【考察】『ANIMA』ポール・トーマス・アンダーソン×トム・ヨーク×Netflix 三銃士が刀を交わした時、魂が踊りだす

ANIMA(2019)

監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:トム・ヨーク

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

本日、ポール・トーマス・アンダーソンの最新作がNetflixにて配信されました。レディオヘッドのトム・ヨークのソロアルバム『ANIMA』配信を記念してNetflixと手を組み製作された短編映画とのこと。ポール・トーマス・アンダーソンは度々レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドと手を組んでいる。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『ザ・マスター』、『インヒアレント・ヴァイス』、『ファントム・スレッド』と最近のPTA映画には欠かせない作曲担当としてジョニー・グリーンウッドが君臨しているのです。今回は、レディオヘッド繋がりで実質トム・ヨークの為のMVを作ったのだが、これが凄まじい作品でありました。

『ANIMA』あらすじ


レディオヘッドのトム・ヨークと天才監督ポール・トーマス・アンダーソンが実現した、音楽と映像の見事な融合。大音量で視聴すれば、その魅力を存分に楽しめる。
※Netflixより引用

ANIMA(=魂)が吹き込まれるその瞬間

《ANIMA》とはラテン語で「魂」を意味する。魂に息が吹き込まれると、それが《ANIMAL(=動物)》になったり《ANIMATION(=アニメーション)》になったりする訳だが、本作は、魂の抜け殻になった人々に息を吹き込み、「動なる物」が生まれるその瞬間を創生することに情熱を注いだ作品である。地下鉄から物語は始まる。

乗客はまるで生きる希望を失ったかのように俯きながら踊る。社会というパペットマスターの手によって傀儡揺さぶり動かされているかのように。そこに、トム・ヨーク演じるホームレスのような男が映る。彼もまた映画という神の所作によって動かされるのだが、どこか他とは違う動きをしたそうに抵抗している。そこに一つの鞄が現れる。これが本作におけるマクガフィンだ。彼は地下鉄に置かれたその鞄を盗む。そして、逮捕されないように周りに同化しようとするのだが、周囲の予想外の動きに不協和音を生じさせる。そして、改札を出ようとすると、ポールに阻まれてしまい、鞄は別の何者かに奪われてしまうのだ。前に行こうとすると後ろに吹き飛ばされる、いうことの効かない身体に悩まされながら彼は放浪する。

そして、フレッド・アステアやバズビー・バークレーが活躍したミュージカル映画黄金時代を彷彿とさせる、ステージ的空間の中、彼は見えない重力にさらなる抵抗をしていく。大勢の人が追ってくるもんなら、彼は強烈に引っ張られる引力から逃れようともがき、彼らから逃げる。例え、そこに鞄があっても。

さらに、強風チリが舞い散るその空間を抜け出し、トラムが走る街並みを《歩き》抜ける。駆け抜けるのではなく、歩くのだ。徹底的にアベコベに動くことで、トム・ヨークが演じるキャラクターはどんどん「動なる物」になっていくのだ。現代は、膨大な情報に溢れ、人々はその中で答えを探す。しかし、それは自分が安心していられる隠れ蓑を探すものに等しく、本作におけるガヤ同様無機質なものとなっていってしまう。だからこそ、もがけ!考えろ!とポール・トーマス・アンダーソンは怒号を響かせて、観客の魂の髄まで吸い尽くした。

ポール・トーマス・アンダーソンは15分という短い時間であっても、企画ものであっても超絶技巧な物量で観客を殴りつける、安定の鬼才でありました。お見事。

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