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【大傑作】『犬猿』ニッチェ 江上敬子にアカデミー賞を!

【大傑作】『犬猿』ニッチェ 江上敬子にアカデミー賞を!

犬猿(2018)


監督:吉田恵輔
出演:窪田正孝、新井浩文、
江上敬子、筧美和子etc

評価:100点

巷では大評判の『犬猿』を観てきました。これは今年最強の日本映画なのではと思う程素晴らしかった!

『犬猿』あらすじ

印刷業者の営業マン金山和成の元に刑務所上がりの兄が帰ってくる。和成に恋心を抱く、幾野由利亜はスタイル抜群の妹に嫉妬を抱いていた。この兄弟姉妹の憎悪が複雑に絡み、血で血を洗う抗争へと発展していく…

ニッチェ 江上敬子にアカデミー賞を

この映画について語る前に口を大にして言いたいことがある。

それは、ニッチェ 江上敬子という大女優か爆誕する瞬間を私は観たということだ。私の今年の使命が出来た。それは江上敬子に私的アカデミー賞主演女優賞を与えねばならないということだ。

どれだけ凄まじいかというと、『スリー・ビルボード』のフランス・マクドーマンド以上に裏表の顔を演じきっている且つ『ドリーム』や『シェイプ・オブ・ウォーター』のオクタヴィア・スペンサー以上に複雑なコメディエンヌを演じきっているのだ。

さて、じっくり『犬猿』(《けんえん》と呼びます。《いぬざる》ではありません)を語るとしよう。

イジワールで最高にキュートな脚本

まず本作は、『ヒメアノ〜ル』で映画ファンを熱狂させた吉田恵輔の新作だ。しかもオリジナル脚本作品だ。『ヒメアノ〜ル』でイジワールな作りを魅せた彼だが、今回は拍車をかけて意地悪だ。なんたって冒頭3分からドキッとする技巧をかましてくるのだから。意地悪な映画というとミヒャエル・ハネケ映画みたいな陰鬱なものを想像する。確かに性的にも暴力的にめ陰鬱な映画なのだが何故か爽快だ!

話は、広告会社で働く冴えない弟と出所したばかりのヤクザな兄、弟の取引先の印刷屋の女(姉)とその妹の血で血を洗うような闘いを描いている。

吉田恵輔はトコトン、2組の兄弟姉妹のタイミングのズレによる不協和音をねじ込みにねじ込んでいる。

ただ、この作品が他の兄弟姉妹ものとはっきりと違うのは、兄弟ゲンカと姉妹ゲンカの性質を深い深い洞察力のもと描いている。

兄弟ゲンカは「力」のケンカだ。ヤクザで圧倒的に強い兄を前に、ヘッポコな弟はなす術ない。拳の闘いを仕掛けてもすぐカウンターに遭う。力による劣等感が弟の憎悪を膨らませる。

一方姉妹ゲンカは「心」のケンカだ。美女で男にモテる妹に対し、デブでモテない姉。姉は取引先の《弟》に恋しているが、鈍感な彼はその恋心に気づかない。それに付け込んで妹は姉から彼を奪おうとする。

このケンカの違いは兄弟姉妹いる者にとって、そういえはそうだ!という気づきを与えてくれる。

そして、その対比構造を『スリー・ビルボード』顔負けのどんでん返しの連続で深淵まで観客を引きずりこむので1秒たりとも飽きない。

例えば、印刷所にかかる電話を巡る挿話。今まで、観客は《姉》に対してネガティヴな印象を受けていたのが、覆させる。そして、《妹》に対し抱いていた「○○が話せる」というイメージが瓦解する。

そして、《姉》に対し抱くポジティブな印象も10分後には覆させる。

『スリー・ビルボード』評の際にも語ったが、この手のどんでん返しラーメン二郎映画は脚本をしっかり組まないと優柔不断な作品になる。だが、この作品は小道具を繰り返し違った角度から魅せ、キャラクターも嫌というほど裏表ガッツリ描くことで絶妙な面白さを提供することに成功している。

芸の細かさといえば、終盤の《弟》があるものを見てからの行動に注目してほしい。心の闇が光に照らされる瞬間を動きだけで魅せる窪田正孝にシビれました。

安心してください。この作品は今年ベスト級の大傑作だ。最後までイジワルでキュートで素晴らしい。ニッチェ 江上敬子には全身10万ボルトを喰らったかのようにシビれる傑作でした。

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