漫画誕生(2018)
THE MANGA MASTER
監督:大木萠
出演:イッセー尾形、橋爪遼、篠原ともえetc
評価:70点
今、文系の大学に行くと、絵画論、映画論、音楽論の授業が所狭しと並んでいる。大学はレジャーランドなので、そういった授業は推しポイントとなっている。
しかし、そんな時代でも《漫画》はやや軽視されているような気がする。しかし、漫画にだって理論はあるし、歴史はある。そんな陰にスポットライトを当てた作品『漫画誕生』が東京国際映画祭から1年以上の時を経て公開された。ブンブンの映画祭ボランティア時代の仲間が製作に携わっているというこてなので観てきました。
『漫画誕生』あらすじ
漫画を初めて職業とし、「近代漫画の父」とうたわれた北沢楽天の半生を描いた伝記ドラマ。西洋漫画の手法を学んで風刺画を近代漫画として確立し、明治から昭和にわたって活躍した楽天を、イッセー尾形が演じた。風刺画家として福沢諭吉にその才能を見いだされた若かりし楽天は、「日本初の職業漫画家」となり、一気に売れっ子の道を駆け上っていく。時代の寵児となり、政界からも一目置かれる存在となった楽天は、多くの弟子を養成して新しい表現方法にも次々に挑戦。「ポンチ絵」と呼ばれて蔑まれていた風刺画を、「漫画」というひとつのジャンルとして広く世に浸透させていった。しかし、時代が下るにつれて世の中には次第に暗雲が立ち込め、楽天や漫画はもちろん、日本全体が黒い渦の中へと巻き込まれていく。共演に、楽天を支え続けた妻いの役の篠原ともえ、福沢諭吉役のモロ師岡ら。監督はこれが長編2作目の大木萠。
※映画.comより引用
貴方の知らない手塚治虫以前の漫画史の世界
手塚治虫以前の巨匠・北沢樂天をイッセー尾形が演じている。若かれし頃から、ヨーロッパの風刺画の凄さに惹きこまれ、それを日本に持ち込み、出版界に影響を与えていった彼が、国から漫画検閲者として召喚される。役人との対話を通じて、風刺漫画とは何か?漫画とは何か?を観客に教えてくれる。1枚の絵に、模倣、技巧を凝らすことでメッセージを染み込ませていく。これはただの通俗なポンチ絵ではなく、理論の芸術なんだと語っていくのだ。誰しもが社会科の教科書でチラッと見たことがあるであろう、そして忘却の彼方に追いやられているであろう漫画のある視点に色がついていく。その独特な変遷にグイグイと引き込まれます。
映画演出自体は、割ともたついていたり、人物描写の過不足、粗が目立っているような気がしたが、映画が描いてこなかった歴史のすみっコの面白さを伝えようとする熱気に溢れていて、なかなか面白いものがありました。
余談だが、劇中に登場する手塚治虫のデビュー作『新宝島』の原本はGinza Sixの蔦屋書店で販売されています。尚、150万円と高いので要注意。
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