ブラインドスポッティング(2018)
BLINDSPOTTING
監督:カルロス・ロペス・エストラーダ
出演:デイビード・ディグス、ラファエル・カザル、ジャニナ・ガヴァンカーetc
評価:85点
が完全シネフィルで、世界を驚かせている。そんなオバマ前米国大統領が『ブラックパンサー
』、『ブラック・クランズマン
』と並び今年のブラックムービーだと宣言した作品『BLINDSPOTTING』を観てみた。
『BLINDSPOTTING』あらすじ
1年の保護観察期間を言い渡されたコリンは、愉快な仲間たちとダラダラ毎日を送り、あと3日で保護観察期間が終わるところまできていた。しかしながら、白人警察官が黒人を射殺する事件を目撃してから悪夢に悩まされ始め…《トレインスポッティング2018》
一言でいうならば、『トレインスポッティング』をアメリカの黒人社会に置き換えたような作品だ。サイケデリックな世界が観る者に底知れぬ興奮を与えてくれる。
しかしながら、時は『ゲット・アウト
』から始まるブラックムービーニュージェネレーション。ダーティーなエンターテイメントに社会問題をぶつけてくるヒップホップ的アプローチが流行っている時代だ。『トレインスポッティング』にはない重すぎるアメリカ社会問題を痛烈に皮肉ったのが本作だ。
主人公の黒人男性は、1年の保護観察を裁判で決められる。だらだらと保護観察期間を過ごし、あと3日で自由の身になるところから物語は始まる。
ヤンキーのような愉快な仲間たちと和気藹々と駄話する。
「このバーガーマジィな」
「Umamiが足りねぇんだよ、Umami!」
「生意気だな、おっこれは何かな?(銃をチラつかせる)」
「あらっここにも銃が!」
「おいおい、あと3日で自由の身になれるんだぜ!勘弁してくれよな」
と楽しいコントが続く。しかし、いきなり事態は急変する。
主人公は夜な夜なトラックを運転していたら、黒人男性が飛び出し、危うく轢きそうになる。
「てめぇ危ねぇやろ!」
すると黒人男性は、
「助けてくれぇ〜」
と泣き叫び走り去る。すると、白人警官が現れ、彼を射殺してしまうのだ。パトカーが主人公のトラックを取り囲み、「おい、あっちに行きやがれ!」と警官に言われるのだ。通常この手の話は、すぐにサスペンスとなり、警官に追われたり、逆に主人公が自分の身を犠牲にしつつ正義の鉄槌を下す。しかし、本作は残り20分まで、だらだらとした日々が続くのだ。愉快な仲間たちとのコントが続くのだ!あれっさっきの惨劇はなんだったのと思う程陽気でサイケデリックなどうかした日常が繰り広げられるのだ。しかし、合間合間に強烈な悪夢が襲いかかる。
そう、本作は、アメリカの今を切り取っているのだ!2015年頃から黒人と白人の暴動がニュースとなり、日本からもその惨劇は確認することができるようになった。本作は、その渦中の外を描いている。惨劇を目撃するだけ、傍観者としての心理が克明に描かれているのだ。助けたいが、助けたら自分の身が危ない!何もできなかったもどかしさが、悪夢として浮き上がっていく。オーソドックスな「反復」、「銃表現」をしっかり演出した上で、サイケデリックな悪夢と抱腹絶倒などす黒い笑いを展開することで新鮮な傑作となった。
オバマさん、こいつを選ぶなんて凄い!凄すぎる!
日本公開8/30(金)
8/30(金)より新宿武蔵野館他にて公開が決まりました。
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