【カンヌ国際映画祭特集】『Keep the Lights On』アイラ・サックスが依存から解放されるまで

Keep the Lights On(2012)

監督:アイラ・サックス
出演:トゥーレ・リントハート、ザカリー・ブース、ジュリアンヌ・ニコルソンetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。ついに令和ですね。ブンブンも、「平成の人だ」と古い人のように煽られる時代が幕を明けました。さて、皆さんは平成最後に何をご覧になりましたか?やはり『アベンジャーズ/エンドゲーム』でしょうか?ブンブンは、カンヌ国際映画祭も近いので予習で、コンペ出品監督の過去作を米国iTunesでレンタルして観ていました。その中の1本『Keep the Lights On』について紹介していきます。

『Keep the Lights On』あらすじ


In Manhattan, film-maker Erik bonds with closeted lawyer Paul after a fling. As their relationship becomes one fueled by highs, lows, and dysfunctional patterns, Erik struggles to negotiate his own boundaries while being true to himself.
訳:マンハッタンで、映画監督のエリックは親しい法律家のポールと激しく惹かれ合う。関係性が高まったり、下がったり、機能不全になっていくにつれ、エリックは誠実である自分の内面と折り合いをつけるのに苦労していく…

アイラ・サックスの苦悩を解放する

日本では『人生は小説よりも奇なり』ぐらいしか知られていない監督アイラ・サックスは、密かに映画批評家の間で注目されている作家です。カイエ・デュ・シネマも『人生は小説よりも奇なり』そして『Keep the Lights On』を年間ベストに選出しています。『Keep the Lights On』は、そんな彼を一躍有名にさせた作品。というのも、アイラ・サックスがゲイである自身の葛藤を描いている。自身の想いを全力で吐露している作品なのだ。

何と言っても、本作は90年代、00年代初頭のノスタルジックな質感の中、見る/見られるの関係性から自身の内面を引き出す感傷的なタッチが刺激的なのです。エリックがポールの部屋に近く。カメラも合わせて近くと、カットはポール目線に切り替わり、ポールがエリックと対面する瞬間を捉える。そして、甘美な愛撫に始まり、暗がりが外に拡散していくようなベッド空間で男と男が肉体的交わりを果たす。また、ある場面では美術館で元カノを見つけたエリックが1歩、1歩、暗闇のインスタレーションへと後ずさりして、こっそりと元カノを眺める。こういった魅力的なカメラワークの中で、ゲイの吐露が描かれていく。

ポールは段々とエリックから気持ちが離れていく。そこで、エリックが中毒であることが分かる。まるでドラッグ中毒と同じように、ポールを求め、愛を得られない場合は周りの男から愛を注入してもらおうとするのだ。そう、これは愛の依存からの脱却の映画なのだ実際にエリックは、ケネス・アンガーのような映画を作り上げることで自分の性の苦悩から解き放たれようとした。アイラ・サックスは、同性愛者の長年の苦悩からの解放である本作を作ることで、自分の中にあるモヤモヤを解き放った。『人生は小説よりも奇なり』同様、他のゲイ映画よりも抑えたタッチで、会話の中から感情を引き出そうとする。アイラ・サックスの繊細さに惹き込まれました。今回の『Frankie』はポルトガルを舞台にした3つの観光物語を手がけたようです。イザベル・ユペールも出演するとのことなので楽しみです。

ブロトピ:映画ブログ更新
ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です