垂直のまま(2016)
原題:RESTER VERTICAL
英題:STAYING VERTICAL
監督:アラン・ギロディ
出演:クリスチャン・ブイエット、ロール・カラミーetc
評価:65点
『キング・オブ・エスケープ
』『湖の見知らぬ男
』と強烈なゲイゲイしい描写に局部クローズアップから愛の深淵を魅せつける作家性で、カイエ・ドゥ・シネマから贔屓されている鬼才アラン・ギロディ。
日本では映倫治外法権のアンスティチュ・フランセでしか観ることのできない作品。春に行われた特集上映に行けなかったのでDVDで観てみた。
『垂直のまま』あらすじ
脚本家の男は、脚本が書けず悩んでいた。ネタ探しに郊外へ車を走らせ、イケメンをナンパするものの断られてしまう。そんな中、草原で女と出会い、恋に落ちる。やがて赤ちゃんを授かるが、女は子供たちを置いて家を去る。男は、赤ちゃん片手に不条理な旅に吸い込まれていき…ギロディの国のアリス
カイエ・ドゥ・シネマベストテン2016に選ばれている(7位)
だけに奇天烈な作品だった。
『不思議の国のアリス』のアレンジに作家の苦悩ものと、単体ではありきたりなネタを、アラン・ギロディは抜群のカメラワークと混沌の融合で映画の新境地を開拓している。流石はタイトルからして『RESTER VERTICAL(垂直のまま)』。ナニが垂直なのかな〜?と煽っているだけある。
さて、この手のシュールな映画は闇雲に不条理を描いても観客の心は掴めない。カオスな中から、観客にヒントを与え、そして映画のカオスから現実社会のある側面にハッと気づかせる作品である必要がある。
本作は、まずクリエイティブとは何かを気づかせてくれる。脚本が書けない男は、彷徨いネタを探す。美青年に「オーディション出ない?」と誘うが、断られ、ホームレスに取材しようとするが特ダネには繋がらない。そして、草原の女と恋に落ち合体したことから地に堕ちていく。シュールで常軌を逸したネタにも関わらず脚本を書こうとしない男から、クリエイティブとは意識すること、メタ的に考えることが重要だと分かる。
男が、性と不条理の旅を通じて、男女、年齢の壁を越えていくのにそれに気づけない様子を観ると、物事を多角的に観るようにしなきゃと思わずにはいられない。
なんだか、ビジネス書のレビューみたいになってしまったが、実のところ強烈な「垂直」と赤ちゃん爆誕、そしてピンクフロイドに溺れるチン作でしたw
コメントを残す