ある女優の不在(2018)
3 FACES
監督:ジャファール・パナヒ
出演:Behnaz Jafari,ジャファール・パナヒ,Marziyeh Rezaei etc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
反骨精神に満ち溢れたイランのジャファール・パナヒ新作。『3 FACES』を観ました。本作は、第71回カンヌ国際映画祭で『幸福なラザロ』と共に脚本賞を受賞した作品です。全編タクシーの中で描いた『人生タクシー』の姉妹編である本作ですが果たして…
『3 FACES』あらすじ
Three actresses at different stages of their career. One from before the 1979 Islamic Revolution, one popular star of today known throughout the country and a young girl longing to attend a drama conservatory.
訳:さまざまなキャリア背景を持つ3人の女優。 1979年のイスラム革命以前からの1つ、全国で知られている今日の1つの人気のあるスターとドラマ音楽院に出席することを切望している若い女の子の物語。
※IMDbより引用
ジャファール・パナヒ式オリーブの林をぬけて
ジャファール・パナヒは『チャドルと生きる』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、『人生タクシー』で金熊賞を受賞し、映画を作るたびに何らかの大きな賞を掻っ攫う巨匠でありながらも、イラン政府に目をつけられて自宅軟禁状態にあります。それでも飄々と映画を作り続け、USBにデータを詰め込み、映画祭に送り続ける反骨精神に満ち溢れている。しかしながら、彼の作風はいつもユーモラスに満ち溢れている。師匠であるアッバス・キアロスタミの技術をもろパクリつつ、自分の色をしっかりとつけていきます。『人生タクシー』では、キアロスタミが『10話』で演出した車中だけでイラン社会を凝縮する技法を踏襲し、虚実入り乱れた凄まじい物語を生み出した。今回の『3 FACES』は『オリーブの林をぬけて』を意識して映画が作られている。女優志望のMarziyeh Rezaeiが家族によって、その夢が打ち砕かれて自殺するというショッキングなスマホ映像を女優であるBehnaz Jafariはパナヒと一緒に彼女の残像を追って村を目指す。行く道中、パナヒは住民に、道を尋ねるが、おっさんは何故か徐に車のクラクションを触り始めたりする。村社会の得体のしれない感じをユーモラスに表現する。そしてMarziyeh Rezaeiの生存が確認されてから浮かび上がるイラン社会というのを、車の中という壁からパナヒは批判的な眼差しを送ります。
イランに根強く残る男尊女卑や、宗教伝統によるしがらみの不自由さ。彼自身が軟禁状態であることから、彼の目線の再現という意味で車は非常に奥深いメタファーとなっていることが分かる。
『人生タクシー』と比べると、割とパナヒが車から出てしまったり、カメラが車外を捉えすぎているので、彼のメッセージの力強さが緩和されてしまった感じ否めないのですが、相変わらず飄々と凄い作品を作ってしまうんだなと感心しました。
邦題『ある女優の不在』として2019年12月日本公開決定しました。
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