【7/21公開記念】『暗殺のオペラ』ヴィットリオ・ストラーロの準備運動

暗殺のオペラ(1969)
Strategia del ragno(1969)

監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジュリオ・ブロージ、アリダ・ヴァリ、
ティノ・スコッティetc

評価:65点


先日、シネフィルWOWOWでベルナルド・ベルトルッチ監督幻の作品『暗殺のオペラ』が2Kレストア版になって放送された。残念ながら、ブンブンはシネフィルWOWOWと契約していないので、急遽TSUTAYA渋谷店にてVHSを取り寄せてきました。


しかし、借りた後に知ったのだが、マーメイド・フィルムさんがイエジー・スコリモフスキ監督の『早春』に引き続き、複雑な版権問題(元々の配給であったフランス映画社が倒産したため煩雑に…)をクリアし劇場再公開にこぎつけたのだ!7月21日より3週間限定、東京・恵比寿の東京都写真美術館にて上映されます。

そこで、本作について語って行くことにしよう。

『暗殺のオペラ』あらすじ

ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『裏切り者と英雄のテーマ』の映画化。青年アトスは北イタリアの田舎町にやってくる。ファシストによって暗殺された父の真相を調べにきたのだ。現地の人々と軋轢を生みながらも真実を手繰り寄せて行くアトス。そして遂にオペラ座にて真実が明かされる…

ヴィットリオ・ストラーロの準備運動

本作は、ヴィットリオ・ストラーロが撮影を手がけた作品だ。ヴィットリオ・ストラーロとは、映画史に置いて最高の撮影監督の一人。ベルトルッチ監督の右腕としても有名で、『ラストタンゴ・イン・パリ』、『1900年』、『ラスト・エンペラー』で耽美的な光を捉えた撮影を魅せている。そしてストラーロといえば、伝説の作品『暗殺の森』について語らないわけにはいかない。

夜霧の中の横移動、シンメトリー空間での素早い引き、臨場感あふれる雪山での移動撮影など、心に焼きつく撮影の連続に多くの映画ファンを虜にした。

そんなストラーロの前作がこの『暗殺のオペラ』だ。そして、本作を観ると、『暗殺の森』の原点がここにあることがよく分かる。物語前半、アトスが田舎町にやってくる場面。青年はホテルの場所を現地人に訊くが、現地人同士が口論を始め、痺れを切らして去る。そこから柱を巧みに使った横移動の撮影により、まるで紙芝居さながらの動きを見せるのだ。青年が町人に振り回せ、ようやくたどり着く先が、亡くなった父の彫刻。これから、彫刻としてガッチリ形となってしまった父の死を解体して行くぞというメッセージが読み取れる。

そして、閑散とし、活気がなくなったこの田舎町を陽光と奥行きを強調した絵画的撮影で包み込むのだ。この映像を観るだけでも価値がある。インスピレーションが掻き立てられる。

Strategia del ragno(蜘蛛の戦略)

本作の原題はStrategia del ragno(蜘蛛の戦略)だ。タイトル通り、蜘蛛の巣のように2つの物語が交差する。アトスが町を彷徨い真実を辿るパート、父親のパート。2つの物語が紡がれ、最後にオペラで一体となって行くのだ。最初は、「こんな町に答えはないだろう」と思うような閑散っぷりが映し出される。アトスは塩対応で暑苦しく、虚無な町に嫌気を差し、寂れたBarで「ここには若者はいないのか?」と叫ぶ。それを煽るかのようにジジイが交互にやってきて、「俺74歳だが、女とヤレルゼ!」と自分の若さを自慢しにくる。それで完全にアトスは発狂する。投げやりで、物語が進行しているのかどうかよくわからない。しかし、着実に真実に辿り着く。透明なピアノ線がゴールを示しているかのように。

正直、ミステリーとしては後出しじゃんけんだし、映像美ゴリ押し映画なのだ。しかし、ストラーロの耽美的な画を前に物語についてとやかく言う元気がなくなってしまった。

これは是非映画館で観て欲しい。ってことで来月は恵比寿の東京都写真美術館へGO!

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