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【ネタバレなし解説】『全員死刑』を今、映画館で観なければいけない5の理由

【ネタバレなし解説】『全員死刑』を今、映画館で観なければいけない5の理由

全員死刑(2017)


監督:小林勇貴
出演:間宮祥太朗,毎熊克哉(毎熊克也),
六平直政etc

評価:80点

町山智浩がラジオで今年ベストと語っていた問題作『全員死刑』がヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開となりました。ブンブンが会う人皆が、「これ、ヤベぇぞ!」と声を揃えて言っていたのもあり、重い腰をあげて観にいきました。何故、重い腰だったのか?小林勇貴監督作は『孤高の遠吠』でガチなヤンキーを起用して凶悪な作品を作ったことで有名な監督。小学校時代、ヤンキーみたいな人に苛められていた過去があるために、彼の作品から漂うリアルヤンキーのオーラ、生き血に耐えられるかな?と不安だったのだ。しかも、予告編を観る限りあまり好きなタイプの映画ではなかった。

ただ、実際に観てみると…これがトンデモナイ傑作だった!

『全員死刑』あらすじ

家族全員死刑判決が下った驚愕の大牟田4人殺害事件を基にしたブラックコメディ。借金まみれのヤクザ一家。末っ子タカノリは家族思いで、家族のお願いを断れない。借金返済の為に、片っ端から知り合いを殺すことになった家族。しかしながら、なんだかんだ言って父も母も、兄も自ら手を下したくない。そこでタカノリは一人、また一人と人をあやめていく…

凶悪サザエさん、これ納得!

正直、冒頭30分は「深作欣二好きなんだねーハイハイ」「『無垢の祈り』や『凶悪』のパクリじゃね?」とあまりノれずテンションだだ下がりでした。しかし、30分過ぎた辺りからトンデモナイ核爆発を迎え一気に面白くなった。

町山智浩が本作を「これは『サザエさん』です。フネさんが凶悪です!」と語っていたが、これは納得。タラちゃんポジションのタカノリが、波平、フネ、そしてカツオから銃やナイフ、アイスピックを渡され、次々と人をあやめていく。ただ、基本的に皆頭がおかしいので、スマートに人を殺すことも出来なければ、証拠隠滅もできない。殺そうとして標的をなかなか殺せず、パニックになっている姿に抱腹絶倒声をあげて笑いました。

実話で、凄惨極まりない話にも関わらず、ここまでコミカルで、間宮祥太朗の演技こそ決して上手いとは言えない(叫んでいるだけで、人を殺めていくうちに罪意識が積もって苦しむ場面に繊細さがない)がそれすらギャグとして消化させていくごり押し感は新鮮で面白かった。

これぞヒエラルキー

北野武の『アウトレイジ』3部作の魅力は、「どんなに強面な人でも、ヤクザの世界という中で作られるヒエラルキーによって弱者になる」というところにあった。まさに『全員死刑』の笑えるところはそこにあります。ヤクザで、周りに暴言を吐き、暴力を振るう人でも、自分よりも強い人に「ああん?テメーに話してねぇよ!」と言われたらシュンとなってしまう。

また、主人公のタカノリは暴力的な男だが、仲間思いで、入院している仲間に対しては自分の女を差し出すほど人情深く、また家族の無理難題には「えー嫌だよぉ」と言いつつもやってのける。それに対して、タカノリよりも強面な兄は、必ずタカノリが殺人を犯す際に、そっと身を引いたり、そもそも血を触ったり見たりするとと「ひゃぁ」と飛び上がる。

犯罪一家、ヤクザの中にも力関係があり、一般観客が抱くヤクザ像が次々と崩されていく。それも『アウトレイジ』とは違った形で崩されていくところに本作の魅力はあると言えます。個人的には、『アウトレイジ』以上に、高校時代初めて『悪魔のいけにえ』を観たときのような興奮がそこにありました。

撮影、編集の手数

本作は実録犯罪もので、沢山の殺人や暴行が劇中に描かれます。ただ、よくよく観ると、殺し方の手数自体は少ないです。基本的に絞殺で物事は進みます。ただ、観客が最後まで飽きずに本作を楽しめるのは、撮影・編集の手数が多いからにあります。GoProで撮影したかのような躍動感とサイケデリックな映像、上から下から水中から畳みかけるアクション、それに1970年代のアングラ映画臭がある赤いナレーション画面。明らかに深作欣二や白石和彌の影響を受けているのだが、物語が進む内に小林勇貴色へと変化させているので、サンプリングの妙を楽しむことができました。

『全員死刑』を今、映画館で観るべき5の理由

本作は、DVDで観たらつまらないと感じる映画であることを保証します。それだけ今映画館で観て欲しい作品『全員死刑』。その訳を5の側面から語ります。

映画館で観るべき理由1:ポスターがカッコイイ!


ヒューマントラストシネマ渋谷で観たのですが、入り口に高橋ヨシキが手がけた特別ポスターが飾ってありテンションが上がります。まさに深作欣二ヤクザもののテイストなんだけれども、ちゃっかり「総天然色(1960年代頃の映画はカラー作品の場合、このような表記が書かれていた)」なんか挿入されていて笑えます。

映画本編とは確かに関係ないのですが、映画館で映画を観て出るまでが「映画館での映画体験」であり、自分の評価に直結するものなので、非常に重要です。

映画館で観るべき理由2:臨場感あっての作品

本作は一人で観るよりも友だちとワイワイ観るようなタイプの作品です。あまりにとち狂っていてバカらしく思えるこの家族の愚行、そしてどうしようもない発言の数々にゲラゲラと笑い声が巻き起こる。笑いどころが分からないシーンでも誰かが笑っていると、なんだか熱くなってきますよね(コメディ映画の場合のみですが)。だからこそ、『全員死刑』は劇場の熱気込みで1つの映画なのだ!

映画館で観るべき理由3:DVD化は遅い?

本作は実際の凶悪犯罪をコメディとして描いています(ただ、町山智浩曰くほとんどのコメディシーンは実話だそうです)。なので、結構被害者から関係者に苦情のメールが来ているという噂を結構聞きます。こういうことって、ある時一気に爆発して大炎上するもの。『全員死刑』は運が悪いと上映中止やDVD化遅延の自体が発生する恐れがあります。だからこそ、今観られるうちに観ておくのが正解です。

映画館で観るべき理由4:日本版『ハードコア』だ!

本作は結構主観によるアクションや疾走感のある車爆走シーンがあります。それこそ『ハードコア』をスマホとかの小さい画面で観たら盛り上がらないの同様、本作は劇場の大スクリーンで観ないといけない作品だ。

映画館で観るべき理由5:家じゃながら観するでしょ!

この手のインディーズ映画は、撮影がチープなのもあり、家なんかで観ると、「どうせたいしたことないんでしょ!」とスマホ片手に観てしまうだろう。だからこそ、映画館で本腰入れて観る必要があります。

最後に…

いかがでしたでしょうか?『全員死刑』はタダのヤンキー映画なんでしょ?ハイローと比べると演出しょぼくね?と偏見を持つシネフィルも多いとは思うがここは一つ挑戦して欲しい。一度観ると、小林勇貴の魅力に惹き込まれます。なんと小林勇貴監督、来月12/9に渋谷アップリンクにて新作『ヘドローバ』を公開するとのこと。これは観ておきたいものだ。

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