『アダムズ・アップル』マッツ・ミケルセン主演!デンマークから貴方の《先入観》を刺激する

アダムズ・アップル(2005)
Adam’s Apples

監督:アナス・トーマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン、ウルリッヒ・トムセン、パプリカ・スティーン、ニコライ・リー・カース、ニコラス・ブロetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今年はやけにマッツ・ミケルセン映画の公開が多いことにお気づきだろうか?Netflixでは眼帯マッツ・アクション映画『ポーラー 狙われた暗殺者』が配信されました。また、11月8日にはウィレム・デフォー演じるフィンセント・ファン・ゴッホをなだめる牧師にマッツがなりきる『永遠の門 ゴッホの見た未来』がお披露目となります。年末にはマッツが北極でサバイバルする『Arctic』が公開される予定だ。そんな中、マッツ・ミケルセン2005年の日本未公開作『Adam’s Apples』が『アダムズ・アップル』という邦題で、10月公開されることが決まりました。

本作は、『しあわせな孤独』、『アフター・ウェディング』等スサンネ・ビアの右腕脚本家として有名なアナス・トーマス・イェンセンが監督しています。彼は、デンマーク発のウエスタン(スモーブロー・ウエスタンとでも呼んでおこうか)『悪党に粛清を』やスティーブン・キング小説の映画化『ダークタワー』の脚本まで手がけている異色のキャリアを積んでおり、さらにはマッツ・ミケルセンが自慰に取り憑かれた男を演じる作品『メン&チキン』を製作していたりする。

そんな、ユニークなデンマーク監督が2005年に放ったこの謎の映画はとてつもなく面白く、尚且つ2010年代にも十分刺さるメッセージを兼ね揃えた傑作でありました。

『アダムズ・アップル』あらすじ


「しあわせな孤独」「真夜中のゆりかご」の脚本家アナス・トーマス・イェンセンが監督・脚本を手がけ、「偽りなき者」のマッツ・ミケルセンが出演したヒューマンドラマ。旧約聖書の「ヨブ記」とアダムのリンゴの寓話をモチーフに、草原の教会で繰り広げられる奇妙な人間模様をブラックユーモアたっぷりに描く。仮釈放されたスキンヘッドの男アダムが、更生施設を兼ねた田舎の教会へ送り込まれる。ネオナチ思想に染まっている彼は、指導役の聖職者イバンから目標を問われ「庭のリンゴを収穫してアップルケーキを作る」と適当な返事をする。この教会に集まる人々はどこか変で、聖職者のイバンでさえ過酷な現実から逃避し、神を妄信することで自分を守ろうとしていた。イバンの自己欺瞞を執拗に暴こうとするアダムだったが、そんな彼に奇怪な災いが次々と降りかかる。「未来を生きる君たちへ」のウルリッヒ・トムセンがアダム、ミケルセンがイバンを演じる。
映画.comより引用

デンマークから貴方の《先入観》を刺激する

皆さんは「ネオナチ」と聞くとどう思うだろうか?恐らく、スキンヘッドの危険な人というイメージが浮かぶことでしょう。『帰ってきたヒトラー』や『グリーンルーム』などといった作品で散々、スキンヘッドと危険は結び付けられクリシェとなってしまったからです。しかし、この短絡的なイメージの連結が如何にさらなる危険に対して盲目になってしまうのかを『アダムズ・アップル』は風刺しています。

主人公のアダムは、刑務所から出所し更生施設として教会に送られる。無口だが、腕に刺青、部屋にはヒトラーの肖像を飾っている様子から明らかに危険な香りがします。観るものは、アダムは何かやらかすと冒頭でついつい決めつけてしまいそうになります。しかし、次第に様子がおかしいことに気づいていきます。マッツ・ミケルセン演じるイヴァンは、週末の説教の最中にトイレへ出ようとするおじいさんに対して罵声を浴びせる。「俺の話はつまらないのか」と。同居人のグンナールは夜な夜な、アダムから財布を盗もうとするし、カリドは庭に生えているリンゴの木に群がるカラスをやっつけようと銃をぶっ放す。アダムなんかよりずっと危険な人物だらけなのだ。前半、不吉な象徴としてカラスが沢山飛び交い、「危険な香りがするでしょ?」と観客を煽りに煽るのだが、その危険の正体は教会の人々だったのです。

そして、アダムは面従腹背の心でアップルケーキを作ることを目標としてしまったばかりに、教会の人々の狂乱に巻き込まれ、次第にネオナチ仲間にまで被害が波及する。この滑稽で、あまりに可哀想なアダムを通じて、ハッと見た目で判断してしまう危うさに気づかされる。よく《人は見た目が9割》と言われるが、残りの1割を軽視していいわけではない。残りの1割を軽視してこの映画を観ると、驚くほどに足元をすくわれるのだ。

日本公開まで10年以上かかってしまいましたが、人々は時間に追われ、一瞬の第一印象に囚われてしまう、SNSのアイコンやある特定の投稿だけでその人を判断してしまいそうになる今だからこそ刺さる作品と言えよう。個人的に、『ポーラー 狙われた暗殺者』前日譚としてもオススメです(これは観てのお楽しみ)。

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