファルハディ最新作『誰もがそれを知っている』を一足早く鑑賞しました。本作はイランから離れ、ファルハディがスペインでロケを敢行した作品。昨年のカンヌ国際映画祭現地の星評が芳しくなかった気がするのだが果たして…

『誰もがそれを知っている』あらすじ


「別離」「セールスマン」でアカデミー外国語映画賞を2度受賞しているほか、カンヌやベルリンといった国際映画祭でも高い評価を受けているイランの名匠アスガー・ファルハディが、スペインの田舎町を舞台に全編スペイン語で撮り上げたミステリードラマ。主演をペネロペ・クルスとハビエル・バルデムが務め、実生活で夫婦の2人が共演した。アルゼンチンで夫と2人の子どもと暮らすラウラが、妹アナの結婚式に出席するため、故郷スペインの小さな村に子どもたちを連れて帰ってくる。地元でワイン農園を営む幼なじみのパコや家族と再会し、ともに喜ばしい日を迎えるラウラたちだったが、結婚式のアフターパーティのさなか、ラウラの娘イレーネが姿を消してしまう。やがて何者かから巨額の身代金を要求するメールが届き、イレーネが誘拐されたことが判明。それぞれが事件解決のために奔走するなかで、家族の間にも疑心暗鬼が広がり、長年に隠されていた秘密があらわになっていく。2018年・第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
映画.comより引用

ファルハディはキアロスタミになれなかった

この世にはワールドシネマというジャンルがある。欧米から見てアジアや中東、アフリカなどといった国の特徴を活かした作品だ。アフリカであれば、部族問題、中東であれば男尊女卑と宗教対立、日本であればサムライだ。こういった作品は、映画祭で物珍しさと多様性補正で評価されがちだが、その枠に捉われ、欧米の作品のような普遍的現代映画が出にくい問題があると最近感じるようになった。そう考えると、是枝裕和は日本らしさから逃れようとした『万引き家族』でパルムドールを獲ったのは快挙と言えよう。

閑話休題、イランのアスガー・ファルハディは巨匠アッバス・キアロスタミに憧れてか、スペインを舞台にした観光映画を撮った。海外ボランティアなんかだとYOUは何しにそこへといった理由が必要となるのだが、映画の面白いところは面白さでもって帳消しにすることが可能だということ。キアロスタミの場合、『トスカーナの贋作』で偽りの夫婦の会話の妙とトスカーナの美しい風景が、極上のワインと生ハムのアンサンブルのような味わい深さを魅せてくれました。

監督が他国で好き勝手撮ろうが理由なんていらないのです。それは、面白ければの話だが。

ファルハディ監督はスペインでいつものドロドロな会話心理劇を展開しようとした。『ある過去の行方』以上にイラン的要素を排除しようとした。しかしながら、そこにあったのは『彼女が消えた浜辺』の劣化したものがチラつく世界であった。
スペインで一家アッセンブルの筈が、誘拐事件が発生する。家族の小さな嘘と冷たい態度が軋轢を呼び崩壊するのだが、ひたすらに金が要る/要らない、嘘ついた/ついていないを室内で繰り返すばかり。『彼女の消えた浜辺』の象徴的な海のシーンや『セールスマン』の崩壊する建物などといった映画的見せ場がないので、段々と「イランで撮ってもよかったのでは?」と疑問に思います。ファルハディ監督は、観光を楽しんでもなければ、スペインという土地も活かそうとしていないのではと思ってしまいます。また、本作はタイトル通りある種の謎々になっているのですが、割とベタな展開なので驚きに欠けます。『幸福なラザロ』とまでは求めないが、もう一捻りほしいなと思いました。

残念ながら、日本やイタリアを股にかけたキアロスタミにはまだまだ及ばないなと感じます。

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