『宇宙へのフロンティア』クリストファー・ノーラン激推しの月面着陸ドキュメンタリー

宇宙へのフロンティア(1988)
FOR ALL MANKIND

監督:アル・ライナート

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、 ブラックホールの撮影に成功したことが話題になりましたね。と同時にクリストファー・ノーランが『インターステラー』で描いたブラックホールがかなり近いものであるとTwitterで話題になってましたね。そんなクリストファー・ノーランがオールタイムベストに挙げている宇宙映画をご存知でしょうか?『アポロ13』?『ライトスタッフ』?いえいえ、彼がクライテリオンにて発表したオールタイムベストで「An incredible document of man’s greatest endeavor.(人類の偉大なる尽力を収めたドキュメント)」として入れたのは『宇宙へのフロンティア』でした。

本作は、アポロ11号が月面着陸した際に撮られた映像が大量にNASAにアーカイブされていた事実を知ったアル・ライナート監督が「勿体無い」と感じ、膨大な映像資料をドラマティックに繋げ合わせて作ったドキュメンタリーです。本作の功績により、彼は『アポロ13』の脚本家も務めています。(完全に余談なのですが、何故かこのドキュメンタリー作家は世界初のフル3DCGによるSF映画『ファイナルファンタジー』の脚本も手がけています。)

本作はフランスの映画メディアPremiereの「First Man : Ryan Gosling décroche la Lune [Critique]」でも『宇宙へのフロンティア』の美しさと冷たいタッチが役人の視線まで表現しようとしていると分析されているのですが、日本ではほとんど言及されていない(ひょっとしたら、町山智浩が有料配信映画ムダ話『ファースト・マン』回で語っているのかもしれませんが)作品です。

今日はそんな『宇宙へのフロンティア』について紹介していきます。

クリストファー・ノーランのオールタイムベスト

1.殺し屋たちの挽歌(1984,スティーヴン・フリアーズ)
2.十二人の怒れる男(1957,シドニー・ルメット)
3.シン・レッド・ライン(1998,テレンス・マリック)
4.怪人マブゼ博士(1933,フリッツ・ラング)
5.ジェラシー(1980,ニコラス・ローグ)
6.戦場のメリークリスマス(1983,大島渚)
7.宇宙へのフロンティア(1988,アル・ライナート)
8.コヤニスカッツィ(1982,ゴッドフリー・レッジョ)
9.アーカディン/秘密調査報告書(1955,オーソン・ウェルズ)
10.グリード(1924,エリッヒ・フォン・シュトロハイム)

『宇宙へのフロンティア』概要

An in-depth look at various NASA moon landing missions, starting with Apollo 8.
訳:アポロ8号から始まる、NASAのさまざまな月面着陸ミッションの詳細な調査。
IMDbより引用

That’s one small step for a man, one giant leap for mankind.

アポロ11号が月に行ったあの瞬間のアーカイブ映像と言ってしまえばそれまでなのだが、SF映画や『アポロ13』、『ファースト・マン』が描けない感動がそこにはありました。この作品が偉大なのは、「感動の瞬間の空気」をしっかりアーカイブしたことにある。

まず、『ファースト・マン』でも全く同じショットで描かれたニール・アームストロングたちが、記者に囲まれるところを抜け、エレベーターで搭乗口に向かう様子をじっくりと、時にスローモーションで描く。我々が飛行機に乗り込む時に感じるあの高揚感を追体験させてくれるのだ。そして小さな小さなのぞき穴から見える小さな月に希望を抱き男たちは、時が来るのを待つ。そして、時は来た!!

ロケットは、感動的なまでの業火に包まれながら遥か彼方を目指し飛び立つのです。

緊張に包まれる管制センター。激しいフライトの末に訪れる静けさに、未来を知っている我々もついつい心揺さぶられます。

そんな安堵も束の間、アポロ11号は謎の回転を始める、月面着陸寸前になり警報がなりまくる。未知なるトラブルにヒヤヒヤさせられます。しかし、男たちは、焦燥をグッと堪えて粛々とトラブルシューティングに励む。その姿に、熱いものを感じます。

そして、月に彼らがたどり着いた時、スクリーンの向こうにいる我々も管制センターの人と同じく歓声をあげたくなるのです。

デイミアン・チャゼルの『ファースト・マン』は本作のドキュメンタリー的側面と、ニール・アームストロングの冷静すぎる性格に固執し過ぎた為、退屈なイメージが強かった。しかし、本作の良さは決してドキュメンタリーの側面にある訳ではない。非常にドラマを意識した映像構成と選曲があったからこそ、「感動の瞬間の空気」を含めたアーカイブに成功し、それがドキュメンタリーとしての価値を生み出しているといえる。そう考えると、星条旗シーンカット云々を議論する前に『ファースト・マン』は失敗作だったのではと思わずにはいられません。

とはいえ、批評面では『ファースト・マン』はダメダメだが、サラリーマンを勇気づける映画としては面白いので、未見の方は是非両方観比べてみてください。

ボーナス入ったら、クライテリオンから発売されているブルーレイ版買いたい。真面目に大音量で何度も観たいし、何と言ってもパッケージがカッコ良すぎるのです!クライテリオンのパッケージはどれもカッコよくてついつい買いたくなってしまいますよね♪


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