【ネタバレ】『ストリート・オブ・ファイヤー』の凄さについて10の観点から語る

6.無駄のない脚本

決して、本作は音楽ヴィジュアルゴリ押し映画ではない。エレン・エイムの救出を通じて明かされる、トムと彼女のもう後戻りできない失われた時間。そして、それに嫉妬するビリー・フィッシュとの確執。その三角関係を岡目八目で見つめるマッコイ。騒動には巻き込まれたが、夢を掴むチャンスだと希望を抱き生き延びようとする黒人バンドThe Sorels。しっかりキャラクターを深く描きこんでいる。それを無駄なく描く。

冒頭の誘拐シーンから、敵陣突撃まで、余計な仲間同士の喧嘩シーンもなければ、説明描写もない。某漫画原作映画のように、自己紹介で長々と御託を並べることはない。ただ、「俺は、トム・コーディ」「俺はマッコイ、ソルジャーさ」と一言いうだけだ。ただ、「いいから俺についてこい!」と言わんばかりの疾走する脚本。観客はまるでトムと一緒に戦争に突撃するかのような興奮がある。

また時にユーモアも織り交ぜることで緩急をつけている。

例えば、トム一行が黒人バスを乗っ取る際のやり取り。

黒人バス運転手:はっきりいうぜ 俺のバスだぜ 誰の指図も受けない

トムはスッと銃をチラつかせる。

黒人バス運転手:でも 時には指図を受けることもある

ユーモアシーンはユーモアシーンでも、徹底的に最小手数で笑いを演出している。

どのショットを切り取っても、ミュージックビデオとして機能するように極限までそぎ落とされた脚本。このすっきりとした脚本は『マッド・マックス/怒りのデス・ロード

』へと継承されていると言っても過言ではない。

7.列車が西部劇のイメージを表す

本作は、たかだか、隣町との戦争を描いたスケールの小さな話、たった数日の物語ではあるのだが、一度映画を観終わると、壮大な冒険を体験したかのような気持ちになる。この叙事詩的な感動はどこから来るのか?それは乗り物にあると思う。まず、列車。エレンが捕まり、電報が打たれると、トムが列車に乗ってやって来る。このシークエンスから、遠方はるばるならず者がやって来た風格を醸し出している。そして、車のちょこまか画面前方で動き回るのに対し、列車は奥行き、長さを強調したショットが多い。この対比により、このスケールの小さな話が途端に広がりを見せて来る。

西部劇が小さな町の話が多いのに、壮大なロマンを感じるのに近い。西部劇の場合も、馬や列車といった乗り物を巧みに使っているからだ。『ロング・ライダーズ』で本格西部劇を既に撮っていただけに、ウォルター・ヒルのナイスな西部劇アレンジと言えよう。

8.実験精神に飛んだ演出に注目せよ

御察しの通り本作は、王道アクションムービーというよりかは邪道の極みだ。人は死なない。音楽のベクトルも、当時としては中途半端に古臭い時代を切り取ったかのような作りをしている。そのトリッキーさ故に、公開当時は大コケしたのかもしれない。

ただ、今観ると真似したくなる程演出が新鮮だ。例えば、画面の切り返しをザラザラとした幕で行う演出。アングラ、掃き溜めの映画感を醸し出している。また、トム・コーディがエレンを回想するシーンはセピアで展開する。ネオンでギラギラした世界観にポツンと色を失ったセピアを挿入することで物語に強弱をつけることに成功している。

また、アクション面で言えば、バスをトムが片手で止めたり、ラストバトルは《バールのようなもの》からの《拳》だ!しかも、エンディングは、西部劇の定石を覆し、まさかのマッコイと結ばれるエンドだったりする。

どれも観るものの心に残る演出である。

9.悪役レイヴェンのショットに痺れる


この手のアクション映画の面白さは、悪役で決まる。『ストリート・オブ・ファイヤー』の敵役レイヴェンがイカします。冒頭のライブシーン”Nowhere Fast”の終盤、暗がりから段々とレイヴェンの顔が明らかになる。決して瞬きをしない。異様な眼差し。狡猾な蛇のような表情。このカットを観ただけで、圧倒的強さ、ヤバさが伺えます。また、業火に燃えるアジトから現れ、トムに復讐を誓うシーン、ラストバトルでのゴムのようにぐにゃぐにゃに歪む顔。非常に魅力的である。

10.マッコイというキャラクターの凄さ

実は10年前、観た時は全く気にしていなかったのだが、、、マッコイというキャラクターが非常に素晴らしい。女戦士という役柄なのだが、今のハリウッド映画にない無骨さがある。今のハリウッド映画はLGBTQやポリティカル・コレクトネスを意識すぎて、どうしても説教くさい「清き正しいキャラクターですよ」アピールが強すぎる、マッチョ的女性キャラクターが多くなりすぎている。しかし、本作にはその臭みがない。単純に、一人の男として、エレン救助作戦を淡々とこなす。そして、時にトムに色気を出す。またエレンには女として説教する。『ハン・ソロ

』のL3-37が無理して演出しているあの男勝りで乙女な女というのを自然体でやってのけているのだ。

ブンブン、すっかり惚れてしまった。リーヴァ・コーディは可愛い。エレン・エイムはエロい。でも私はマッコイ派だ!

最後に…幻の続編『ROAD TO HELL』が観たい

いかがでしたでしょうか?10年前何故、ブンブンがこの映画を嫌ったのか今となっては分からないほどに熱狂しました。こうして、今ブログを書いている時も目の前ではAmazon Primeビデオ配信中の『ストリート・オブ・ファイヤー』が爆音上映されている。今夜も青春なのだ。

そんなブンブンは今、猛烈に『ROAD TO HELL』が観たい。何を急にって?実は本作には続編があったのだ!丁度、本作鑑賞前、映画ライターの滝口アキラさんと遭遇し、「ブンブン、『ストリート・オブ・ファイヤー』には続編があるのを知っているかい?」と『ROAD TO HELL』をオススメされた。2008年に製作されたものの、日本では未公開の作品。マイケル・パレとデボラ・ヴァルケンバーグが25年の歳月をかけて再共演を果たしているのだ。

確かに予告編を観ると、B級C級映画にみえるが、とっても観たくなりました!ただ…AmazonにもDVDFantasiumにも売っていない

・滝口アキラさんの記事:傑作『ストリート・オブ・ファイヤー』が再上映!あの主題歌も登場する幻の続編とは?

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