どん底(2008)
原題:Tirador
英題:Slingshot
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジロー・マニオ、ジャクリン・ホセetc
評価:85点
『キナタイ-マニラ・アンダーグラウンド』『ローサは密告された』のブリランテ・メンドーサがベルリン国際映画祭でカリガリ賞を受賞した作品。日本では全く紹介されていないのだが、『ローサは密告された』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞したジャクリン・ホセが出演している為、メンドーサ映画を語る上で非常に重要な作品とも言える。今回アテネフランセ特集《東南アジア、巨匠から新鋭まで》で上映されていたので観てみた。『どん底』あらすじ
国政選挙直前のマニラ・スラム街。警察による理不尽な暴行、チンピラによる恐喝。議員の賄賂が横行する選挙。地獄のような世界で生きる人々を描いた群像劇。強烈な地獄を観た!
実は『マニラ・光る爪』よりもこちらの方が好きだった。メンドーサ作品を観たことある人ならお察しの通り、映画的美しさは皆無です。もはや狂気の沙汰とも言えるほど汚い画作りだ。それを許せるか許せないかで評価が決まってくるが、私は許せました。
いきなりカメラがフィリピンアンダーグラウンドの路地を駆け回り、「警察が来たぞ!逃げろ!」とアチコチで叫びが聞こえるところから本作は始まる。
警察は、一般人だろうと麻薬取引野郎だろうとお構いなしに罵声と暴力で制圧する。本作にはストーリーは殆どなく、フィリピンスラム街の人の凄惨な生き様をモザイクのように敷き詰めている。大切な入れ歯を排水口に落とし、泥まみれになりながら探す者、金の為に万引きし店員に捕まり、泣いて許しを得たのにすぐさま万引きをする者。少年チンピラの恐喝。金とドラッグを物々交換する者etc…ゴーリキーの『どん底』を遥かに超える世界観だ。1970年代のフィリピンを描いた『マニラ・光る爪』から全く成長していない。いや寧ろ退化しているのではと思うほどに混沌を極めたマニラ像に背筋がゾワっとしました。
』であった。
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