草の葉(2018)
GRASS
監督:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、チョン・ジニョン、キ・ジュボン、ソ・ヨンファetc
評価:70点
東京フィルメックス2本目は同じくホン・サンス監督作。たった66分で描くホン・サンスワールド。短距離走ながら、ホン・サンスにしか描けない未知なる世界がそこに存在した。
『草の葉』あらすじ
カフェの片隅で女は日記のようで日記ではないものを書いている。そんな彼女は、カフェに訪れる人の痴話話に聞き耳を立て、自分の物語に組み込んでいく…コーヒーが冷めないうちに feat. ホン・サンス
例えるならば、『コーヒーが冷めないうちに』の訳あり来店者と同じ<>バッド・トリップ、ゴー・トゥ・ヘヴンを堪能できます。コーヒーを淹れるのが、有村架純でも藤岡弘でもないので、言語化し難い異世界に転送されてしまうのだが。日記のようで日記でないものをカフェの片隅で書く女性は、カフェに現れる訳ありな人々を観察し、嘲笑しながらも自分の書き物の世界に取り込んでいく。そんな女性の日記のようで日記ではないものの世界と現実とが等価で描かれる。
ヒトとは、2つの世界を持っている。Aというベクトルと、その間反対を行く-Aというベクトル。矛盾していて、それを陰でこそこそ修正しているんだ。俺もキム・ミニを愛し、でも映画の中ではキム・ミニに誘いを断るようにとホン・サンス監督の詩的な哲学世界が観る者に疑問と笑い、そしてインスピレーションの坩堝へと沈める。
また、『川沿いのホテル』でさりげなく描いてきた、「こっそり飲む酒は美味い」という背徳感についても言及されている。『川沿いのホテル』と併せて観ると、今年のホン・サンスの気持ちが分かる仕組みとなっている。
映画として云々というよりか、この66分、我々が軽く友人と、家族とお茶する短い間、まさしくコーヒーが冷め切る前の時間で、ヒトの矛盾を論じ切ったホン・サンス監督にしかできない離れ業を観ました。
これを10月ぐらいに撮り終えて、2月のベルリン国際映画祭で発表したホン・サンス監督、まだまだ衰え知らずの鬼才である。
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