キャッチボール屋(2006)
監督:大崎章
出演:大森南朋、
庵野秀明、内田春菊etc
評価:85点
NETFLIXは東京国際映画祭ものに力を入れたためか、この前「キャッチボール屋」と「マンガ肉と僕」が配信されていた。前者の「キャッチボール屋」は、2015年に本作の監督大崎章が撮った「お盆の弟
」を観てからずっと気になっていた作品。なんたって、本作は監督デビュー作にして日本映画批評家大賞新人監督賞を受賞するものの、以後10年間映画を撮ることがなかった曰く付きの作品でもあります。果たして…
「キャッチボール屋」あらすじ
ある日、男が目を覚ますとそこは公園だった。そこに怪しい男が一人ありけり。怪しい男は10分100円でキャッチボールの相手をする仕事をしているらしい。あれよあれよというままに、その怪しい男に引き寄せられ、何故か自分がキャッチボール屋として個性的な客を相手にする羽目になる…ユニークすぎるメンバー
本作は、非常に独特なスタッフで構成された映画です。脚本家には、「百円の恋
」や「14の夜
」の足立紳がいる。そして、脇役に何故か、庵野秀明や内田春菊が混じっていたりする。こりゃ面白くない訳がない。
本作は、本当にアイデアの勝利と言えよう。ただ全編に渡って、男とユニークな客がキャッチボールをするだけなのに、足立紳のゆる~くでもしっかりとした伏線回収が観客の心を鷲掴みにする。「なんなんだ、この映画は」と。
そして、あまりにも美しい公園描写がさらに観客の心を不思議な世界へと引きずり込む。桜と陽光が差し込む、あまりにも希望に満ちた晴天で男は突如託されたキャッチボール屋を営み、人生を顧みる。なんで、自分はここにいるのだと。美しくも、自分の道を見失いそうな景色に説得力があった。また、今観ることで、つい最近まで自分の時代だった2006年がとっくのとうに過去になっていた、ノスタルジーな映像になっていたことにショックを受けるであろう。
何故、大崎章は映画が撮れなくなったのか?
本作を観ると、大崎章監督が映画を撮れなくなった理由がなんとなく分かった気がした。本作であまりに美しく、完璧な映画が出来てしまったからといえる。笑いもあり、伏線もしっかり回収し、自分にしか描けない独自性もあった。ブンブンがもし、こんな作品を撮ったら、次は作れないだろう。だからこそ、大崎章は10年のブランクの後「お盆の弟」という「8 1/2」さながらのスランプものを撮ったと言える。
とにかくこの「キャッチボール屋」は素晴らしく面白い作品なので是非挑戦してみてください。
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