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【演劇】『蛸入道 忘却ノ儀』庭劇団ペニノ謎の儀式に…出会った

【演劇】『蛸入道 忘却ノ儀』庭劇団ペニノ謎の儀式に…出会った

蛸入道 忘却ノ儀(2018)


作・演出:タニノクロウ
出演:飯田一期、木下出、
島田桃依、永濱佑子、
西田夏奈子、日高ボブ美(◽︎字ック)、
森準人、山田伊久磨etc

定期的に呑みに行っている映画仲間が、演劇に詳しく、先日「今度、庭劇団ペニノの新作が森下でやるんだけど来ない?」と誘われた。庭劇団ペニノとは、『地獄谷温泉 無明ノ宿』で第60回岸田國士戯曲賞を受賞した劇団だ。舞台装置の造り込みがユニークで面白いとのこと。今回の『蛸入道 忘却ノ儀』はクラウドファンディングで、美術制作費を集め、劇場内に寺を作り出し、観客参加型の演劇を提供しているのだとか。

ブンブン、大学時代、学生演劇を何度か観たぐらい。ミュージカルこそ、小中高の遠足で観ているが、この手の《演劇》は初めてだ。しかも『蛸入道 忘却ノ儀』の公式サイトを見ると、「蛸色の服をお持ちください!出演者が公演で着用させていただきます!」と富澤たけし並みに「ちょっと何言っているのかわからない」意味深な案内がされていた。

不安と期待を抱きつつ森下スタジオCへ向かうブンブン。果たしてブンブンは何を観たのだろうか?

※WARNING:今後、当公演を観る予定のある方は、読まないほうがいいかもしれません。驚きが減ってしまうので、なるべく事前情報をシャットアウトしてから観ることをおすすめします。(微ネタバレ注意報)

『蛸入道 忘却ノ儀』概要

観客は、寺のような空間で、蛸入道 忘却ノ儀に参加する。16の節に分かれており、観客は渡された教本と楽器を使って、儀式に参加していく…

驚きと困惑の連続

劇場に入った瞬間、カルチャーショックを受けた。入り口で、教本と鳴子を渡されたのだ。そして中に入ると、中央舞台に囲炉裏のようなものがあり、それを囲むようにして座る。舞台と客席の距離が非常に近い。


そして、舞台を見渡すと、和太鼓やジャンベ、ディジュリドゥ、モリンホールにベース。そして、今Twitterで話題の打楽器使いサカンさんが愛用しているハンドパンらしきものがある。国際色豊かな楽器たちに、どんな演目になるのかワクワクしてくる。

いよいよ、演目が始まる。前説で、手渡されたものについてアナウンスがある。どうやら教本は、舞台上のスクリーンの指示に従ってめくるらしい。手渡された鳴子(人によっては鈴が渡される)については、「鳴らしたければ、鳴らしてください」と随分とテキトーなアナウンスだ。しかし、この手のパフォーマンスに慣れている人がいるのだろうか、鈴の音色が劇場に響き渡る。その様子は、まるで夏の終わりの鈴虫の鳴き声を聞いているかのよう。

本公演は、観客参加型ということで、観客が劇に没入できるよう、様々なギミックが仕掛けられている。まず、公式サイトに書いてあった蛸色の服。これは、役者が着ます。結構集まり役者数以上に服が提供されているのだが、彼らは重ね着しまくることで、提供された服全てを着込むのだ。劇場、ちょっと暑いけれども大丈夫なのかと不安になる。前説の人が、「お手数ですが、窓を閉めてください」、「お経の書かれた板を壁に貼り付けてください」と観客に頼む。観客が役者、そして他の客と一体となり一つの空間を作り上げるアイスブレイクとなっている。なんともユニークな手法に、戸惑いとワクワクが脳内を駆け巡り、心臓がバクバクしてくる。

準備OK、蛸入道 忘却ノ儀の始まりだ!

なんと、役者たちはエセ般若心経を唱え始めるのだ。教本を開くと、漢文のようなものが書かれている。どうやら、今役者たちが唱えているエセ般若心経の歌詞とのこと。困惑し、第2節へ移る。すると、エセ般若心経の意味がつらつらと書かれている。節が進むごとに、この儀式の意味が解き明かされていく仕組みとなっている。また節が進めば進むほど、儀式がヒートアップしていく。囲炉裏に火をつけ、煙が立ち込める。そこに木ノ実を磨り潰したものをふりかけ、煙を吸う。そして呻く。その呻き声が和音となって、独特のリズムが生じていく。会場には、ガラムマサラのような匂いが漂う。

そして岡本喜八の『ジャズ大名』か!と突っ込みたくなるほど、周りに置いてある楽器を使ったスピリチュアルで混沌とした空間へと化けていく。ストーリーはないに等しい。エセ般若心経から真理を読み取ろうとするなんて愚策だ。Don’t think,feel!と言わんばかりの演出に、「こんな演劇初めてだ。面白い」と興奮しっぱなしでした。映画とは違う一回性。その場にいた観客と作り出す、一度きりの空間、臨場感に圧倒されました。

また、《蛸》が後半にいくに従って、意味をなさなくなっていくところに《忘却ノ儀》の正体が見出されており、このギミックにも唸らされました。ただ、演劇初心者ながら、2点もどかしいところもあった。

惜しいポイント1:中途半端な盛り上げ

本公演は、観客の好きなタイミングで手元の楽器を鳴らす仕組みとなっている。また、教本も基本的に好きなタイミングで読んで状況を確認したりする。しかし、役者の「ここ盛り上げどころですよー」という合図が、合図なのかただのポーズなのかがわかりにくく、慣れるまでは全然鳴子を奏でることができませんでした。また、教本は、2ページ分銀紙が貼られているだけの部分があったり、曲の歌詞が暗闇で読むには厳しいほど小文字だったりして、「演劇を観ながら教本を読み状況を確認する」という観客サイドの行動の難易度高すぎるものがあった。また、お経の板を壁に貼り付ける作業を観客に頼む場面や、水を配布する場面がかなりもたついており、そこで場の高揚感が冷めてしまう問題があった。恐らく、あまり観客参加型のパフォーマンスに慣れていないのだろう。ここは改善する必要があると思った。

致命的なのは、ラストに訪れるカタルシス。この最後のギミックを観客に託しているのだが、上手く観客に指示できていない為、弱いカタルシスになってしまっている。自分はあの着地点が好きなだけに、もうちょっと盛り上げて欲しかったなーと感じた。

惜しいポイント2:美術の予算不足(?)

舞台中央に、蛸の形をした鐘があり、役者がその鐘を叩く場面があるのだが、明らかに鐘の質が悪いため、「カン!」とショボい音が劇場に伝播してしまっている。良い鐘の音色は、「カーーーー〜〜〜ン」と余韻が残るもの。予算が足りなかったのかなと思ってしまう場面だ。また、トランスな音楽が会場を包み込む演出となっているのだが、天井が低く、音が反響する素材を使っていないためか、音の余韻、音の拡散が非常に弱いものとなっている。音楽性が非常に重要となってくる作品だと感じただけに、音の余韻は拘って欲しかった。

最後に…

演劇に関して偏見を持っていた為、今まであまり接してこなかったが、今回映画仲間の手ほどきにより『蛸入道 忘却ノ儀』と邂逅した。惜しい部分こそあったが、映画体験、オペラ体験とは全く違う高揚感を堪能することができました。個人的に大満足、有意義な休日でした。

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