ソビブル、1943年10月14日午後4時(2001)
Sobibor, 14 octobre 1943, 16 heures(2001)
監督:クロード・ランズマン
評価:95点
クロード・ランズマンの伝説的ドキュメンタリー『SHOAH-ショア-
』。9時間、過去資料を使わずホロコースト関係者のインタビューだけで構成されたドキュメンタリーは観る者を圧倒した。『SHOAH-ショア-』は、毎年何本も量産されるホロコーストものが未だに描けいていない衝撃エピソードが次々と明かされる仕組みとなっていて、その後半にユダヤ人400名による武装蜂起計画が計画されていたことが発覚した。
今回紹介する『ソビブル、1943年10月14日午後4時』は、『SHOAH-ショア-』に収めることができなかった唯一成功したソビブル、1943年10月14日午後4時の武力蜂起について第一人者であるイェフダ・レルネルにインタビューした作品だ。本作は『SHOAH-ショア-』の豪華版DVD-BOXにしか入っていない代物で、当然ながらTSUTAYAには置いてない。それ故、幻の傑作であるのだが、『早春
』、『暗殺のオペラ
』など激レア映画を配給するマーメイド・フィルム運営のVODサイトBeauties
で350円にて配信されていたので観た。これが大傑作だった。
『ソビブル、1943年10月14日午後4時』概要
クロード・ランズマン監督は、イェフダ・レルネルにインタビューをする。ソビブルに輸送された彼は20人近いメンバーを集め、ドイツ兵殺害を計画。1943年10月14日午後4時に武力蜂起を行った。その時の状況をフランス人通訳を介して明らかにしていく…ホロコーストの常識を疑え!
ホロコーストで収容所に輸送されたユダヤ人は抵抗することなく殺された…これは様々な本や映画でよく描かれる描写だ。しかし、クロード・ランズマンはイェフダ・レルネルのインタビューを通じて、それに反証する。唯一成功した武力蜂起があったのだ。彼は『SHOAH-ショア-』に引き続き、過去映像0。全てインタビューと監督がソビブルを訪れる際に撮った風景映像だけで構成した。
では、NHKのインタビュー番組と大差ないのか?これが違うのだ。きちんと劇映画のような物語の起伏があるのだ。クロード・ランズマンの超絶技巧の傾聴力に、痒いところに手が届く質問でもって細かいディティールが明らかにされる。レルネルが8度収容所を逃亡したエピソードは、まるで『大脱走』を彷彿とさせる手汗にぎるドキドキ感がある。また、ソビブル輸送時の列車。危険を察知した彼は、トイレの穴から脱出を乗客に促すが、誰も聞いてもらえず、外を覗こうとしたら、見張りに怒られたエピソードは事実は小説よりも奇なり。映画にありそうな場面だ。そう、ここまで読んだ貴方は察しただろう。自分の脳裏で映像が出来てくる作品なのだ。目の前には、ソビブルの風景かレルネルの度アップしかない。しかし、彼の熱い語りから、脳内に『サウルの息子』や『第十七捕虜収容所』のような一瞬たりとも油断できないドラマが生み出されていくのだ。
これ以上は語らないでおこう。ソビブルに着いてから20人近くで計画され密かに実行される武力蜂起。このドキドキ感と衝撃は、他のどんなホロコースト映画よりも面白いぞ!
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