【ネタバレ酷評】『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』Mamma mia! 立ち直れない もう、どうしてくれるんだ

マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー(2018)
Mamma Mia! Here We Go Again(2018)

監督:オル・パーカー
出演:アマンダ・サイフリッド、ピアース・ブロスナン、
ドミニク・クーパー、コリン・ファース、
アンディ・ガルシア、リリー・ジェームズ、
ステラン・スカルスガルド、シェール、
メリル・ストリープetc

評価:15点

あれから10年…スウェーデンのポップ音楽グループABBAの楽曲で構成されたブロードウェイミュージカル『マンマ・ミーア!』。その映画版の続編が10年の時を超えて制作された。『マンマ・ミーア!』は、今観るとトンデモなく変な映画なのだが、ブンブンにとっては非常に大切な一本だ。映画にハマり始めた中学2年生の頃。一人で映画館にも通うようになった頃、本作が公開され観に行った。あまりにもABBAの曲の使い方が上手く、そして何よりもヒロインのアマンダ・セイフライドが可愛過ぎて惚れに惚れたのだ。そこからミュージカル映画に目覚め、『ロッキー・ホラー・ショー』や『Tommy』といったロックミュージカル、そして和製ミュージカルへと沼にズルズルと沈んでいった。大学時代には、ミュージカル映画の授業を受講し、『紳士は金髪がお好き』について長文のレポートを提出した

。ブンブンを映画沼に、ミュージカル映画沼に引きずりこんだ作品なのだ。それだけに、この続編は公開前から不安だった。なんたって、ABBAのキャッチーな曲は殆ど前作で使用されている。他のABBAの曲は、火力不足の気がしてならなかった。そんな不安を抱えながら、TOHOシネマズ上野で観てきたのですが…これが今年ワースト級に酷い代物だった。ってことで、これからブンブンネタバレありで2つのポイントから酷評していきます。ちょっと気分荒れ気味に書いているので、読む方は要注意です。

『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』あらすじ

豪華絢爛な結婚式から10年。ソフィはホテルのリニューアルオープンパーティに向けて準備をしていた。彼女は、妊娠しており、ナーバスな気持ちになっている。その為、スカイとはちょっと倦怠期のような関係となっている。彼をホテルの経営学の勉強に追い出し、仲間とパーティの準備を進める中、母親のドナの過去が明らかにされていく…

前作レビュー:『マンマ・ミーア!』一人の海賊、二人のスパイ、パパは誰だ?

ダメダメポイント1:火力不足過ぎたセットリスト

予想していた通り、セットリストに難がある映画であった。

前作は、ソフィがI have a dream~と歌い、夢のような世界をグーーーーット広げていく導入から、始まり、立て続けに”Honey, Honey”、”Money, Money, Money”とどんなに英語がわからない人でも口ずさんでしまうキャッチーなサビのある曲を展開してき、そのまま主題歌”Mamma Mia”とABBAといえばこの曲”Dancing Queen”を追い打ちで仕掛けていく常時必殺技全開、常時クライマックスなセットリストで、最後の最後まで物語なんかどうでもよくなるほど音楽と美しき舞が画面を爆走していた。

しかし、今回はその技が使えない。なんたって、音楽に合わせて物語を進行させていくのだから、一緒のセットリストで物語ることはできないのだ。だから本作は、ABBAの中ではちょっとマイナーな“When I Kissed the Teacher”から始まる。そして、”I Wonder (Departure)”、”One of Us”と展開されていくのだが、どれもライブにおいて中盤の息抜きで流すようなアンニュイとした曲だ。確かに、前作では舞台版で使用されていた”One of Us”が割愛されており、それを序盤に持ってくることで、「しっかりセットリスト考えてますよ」アピールはできるかもしれない。しかしこうも序盤で立て続けにアンニュイな曲(もちろん好きですが)を展開されると、早々に中だるみしてしまう。ちょっと退屈だなぁと思い苦痛を感じた頃にやっと、”Waterloo”が始まり、キレッキレのダンスにミュージックビデオ感を前面に押し出したヴィジュアルが映画に高揚感を与えていく。
本作は、「前作の盛り上げ曲に頼らないぞ!」という想いが強く、それ自体には志の高さを感じる。これで”Mamma Mia”や”Dancing Queen”だけでなく、”S.O.S.”,”Voulez-Vous”,”Does Your Mother Know”まで頼り始めたら、そりゃ二匹目のドジョウを狙ったゲスい二番煎じになってしまうわけで。新人監督オル・パーカーもいきなり大スター、ビッグバジェット、有名曲を使って名作ブロードウェイミュージカルの映画の続編を作るなんてことになったら本作のソフィのように重圧を感じるであろう。そして、前作に囚われない映画作りをしようとするものの、アップテンポの名曲をガンガン使えない制約はキツく、適度にバックメロディで流すことで映画としても盛り上がりを作ろうとしている。監督と製作陣のムリをしている感じは伝わってくる。しかし、だったら最初から映画化しない方がいいのではと思う。音楽と音楽の繋がりも含めて歯切れが悪く、結果として退屈してしまった。

ダメダメポイント2:とっ散らかった物語 MESSY!!

こうセットリストが悪いと、脚本の悪さも際立ってしまう。前作だって脚本は酷い。それもそのはず、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト

』方式で、音楽という名のアクションが先にあって、それに合わせて無理やり脚本を作っていくのだから。The Whoの『さらば青春の光』や『Tommy』のように、アルバムが物語を形成しているわけではないのだ。

前作は、じっくり観るとトンデモナイ復讐譚だ。娘の結婚式を楽しみにしていたオカンは、娘に「本当のパパは誰なの?」と3人の元彼を突きつけられ、おまけに3人が同時に魅惑していくという内容。オカン目線で観たらたまったもんじゃない。しかも、娘は「娘が生まれた時に、父親がいなかったら嫌でしょ?私は苦しんだの。だからハッキリさせましょう。」と言うのだが、そんだったら娘があのチャラ男と別れなきゃいい話で、ちょっと何言っているのか分からない理屈となっている。そして、結局誰が本当のパパなのか問題はなぁなぁになって、とりあえずピアース・ブロスナン扮する建築家兼MI6工作員が本物のパパっぽいという、曖昧模糊煙に巻いたエンディングになっている。

ただ、物語を追うのが困難な程ノリと勢いで観客の心を鷲掴みにしていくので、そんな酷い内容もどうでもよくなってくるのだ。

しかし、今回、セットリストが悪い分、物語に目がいくのだが、これも酷かった。

ズバリ一言で言うならば

“MESSY!”

とっ散らかっているのだ!

ソフィのホテル再オープン祭までのドタバタと若かれし頃の母の物語が展開される。前作で結局放置されてしまった、結局母はどのようにして3人のイケメンを股にかけたのか?と言うエピソードを語りつつ、ソフィのドタバタを描いているのだが、両パートの行き来が実にギコチナイ。若かれし頃の母を演じたリリー・ジェームズが、非常にアマンダ・サイフリッドに似せていることから、どの次元の話かが慣れるまで分かりにくいこともある。

ただ、

「サムとの馴れ初めを描いたから、一旦戻ろう」

「次は、ビルの話を書かないといけないから話は戻そう」

「とりあえず、ここで伏線を回収しておこう」

というように、エピソードを手探りでコラージュのように置いていき、肝心な接着作業をしていないのだ。だから、各エピソードがグラグラと揺れ動き、実に不安定。特に、勿体ぶって登場させたソフィのグランマというキャラクターが全く物語に絡まないという状態を引き起こしてしまった。グランマをそんなに入れる必要があるのならば、若かれし頃の母パートで、しっかり影を魅せる必要がある。マレフィセントのように悪女だが、影でオーロラ姫を実は見守っているような描写が必要なのではないだろうか。

結局セレブで高慢で厄介な毒親、姑というオーラを醸し出していたこのグランマは、ホテル再オープン祭に参加し、そこで愛する人と出会いなんか良かったね☆孫にも会えて、しかも無血開城、対立せず受け入れてもらえて良かったね☆と非常にどうでもいい存在でしかなかった。

最後に…

マドモアゼルからマダムになり、これまた美しくなったアマンダ・サイフリッドの容姿を拝めたのは嬉しかったが、とにかく観ている間中モヤモヤザワザワが心を包み込んで精神的に辛かった。こんな続編観たくなかった。『マンマ ミーア!』は一つで十分だ。

ブンブンの心は”Mamma Mia”のメロディに合わせ

Mamma mia! 立ち直れない もう、どうしてくれるんだ!

と慟哭、ナイアガラの滝のように涙が流れ心のそこのダムは見事に決壊してしまいました。

真面目に勘弁してください。

Director can’t you hear me S.O.S.

以上、ブンブンの心のS.O.S.でした。

おまけ:”Dancing Queen”と言えば…

ブンブン、家に帰ってお口直しにグッチ裕三(BABA)の『おはなしゆびさん:ダンシング・クイーン』を聴きました。これは、グッチ裕三が昔NHKの教育番組『ハッチポッチステーション』の音楽コーナーで披露した替え歌だ。この替え歌の精度が凄まじく高く、当時幼稚園児だった私はそこから洋楽にのめり込みました。

【原曲】
(中略)
With a bit of rock music
Everything is fine
You’re in the mood for a dance
And when you get the chance

You are the dancing queen
Young and sweet
Only seventeen
Dancing queen
Feel the beat from the tambourine, oh yeah
You can dance
You can jive
Having the time of your life
Ooh, see that girl
Watch that scene
Dig in the dancing queen

【替え歌】
(中略)
パパは仕事
いつもいない
一人で仕事
遠いところ

パパは単身赴任
掃除洗濯も自分で

単身赴任
ご飯も一人で寂しいのねyeah

優雅で愉快な独りは気楽
今日も頑張る
パパは単身赴任

まず“Dancing Queen”から《単身赴任》という似た響きの言葉を持ってくるセンスに痺れる。
そして、

With a bit of rock music
Everything is fine

と字面を見ると長いし、パッとフレーズが浮かばなそうなところに

パパは仕事
いつもいない

という父が単身赴任でいない家庭の寂しさを物語らせる。

そしてサビのところで、目線は急にパパ目線に変わる。《優雅》、《愉快》という単語で、

You can dance
You can jive

を表現し、家に残された家族は寂しそうにしているが、当のパパは気楽にサラリーマンを送っているというウィットに富んだ皮肉あるオチをつける。しかもこの替え歌、前半は、『おはなしゆびさん』を歌っており、途中から”Dancing Queen”になっていく高度な替え歌になっているのだ。

この『ハッチポッチステーション』は、他にも童謡と洋楽を化学反応させた傑作替え歌が多く、ビートルズの”I Want To Hold Your Hand”と『もりのくまさん』を合成させたり、Queenの”Bohemian Rhapsody”と『いぬのおまわりさん』を融合させた名曲を沢山作っている。

『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』に満足できなかった方は、是非グッチ裕三ないし、『ハッチポッチステーション』の狂気の替え歌の世界に身を沈めるか、前作を観て気分を落ち着かせてください。

前作レビュー:『マンマ・ミーア!』一人の海賊、二人のスパイ、パパは誰だ?

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