泳ぐひと(1968)
THE SWIMMER(1968)
監督:フランク・ペリー
出演:バート・ランカスター、ジャニス・ルールetc
評価:95点
町山さんが洋画専門チャンネル ザ・シネマの特番VIDEO SHOP UFO前説で、興味を抱きTSUTAYA渋谷店で借りてきた。全編バート・ランカスターが素っ裸で、走って泳ぐ映画なのだが、難解らしい。なかなかTSUTAYAで見つからなかったのだが、流石は渋谷店。渋谷コレクションコーナーに置いてありました。果たしてどんな作品なんだろうか…ネタバレありで解説していく。
『泳ぐひと』あらすじ
ある男が海パン一丁で森から現れる。そして富豪のプールを泳ぐ。そして彼は、そこで休憩しているブルジョワに対しこう決意する。「家まで走って帰る。途中に8つのプールがある。必ずそこで泳いで行く。」。かくして男の挑戦は始まった。しかし家に近くに従い…総天然色裸映画が意識高い系揶揄映画だったとは⁉︎
確かに、観て30分わけがわからなかった。バート・ランカスター扮する「泳ぐひと」は、ブルジョワな友だちに「泳ごうぜ!」というが、乗ってくれない。勢いあまって、「家までプールをハシゴして帰る!」といい、ミッションをスタートさせる。最初は快く、プールを使わせてもらっていた「泳ぐひと」が段々と塩対応されていく。そして、どうやら裏に何かあるらしいことが分かる。サイケデリックな映像、泳ぐひとがナンパした女と3分近くスローモーションで遊ぶシーンが入ったりとどうかしているのだが、真理が見えた時、鳥肌が立った。
これは「意識高い系」を揶揄した作品だったのだ!意識高い「泳ぐひと」が挑戦しない人を嘲笑う。そして前のめりになって挑戦するのだが、周りを巻き込みすぎて、鬱陶しがられる。「泳ぐひと」は自分というブランドに対するプライドが高く、ブルジョワであろうとするが立ち行かなくなる。自分にも甘くなる。
アメリカは、移民でできた国だ。他所から土地に浸入し、その土地を荒らし去って行く。夢追いが破壊を生む。恐らく当時は、そんなアメリカ史を皮肉ったのだろう。
しかし、今観ると、まるでイケダハヤトやキングコング西野亮廣、ココマルシアターの支配人
のような意識高い系、あるいはサークルクラッシャーを皮肉った作品に見える。
志高く、意気揚々と活動しているように見えるが、それは虚栄心に過ぎない。彼らは、主人公同様裸だ。ハリボテの夢やヴィジュアルで人々の興味を集めている。一度、人気を失うと、裸ゆえに金も何もない。50セントですら物乞いするようになってしまう。そして、物語のクライマックス。市営プールで虫けら同然にあしらわれ、朽ちた高級住宅を前に泣き崩れる姿で持って見事なまでに意識高い系の破滅を象徴させた。
『エルマー・ガントリー/魅せられた男』に引き続き、バート・ランカスターの魅力的なサークルクラッシャーっぷりから闇のアメリカ史が見え、且つ現代にも通じる普遍的な問題が見えてくる傑作でした。
町山さんの鑑賞後解説を聴かなくては!
昔、淀川長春解説のTVロードショーで観たが、奇妙で薄気味悪い映画だなあとしか思わなかった。
続くエルマーガントリーは、当時日本でも跋扈し始めた催眠商法や新興カルト勧誘やらとイメージがダブり、やはり不快な映画という印象しか残って無い。
最近では、ザ・マスターが似た物語なのか、キャストは豪華なのにやはり奇妙な世界観に思えて映画の中に入って行けない。日本では余り見掛けない分野の映画に思える。
ムネオ ヨシダさん、コメントありがとうございます。 日本ではまず見かけない作品ですよね。