『Super Size Me 2: Holy Chicken!』1カ月ファストフードを食い続けた男がチキンサンド屋をオープンした件

スーパー・サイズ・ミー2:ホーリー・チキン!(2019)
Super Size Me 2: Holy Chicken!

監督:モーガン・スパーロック

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日米国iTunesで『スーパー・サイズ・ミー』15年ぶりの続編が配信されました。『スーパー・サイズ・ミー』とは、2004年に製作された1カ月間ファストフードを食べ続けたらどうなるのかをモーガン・スパーロック監督が身体をはって検証したドキュメンタリー。本作のグロテスクなまでの監督の変貌っぷりが話題となりアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネート。この影響でマクドナルドはスーパーサイズをやめ、各ファストフード店は健康志向にシフトする結果となった。ブンブンは小学生ぐらいの時に、このドキュメンタリーの広告が学校に張り出されていて、その内容のおぞましさに吐き気を催しました。中学時代に意を決して観たのですが、あまりの惨さに精神的ダメージを食ったトラウマ映画。そんな作品の当事者はあれからどうしているのだろう…?と思っていたら、彼は生きていました。そして、彼はあのドキュメンタリーの影響とその影響に対する批判を込めてファストフード店をオープンしようと踏み切ったのです。『スーパー・サイズ・ミー2:ホーリー・チキン!』は彼が店をオープンするまでの軌跡を描いています。本作は、2017年にトロント国際映画祭でプレミア上映され、後にYouTube配信される予定だったのですが、#MeToo運動により彼が過去のセクハラを懺悔したことにより公開が宙ぶらりんとなっていました。ようやく公開されたので、早速観てみました。

『Super Size Me 2: Holy Chicken!』あらすじ


Morgan Spurlock reignites his battle with the food industry – this time from behind the register – as he opens his own fast food restaurant.
訳:モーガン・スパーロックは、食品業界との戦いを再燃させます-今度はレジスターの後ろから-彼が彼自身のファーストフード・レストランを開くとき。
映画.comより引用

見せかけだけの健康志向

『スーパー・サイズ・ミー』の影響により、各ファストフード屋は健康志向にビジネスの面舵を切った。いかにして、『スーパー・サイズ・ミー』以前のメニューが酷かったのかを謝罪し、健康的なメニューを強調するのかが鍵を握りしのぎを削っていた。そして、各社が思いついたのはチキンの存在だった。日本でもコンビニでサラダチキンが販売され、チキン=健康的という印象が根付いている。そしてアメリカでは、チキンサンドが人気で概算年間10億食提供されている。しかし、モーガン・スパーロック
はおかしい!と釘をさします。

というのも、各ファストフード店が提供するチキンサンドはどれも《フライドチキン》がサンドされているのです。油ギトギトで分厚い油の衣、明らかに不健康だ。そしてグリルした方が健康的なのに、それには目を瞑る業界の欺瞞に彼は批判的眼差しを投げかけるのだ。彼は該当インタビューする。

「グリルチキンのサンドを食べたことありますか?」

皆は口を揃えて

「ない!」

と答える。そして何故、フライドチキンより健康的なのにグリルチキンサンドにしないのかという問いに関しては考えもしなかったという返答が相次ぐ。

ファストフード界にセンセーショナルを巻き起こしたモーガン・スパーロックはそこで、グリルチキン専門店を立ち上げることにするのです。実際に、チキン工場で働き、雛から食肉に変わる工程を体験することで、まだまだ残る業界と社会の問題を暴き出す。工場のように感情を無にして、雛に注射をし箱詰めしていく様、箱に入った雛を農場に投げ入れる無慈悲、飯をたらふく食べさせ、その結果自重に耐えきれず骨折、朽ち果てていく鶏のグロテスクさを厭というほど魅せてくる。我々が食べているものはこれなんだと。

このドキュメンタリーは正直、前作以上のキレはない。『いのちの食べかた』系の食の裏側ドキュメンタリーで散々描かれてきた視点を、『スーパー・サイズ・ミー』の成功という地位に胡坐をかいて描いているに過ぎない。だから新鮮さはない。寧ろ、ファストフード店をオープンするまでの苦悩や、オープンしてからの経営戦略をじっくり描いた方が鋭い社会批評になっていたのに、完成を急いでいたのかオープン直後に映画を終わらせてしまう。そもそも、調子良くなんも大きなトラブルなく店をオープンさせてしまったという点で、ドキュメンタリーとしての面白さがなく、そこをカバーするためにチキン工場描写を水増ししたのではと思ってしまうのだ。

しかし、それでも『Super Size Me 2: Holy Chicken!』は面白かった。我々が意識しない、見せかけの健康というものを魅せてくれたし、ビジネスを立ち上げる際に必要な差別化や調査のプロセスをしっかり魅せてくれる。だからこの作品はアップリンク等でしっかり日本公開されてほしいなと感じました。

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