【ネタバレ考察】『PRINCE OF LEGEND』から観るEXILE映画の行方

PRINCE OF LEGEND(2019)

監督:守屋健太郎
出演:片寄涼太、飯島寛騎、塩野瑛久、鈴木伸之etc

評価:98点

《王子が大渋滞》

このパワーワードを聞いたのは、昨年10月のことだった。セレブ王子、ヤンキー王子、メガネ王子、バンドマン王子etcが美女を巡ってバトルする作品とのこと。『HiGH&LOW』シリーズで、EXILE ファンだけでなく、映画ファンも虜にしたLDHはここ最近、映画製作に積極的となっている。そして、ブンブンはLDH こそが映画を一番分かっている組織だと注目するようになった。そして今回放たれたこの《王子が大渋滞》映画こと『PRINCE OF LEGEND』は、『アベンジャーズ』的ユニバース感を見事にグローカライズさせた作品なのではないかと感じた。ってことで観てきました。

※ネタバレ記事です

『PRINCE OF LEGEND』あらすじ


「EXILE TRIBE」のメンバーが総出演して話題を集めた「HiGH&LOW」プロジェクトの製作陣が、ドラマ、映画、ゲーム、ライブなどを連動して新たに展開する「プリンスバトルプロジェクト」の長編映画。さまざまなキャラクターの14人の王子たちがなぜ伝説の王子を目指すことになったのかを描いた、2018年10月放送のテレビドラマシリーズ「PRINCE OF LEGEND」のクライマックスが描かれる。本物のセレブたちが集う名門・聖ブリリアント学園。3年に1度開催となる「伝説の王子選手権」で優勝した者のみが「伝説の王子」として認められる。王子たちの憧れの存在である成瀬果音が「伝説の王子になった人とお付き合いしようかなあ」と言ったことをきっかけに、14人の王子たちによる「3代目伝説の王子」の座を賭けた激しいバトルが展開する。出演は片寄涼太、鈴木伸之、佐野玲於、清原翔、町田啓太、飯島寛騎ら。ヒロインの果音を演じるのは、CMやドラマで活躍する新進女優の白石聖。
映画.comより引用

極限まで、Not-Enjoyを排除した珍作

本作は、映画ファンにとっては不満が募る作品であろう。なんたって、冒頭30分近くかけて『バーフバリ 王の凱旋』で上映されたダイジェスト映像に近いキャラクター紹介映像が展開されるのだ。めまぐるしい勢いで、セレブ王子、ヤンキー王子、メガネ王子、下克上王子、生徒会王子、ダンス王子(ネクスト)、金髪SP王子(関口メンディー)などが次々と紹介されていく、延々と続く怒涛のキャラクター紹介に困惑することでしょう。
そしてキャラクター紹介が終わると、すぐさま試合が開始する。種目は到底90分で収まるはずのない数用意されているのだが、疾風怒濤の編集で壁ドン、お姫様抱っこレース、デート対決が繰り広げられる。『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』さながらの余計なシーンをバッサバッサ切っていき、早口で話すことで強引に90分に圧縮してくるので、下克上王子が全く下克上していなかったり、ダンス王子集団(Team ネクスト)がヤンキー王子とキャラ被りしているように見える。
だが、これが徹底的にEXILEファンや若い女性に向けた映画だと考えるとこれはこれである意味完璧な作品だと言える。LDHは『HiGH&LOW』の成功を受け、映画産業に本格的に足を踏み入れた。意外なことに、河瀨直美『Vision』や今泉力哉の『パンとバスと2度目のハツコイ』、北原白秋を描いた『この道』などといったEXILEのチャラチャラした雰囲気を消した作品を作り出す一方、本作のように全力でふざけてみた作品を製作している。つまり、LDHとして映画の方向性を映画ファン向け、EXILEファン向けに分けることで映画界を盛り上げようとしているのだ。

そしておふざけ路線の本作は、昨今、某福田雄一監督作のように「面白いことやっているだろ」と高慢になり、内輪の盛り上がりで作っているような作品ではない。『アベンジャーズ』等昨今ハリウッドで流行っているユニバース的面白さをどうグローカライズしていくのかに拘って、真摯に面白さと向き合っているのだ。その結果LDHが出したのは、日本のコレクター魂を刺激するキャラクター造形だった。日本はポケモンに始まり、スマホゲームのガチャシステムと、キャラクターを集めることに執着する文化がある。そして、モンストでは遊戯王のキャラクターがコラボしたり、テクテクテクテクでは小林幸子が参戦したりと意外性のあるキャラクターや著名人がゲームに参入することでユーザーに驚きと熱狂を与えています。それと同じことを『PRINCE OF LEGEND』はやっている。『アベンジャーズ』のように単にヒーローを出すのではない。セレブ王子やメガネ王子といった王道に混じって、金髪SP王子とか美容師王子、先生王子といった変り種を多数用意するのだ。そして、ヒロイン争奪戦の順位をリアルタイムで示すわけだが、意外にも明らかな出落ちに過ぎない関口メンディー演じる金髪SP王子が最大5位にまで登りつめるのだ。だから、観客は自分の好きな王子を応援する。どう考えても勝つのは2択に絞られるのだが、0.1%の勝率である別のキャラクターに感情移入し応援したくなるのです。このワクワク感は、部外者でもワクワクしてしまう感じは、正直仮面ライダーとかプリキュアにはないものがあります。

また、本作は意外にも『劇場版テレクラキャノンボール2013』と似ている。レースしながら、AV監督がナンパしまくる10時間近いアダルトビデオを劇場版に130分に圧縮した作品。この作品は、余計なレースシーンやダレる場面はバッサバッサ切り裂き、面白いところだけ抽出している。それによって、独特の面白さが生まれている。『PRINCE OF LEGEND』も同様に、本来存在するはずの仲間同士の喧嘩や、伝説の王子争奪戦における葛藤描写はできるだけカットしている。まるでミニ四駆を最高速度で走らせるために骨組みだけに改造しているようなものがあります。

最強のデートムービー

あなたは最良のデートムービーに何を選びますか?

ブンブンは『PRINCE OF LEGEND』を選びます。デートムービーに求められるのは、情報量の多さだとブンブンは考えている。映画鑑賞後の会話を盛り上げるアクセントが多ければ多いほど、充実したアフター・ムービーを遅れるからだ。実際にブンブンはデートで鑑賞したのだが、その後の会話は止まることがありませんでした。「どの王子が好きか?」から始まり、情報過多で追いきれなかったものを互いに埋め合うことができます。

意外とテーマはある

本作は残念ながらFilmarksを読む限り、映画ファンからもEXILEファンからも低評価がつけられている。露骨な中身のなさが叩かれている所以なのだが、実はよく見ると面白いテーマが浮き上がってきます。それは白石聖演じるヒロインが、騒動の渦中にいながら蚊帳の外にいる疎外感である。ヒロインは、借金返済のためのアルバイトとして、理事長から頼まれた王子選手権参加者募集のマスコットとして君臨する。そして様々な王子に唇を奪われまくる。そして王子は、彼女のために尽くすのだが、彼女は常に、騒動の蚊帳の外にいる疎外感を感じている。彼女は、真面目さ故に本当の愛の存在に気づかない。そんな彼女が激流のように過ぎ去るラブバトルを通じて、自分の心にある愛を認めていく物語となっています。彼女はセレブ王子・朱雀奏のことが好き。しかし、玉の輿に安易に乗りたくないと思っている。それ故に、心がすれ違っていく。例え、彼がPRINCE OF LEGENDになったとしても。そんなモテモテでも心には空虚が広がっている様子をしっかり描いているといえよう。

音楽はチートでしょう

それにしても、本作はブンブンの心を分析しているのであろうか?

ブンブンが高評価だしやくすなる要素「a-haの『Take On Me』を流す」、「パッハベルの『カノン』を流す」を重ねがけしているのだ。ただ、『Take On Me』の使い方が特殊で、ヤンキー王子のテーマ曲として使っているのです。80年代を象徴させるための演出としては、あまりに攻めた選曲になっていて衝撃的でした。ただ、ブンブンは、やっぱりこの楽曲が使われる映画に弱いのでした。

最後に

確かに本作は通俗だ。『ラ・ラ・ランド』を思わせるプールのシーンがあれど、『ラ・ラ・ランド』がプールシーンで参考にした『怒りのキューバ』のプールシーンまでは考えていないので、魅せ方に弱い部分を感じたり、そもそも人物紹介シーンにあれだけ時間を割くとは、相当な王子渋滞だろうとは思う。しかし、通俗な映画としては非常に観客と真摯に向き合った傑作だと感じました。


少なくても、『シャザム!』の日本語吹替版・演出を担当する福田雄一監督よりは、真剣にLDHの一味は映画と向き合っています。

「脚色と演出を引き受けてから本編を見たのですが、つまらなかったらどうしようと思ってました笑 本当に面白かったのでホッとしました笑 そこから吹き替えのキャストを考えました。」

なんて言ってしまうような、映画に失礼なことは一切しない集団であることは十分証明できたことでしょう。


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